コラム
» 2007年11月19日 08時40分 UPDATE

小寺信良:イマドキのテレビ、広色域技術の秘密 (1/3)

広色域技術を備えた液晶テレビが登場しているが、設置すれば単純に「なんでも鮮やか」かといえばそうではない。制作側と視聴側、いずれにも色に対しての知識と体験が求められる時代の到来と言える。

[小寺信良,ITmedia]

 バックライト技術に端を発したテレビの広色域化は、液晶テレビメーカーに新しい切り札を提供した。ソニー、三菱、東芝といったメーカーが、広色域をアピールする。

 ここでなぜ液晶かと言えば、これら広色域テレビは、液晶のバックライトの改善によって実現されているからだ。そもそもは2004年にソニーが「QUALIA 005」(→“萌える新緑”や“フェラーリレッド”を再現――LEDバックライト搭載「QUALIAテレビ」)で、バックライトに3色のLEDを使用したことから始まったわけだが、現在は冷陰極管でも蛍光体の工夫により、広色域が実現できている。LEDと冷陰極管では微妙に特性が異なるが、冷陰極管のほうがコスト的に有利だ。

 一方これに対して冷ややかな反応を示すのが、プラズマ陣営である。プラズマのような自発光ディスプレイでは、バックライトが存在しない。従って広色域への対応は、液晶ほど単純ではない。もっとも彼らの言い分では、「プラズマは最初から広色域」ということかもしれない。

 これら広色域ディスプレイは、「x.v.Color」という名前で知られている。だがこれに対応したテレビだったら、どんなものでも広色域で映像を楽しめるのだろうか。実は調べていくと、奇妙なことがわかる。

xvYCCはディスプレイの規格ではない?

 もともとはソニーのQUALIAで実用化された広色域ディスプレイだが、それを受けてJEITAでは、広色域に関する規格のとりまとめに入った。国内では2005年に規格化されたが、さらに2006年には国際規格として発行されることになる。それがよく知られるところの、「xvYCC」という色空間定義である。x.v.Colorは、このxvYCCを普及させるためのニックネームである。

 ではxvYCCで、従来の規格に対してどれぐらい広色域になったのだろうか。色域を表わす図表としてよく使われる、xy色度図で比較してみようと思った。よくある馬蹄形の色域を示す図である。調べてみると、NTSCやsRGBなどはこの色度図の資料が存在するが、xvYCCは公式にはxy色度図の資料は公開されていない。

 色々なメーカーの技術者に、機会があるごとになぜこの色度図がないのか質問していたのだが、その中でわかったことは、どうもxvYCCという規格はディスプレイや伝送系の色域を規定するものではなく、ビデオカメラの色域を規定したものである、ということだ。

 写真がお好きの方はご存じだと思うが、今デジカメはsRGBなどでは撮っていない。それを拡張した色域規格であるsYCCを採用している。xvYCCは、それと同じ意味でビデオカメラのために定義された規格だったのである。

 それはいいとして、ではなぜxvYCCにはxy色度図というわかりやすい資料がないのだろうか。それはどうも、来た信号がそのまま出せるということと、定義としての色域とは別問題であるということが分かってきた。xvYCCは、これまでリニアRGBにおいて0〜1の範囲で収まらない値も扱えるようにしたため、原理的には目に見えない色や従来規格では表現できない色まで含まれることになる。概念としては表現できるが、可視光線の色の範囲従ってxy色度図だけでは表現できないのである。

 ただ現実問題として、ビデオカメラに納められる色は、現実世界の中に存在する光に限られるに決まっている。従って特性値としては、xy色度図に収まらないはずはないのである。だがビデオカメラ側として、論理値ではなく実行値としてxvYCCの資料を出すということは、レンズから撮像素子、信号処理まで含めたカメラそのものの全力の特性を出すということになる。どうもそうなってしまうと、営業戦略的な部分もあってか、表には出せない資料になってしまうようだ。

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