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パナソニック「TH-50PZ800」のカラーリマスター効果をBD版「ドラキュラ」で確認する山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.18(2/3 ページ)

» 2008年07月09日 13時05分 公開
[山本浩司,ITmedia]

カラーリマスターシステムとは?

 PZ800シリーズの色再現範囲(色域)は、HDTV規格(ITU-R BT.709)で定められたそれに比べて120%の広さを獲得しているのだが、同社開発陣は、その色域設定のメルクマール(指標)をデジタルシネマ(DCDM)規格とし、それを目指して新開発の蛍光体材料を投入し、光学フィルターの精度を上げることで、色再現範囲を広げたのである。色度図を見ると、PZ800シリーズは、デジタルシネマ規格をほぼクリアーしているのが確認できる。HDTV規格に比べてG(グリーン)とR(レッド)の再現範囲が広いのがその特長である。

photophoto PZ800シリーズの色再現範囲(左)とカラーリマスターの概要(右)

 つまりPZ800シリーズは、色域をただやみくもに広げて良しとするのではなく、ハリウッドの映画制作者たちがデジタルシネマ上映時に基準としている規格を目標とすることで、制作者の意図に沿った色再現を目指そうというわけだ。

 もっとも映画制作者たちは、ビデオソフトを仕上げるときに、HDTV規格に準拠した狭色域のモニターディスプレイを見ながら色補正を行なっている。しかし、彼らが映画制作時に本来表現したかった色は、その狭色域モニターに制限されるべきものではない。

 そこで、色補正を行なうカラリストと呼ばれる技術者が、監督や撮影監督の意図をくんで、その狭色域モニターに合わせて本来再現されるべき色を置き換えていくわけだが、PZ800ではこの手法をデジタルデータ化した。

 「カラープロファイル」とそれに基づいて高速に色域変換処理を行なう「3次元カラーマネージメント回路]を新開発、この2つをもってカラーリマスターシステムを構築したのである。

 つまり、カラリストが行なう「色域圧縮」とは逆の「色域伸長」をテレビ内部で行なうことで、デジタルシネマ規格に準拠した、制作者の意図に忠実な色を再現しようというのが、このカラーリマスターの思想なのである。テレビの中に映画の色を知り尽くしたカラリストが入っていて、本来あるべき色に調整してくれる、という書き方をしてもいいだろう。これは映画ソフトのハイファイ再生を考えるうえで、じつに興味深い、本質を突いた重要な技術提案だと思える。

 家庭用テレビにこんな色再現手法を盛り込めるようになったのは、パナソニックが1990年代にパナソニックハリウッド研究所を開設し、映画制作の現場で働く人たちとともに長年に渡って映画とビデオ映像の関係について地道な研究を重ねてきたからこそ、である。

 同社の家庭用プロジェクターは、2003年の「TH-AE500」以降、ハリウッドの撮影監督やカラリストたちに画づくりの協力を求めて完成させた「ハリウッド画質」ポジションを持っているが、まさにその「プラズマ版ハリウッド画質」がこのカラーリマスター機能という言い方もできるかもしれない。

 そんなわけでPZ800 シリーズの50V型機、「TH-50PZ800」でいくつかの映画ソフトを観たが、とりわけカラーリマスター効果がすごいと思ったのは、BD ROMの「ドラキュラ」だった。

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