発売日:2007年12月21日 価格:4990円 発売元:20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン 上映時間:84分(本編) 製作年度:2006年 画面サイズ:ビスタサイズ・スクイーズ 音声(1):ドルビーデジタル/5.1ch/英語 音声(2):ドルビーデジタル/5.1ch/日本語 音声(3):ドルビーデジタル/2.0ch/ロシア語 |
ボラットはカザフスタン国営テレビからやってきた、高田純次にも匹敵する破壊的突撃リポーター。アメリカ文化を紹介するため、プロデューサーとともに渡米するも、あまりのカルチャーショックに暴走。「女性も教育を受けるべきだと? 男より脳が小さいので難しいのでは?」「ユダヤ人の巣窟にいます。姿形は人間そのもの。角は隠れて見えません」などのデタラメ発言や大胆すぎる行動で大迷惑の渦を巻き起こします。このフィルムはそんなボラットの珍道中を収めたカザフスタン国営テレビ制作のドキュメンタリー作品です、という設定のモキュメンタリー(嘘ドキュメント)です。
ただ気をつけなければいけないのは、本作の意図はカザフスタン人、ボラットの無知、田舎者っぷりを笑うのではなく、ボラットが遭遇するアメリカ社会を徹底的にバカにすることで「世界の常識やタブー(と私たちが信じていること)」に揺さぶりをかけ、この珍妙な世界ってやつは笑っちまいますねということなのだと思います。
例えば劇中にボラットは、ヴァージニア州リッチモンドでよせばいいのにロデオ大会に参加。「貴国のテロ戦争を我々も支持します」「ジョージ・ブッシュよ、イラク国民を皆、血祭りにあげろ」なんてアウトな挨拶をかました後、アメリカ国歌をムチャクチャな替え歌で歌います。
ことさら愛国心の強い数千人の方々を相手に敢行した、ボラットの捨て身のドッキリショーは、ジョージ・ブッシュの「悪の枢軸」発言(※1) の珍妙さを痛烈に批判しているのだと思います。(※1)2002年1月、ジョージ・ブッシュ大統領が発言。イラク、イラン、北朝鮮が大量破壊兵器を保持しテロ活動を擁護しようとしていると非難した。
こうした珍妙な世界の常識って、最近のキーワードですとグローバリゼーションという言葉に置き換えることもできると思います。世界規模の常識――言葉の響きからしてイヤな感じです。世界規模の経営――なんだか魅力的に思える一方、じつは関係ないんじゃね? なんて思ったり。私めは成長も競争もしたくないダメ人間です。「グローバリゼーション・新自由主義批判辞典」(作品社)という本には、「悪の枢軸」(IMF、世界銀行、WTO)は……などという記述があって、これもまたボラットとは別のアプローチで強烈にシニカルです。
この作品においてカザフスタンを取り上げたことにさほど意味はなさそうです。オープニングで紹介するボラットの故郷の村はルーアニアで撮影されたものらしいですし、ボラットのお決まりの挨拶「チンクイェ(ありがとう)」「ヤグシェマシュ(ごきげんよう)」は実際のところポーランド語だったりするわけで。たまに耳にするけどビミョーに知らない国として、それをカザフスタンという国を挙げただけだと思います。
で、「CIA The World Fact Book」によりますと、カザフスタンの主要輸出品目は石油・石油製品が58%、外務省調べによりますと石油埋蔵量は世界の3.3%、天然ガス埋蔵量は世界の1.7%。また、レアメタルを含め非鉄金属も多種豊富である(ウラン、クロムの埋蔵量は世界2位、亜鉛は世界5位)とのことですが、そんなことは本編とはまったく関係ナシ。でも資源大国カザフスタンの名前は、資源高騰で幕を開けた2008年、どこかで耳にすることも多くなりそうです。
ちなみに97年に遷都した首都、アスタナ。この都市計画の国際コンペには建築家の故・黒川紀章氏が1位入選していたみたいです。あとBBC NEWSによりますと(※2) 極寒の首都アスタナを巨大テントで覆ってみようという計画もあるとかないとか。ITmedia読者にグッとくるギークなネタも満載。ステキな国に思えてきました。
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