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» 2007年10月19日 23時54分 UPDATE

本田雅一のTV Style:薄型テレビの能力を引き出す「画質モードの使い分け」(1)

薄型テレビを評価する上でもっとも時間をかけるのは、映画を見るための画質モードだ。なぜなら、映画をディスプレイ上で再現するのがもっとも難しいから。今回から数回にわけて、画質モードの使い方について解説していこう。

[本田雅一,ITmedia]

 いよいよ年末商戦も押し迫り、ここ2週間ほどは毎日、何らかの新製品を試聴している。その中には多数の新型テレビも存在し、「ああでもない」「こうでもない」と、さまざまなソースを用いて細かな画質をメーカーの担当者と議論している。

 では、どんな条件で細かな画質を合わせ込んでいるのか。

 実は多くの場合、もっとも時間をかけて評価しているのは映画を見るための画質モードについてである。なぜなら、映画をディスプレイ上で再現するのがもっとも難しいからだ。通常のテレビ番組に比べ、平均の明るさが遙かに低い映画は、デジタル的に映像を表現する現代のテレビにおいてさまざまな破綻が見えやすい。だからこそ、丁寧に絵を作っている。

 言いかえれば、購入した薄型テレビの本当の能力、絵作り担当者の狙った映像を見たければ、映画系の画質モードで映像を楽しまなければならない。

 と書くと、きっとこういう読者が出てくるに違いない。

「映画モードって、パッとしない画質じゃないですか?」

 それももっともな話。映画モードは「パッとしない」のが普通なのだ。

 なぜなら、映画は暗い場所で見ることを前提に、黒を基準に光を重ねていくことで映像を作っているからだ。これに対して、ほとんどのテレビ番組の映像は、白を基準に明るい映像で製作している。またDVDなどの映像ソフトを作る環境も、真っ暗な部屋でマスターモニターを見ながら画質を調整する。

 こうした制作側の意図に合わせるため、映画モードは暗い場所で見ることを意識しており、明るい場所で見ると色が薄く、コントラストが低く、さらに全体に暗く暗部の見通しが悪い映像になってしまう。

 テレビで映画を見る場合、現行の薄型テレビはどの製品も多少、黒が浮いているため、部屋を本当に真っ暗にしてしまうと黒浮きが目立ってしまうが、ある程度は照明を落とし、少なくとも画面に直接光が差し込まないように配慮(光が差し込むと、黒に近い階調部分が見えづらくなる)した上で見て、初めてテレビの画質調整担当者、コンテンツの制作担当者が意図する映像になる。

 大画面の薄型テレビを購入後、映画を明るい部屋でしか見ていないという人は、一度でもいいから、部屋の照明を暗めに調整してから見ることを勧める。それこそが、開発者が意図した「映画を見るための画質」なのである。

 しかし、蛍光灯が部屋の明かりとして主流の日本では、部屋には調光器が導入されていない家の方が圧倒的に多い。そもそも、暗い場所で映像を見るなんてイヤだ、わざわざ暗くしないとダメなんて問題外、といった意見もあるだろう。間接照明やダウンライトを多用したオシャレなリビングの照明設計が増えてきたとはいえ、現実を見回せば暗い場所を前提とした映画モードは、純粋に映画マニア、AV機器マニアのためのモードでしかない。

 そこで増えてきているのが、一般的なリビングの照明環境で、ある程度、映画を映画らしく見せるよう配慮した画質モードだ。

 たとえば東芝は純粋に映画に特化した画質モードを「映画プロ」として、やや明るめの照明環境で映画を見ることを意図したモードを「映画」としている。三菱電機は明るさセンサーを積極的に活用し、「シネマ」モードのままで部屋が明るいと、バックライトを明るめにした上でコントラストを引き延ばして、明るい場所でも元気良い発色と明るさをキープしようとする。ユニークなのはビクターで、「シアタークール」「シアターウォーム」という2つの映画モードを持つ。前者はやや明るめの蛍光灯下においての見え味を意識し、後者は暗めの電球色照明を意識した絵作り。

photo 東芝「Z3500」シリーズの映像メニュー。映画のために「映画」と「映画プロ」の2つがある

 またパイオニアは、画質モードのデフォルトを「リビング」とし、明るさセンサーと映像分析によって自動的に画質調整を行う。映画ソースの場合、フィルム素材であることを検出し、明るさを見た上で、暗めの照明下では「映画」を選んだ時に近い映像に自動調整してくれる。このリビングモードについては、近く詳しく紹介するつもりだが、ユーザーは意識しなくとも、部屋の環境に合わせて調整してくれるというのは、映像知識に詳しくないユーザーにとって福音といえる。

 このように、画質モードの使い方にもちょっとした知識が必要になってきている。次回は、具体的にどのモードを選べばいいのかについて、例を挙げながら紹介していくことにしよう。

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