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「ダビング10」(1)――コピーワンスからの経緯デジモノ家電を読み解くキーワード

» 2008年01月24日 18時04分 公開
[海上忍,ITmedia]

 現在のデジタル放送は、録画したものを複製できない「コピーワンス」が前提。それが今後緩和され、一定の条件下でコピー9回+ムーブ1回まで許される「ダビング10」に変わる予定だ。そのダビング10について説明する前に、どのような経緯でダビング10にたどり着いたかを紹介してみよう。

コピーワンスの是非を巡る攻防

 コピーワンスのあり方についての認識は、映像機器の売上げを伸ばしたい家電メーカーと、著作権保護を強化したい放送局などのコンテンツホルダーとの間に、大きな隔たりがある。

 家電メーカー側の見解を要約すると、録画時以外はコンテンツの移動(ムーブ)しか認められない現在のコピーワンスは消費者にとって厳しすぎ、デジタル放送普及の障害となっている……言い換えれば、コピーワンスのために映像機器の売上げが伸び悩んでいる、というのだ。彼らはコピーワンス「緩和派」で、制限を緩くすることが消費者の利益につながると主張した。

 緩和派は、「1世代のみコピー可」から「出力保護付きでコピー制限なしのEPN」に変更すべしという、いわゆるJEITA案「地上デジタル放送のコンテンツ保護に関するJEITA提案内容」(リンク先PDF)を2005年末に提出した。

 それに対し「維持派」であるコンテンツホルダー側の態度は冷ややかだった。JEITAが提案したEPNに対し、NHKをはじめ東京・大阪・名古屋の民放テレビ16社で構成するRMP協議会準備会は2006年3月に「コピーは1世代のみ、ただしムーブ失敗への配慮とメモリカードへのムーブを認める」(リンク先PDF)と、あくまでコピーワンス維持を主張している。

1回から9回へ、しかし……

photo ダビング10へに対応が予告されているブルーレイDIGA「DMR-BW900」

 行き詰まり状態に陥ったコピーワンスを巡る議論だが、総務相の諮問機関である情報通信審議会の提案により状況が一変。緩和派が主張するEPNは受け入れられないかわりに、コピー9回+ムーブ1回まで認められ、維持派はコピー回数増を受け入れることになるが、コンテンツ保護は担保される、という「折衷案」が登場した。

 ここでは録画元(HDD)でコピー情報を管理することにより、コピーの回数/世代を管理する。回数の制限は、録画機内蔵のDVDとメモリーカード、およびiLinkなどのデジタル回線経由でのコピーに対して行われる。D端子やS端子などのアナログ出力は対象に含まれない。

 緩和派は早々に受け入れを表明。名称も「ダビング10」に統一され、すでにパナソニックなどのメーカーがサポートを公表している。

 しかしこのダビング10、1世代のコピーしか認められず、いわゆる孫コピーはできない。複製は可能だが、あくまでコピー元は最初に録画したHDDなのだ。次回は、ダビング10の制限事項について解説する予定だ。

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