前々回、視聴スタイルから適した液晶パネルの方式を選ぼうという話の続きだ。
視野角とコントラストというトレードオフの関係にある要素を、自分自身の部屋の環境と照らし合わせ、どんな製品を選ぶかの“アタリ”を付けたなら、次に考えるのは“画質”……と言いたいところだが、もし筆者個人が液晶テレビを購入をするのであれば“使い勝手”を優先させる。
もちろん、映像を映すのが本職の装置なのだから、絵の質が整っていることは重要だ。しかし画質にこだわる向きなら、自分自身が許せる画質の範囲というのを頭の中にぼんやりと持っているのではないだろうか。
言い換えれば、どんな画質のテレビが良いだろう? と、見当もつかない状態で迷っているのであれば、画質の前に使いやすさについて検討してみる方がいい。プレミアムな映像を見るディスプレイとしての役割なら、プラズマの方が現時点の画質比較では優位だ。液晶テレビには、もっと生活の中でテレビを手軽に楽しめるツールとしての良さを求めるのが良いという気持ちが、その根底にある。
たとえば以下のようなポイントだ。
EPGのデザインは最近になってやっとフルHD解像度に対応した優れたデザインのものが増えてきたが、それまでは低解像度表示も意識したものが多く、一画面で表示できる情報量が極端に少ないものもある。
高解像度なディスプレイパネルに合わせて、細かな表示から拡大した読みやすい表示まで、多様な表示を簡単に切り替えて見渡せること。一覧の中で各番組のジャンルやタイトル部がパッと見て判断できるメリハリのある表示であること。そして意外に忘れがちなのが、EPGをスクロールさせる際の操作性(リモコンで簡単に上下・左右にページを切り替えられるかどうかなど)、画面の描画速度にストレスがないか、裏番組をチェックするための放送中番組一覧表示機能の有無など。
EPGは日常的にもっとも使う機能。とくに目的もなく、暇な時間に番組をチェックするような人は、EPGの見やすさ使い勝手(とくにリモコンでの操作性)は重視しておきたい。
デジタル放送では、ある程度の情報を一度バッファの中に取り込んでから表示を行うため、受信開始から実際に映像が表示されるまでにタイムラグが発生する。たとえば、アナログ時代ならば、チャンネルボタンを押していけば次々に切り替わり、適当に彷徨いながら見たい番組を探すといった使い方(ザッピングなどと言われる)をストレスなく行えたが、デジタル放送で同じことをやると切り替わりのタイムラグが大きすぎて、リズミカルに切り替えることができない。
どのぐらいのタイムラグがあるかは機種によって異なるので、実際に店頭で試してみるといいだろう。メーカー間の違いもあるが、同じメーカーでもグレードによって反応が異なることもある。また、ランダムに選局ボタンを押した時より、順送りにチャンネル番号を送る方が早い製品(ダブルチューナーを利用して待機させている)もあるので、普段から自分が使い慣れた使い方で、どのようにテレビが振る舞うかを見ておこう。
近年の液晶テレビの多くには明るさセンサーが付いているが、一応、これもチェックしておきたい。昼間にカーテンを開けた明るいリビングでテレビを見るとき、液晶テレビの明るさは利点になるが、一方で夜の落ち着いた雰囲気の中では、その明るさが邪魔になりがち。
もちろん、映像モードに連動して好みの明るさをユーザープリセットに保存することもできるが、周囲の明るさに応じてバックライトが最適に変化する方が使いやすいのは間違いない。
ほかにもチェックポイントはいくらでも見つかるだろうが、ここで伝えておきたいのは、日常的な道具として使った時の快適性を考えておいてほしいということ。テレビは一度買ったらなかなか買い換えない商材だ。しかもほぼ毎日、家族全員が触れる機器でもある。自分たちの感性や生活パターン、利用パターンに合っているかどうかは、とても重要な要素なのだ。
たとえばお年寄り向きに、目の感度低下を意識して明るめの画像、台詞の聞き取りやすさを重視した音質補正を行う製品などもある。高画質、高品質という軸以外にも評価軸があることを忘れてはならない。
そしてもう1つ触れておきたいのが、テレビ内蔵の録画機能。HDD内蔵のものや、LANあるいはUSBを用いてHDDにアクセスする機種などもあるが、テレビ内蔵の録画機能は、単体のレコーダーとは全く異なるものだということも知っておきたい。
読んで字のごとく、レコーダーは番組を記録、保存することを主目的にしているのに対して、テレビの録画機能はテレビの視聴スタイル、テレビ自体の使いやすさを向上させるために付いているものだ。
これに関してはまた次週、書いていきたい。
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