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ソニーのプレミアムヘッドフォン「MDR-1A」を前モデルと徹底比較――「PHA-3」とのバランス接続も試すハイレゾ対応ヘッドフォン検証(1/5 ページ)

» 2014年11月25日 17時00分 公開
[山本敦,ITmedia]
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 今回はソニーから10月末に発売されたヘッドフォン「MDR-1A」をピックアップしよう。「MDR-1R」の後継モデルとして10月に発売された本機がどれほどの進化を遂げたのか。長らく「MDR-1R」を愛用してきた筆者の視点から、新モデルが“買い”なのかを考察してみたい。

ソニーのプレミアムヘッドフォン「MDR-1A」(写真=右)と「MDR-1R」(写真=左)の実力を徹底比較

 「MDR-1R」は2012年10月にソニーのプレミアムヘッドフォンとして発売された。型番に冠された「1」にはヘッドフォンの王道を目指しながら”ナンバーワン”のモデルを世に送り出そうという開発者の意気込みが込められている。

 2013年の秋にソニーがハイレゾへの全力投球を宣言する一年前に発売された「MDR-1R」は、40ミリHDドライバーにより再生周波数帯域が4Hzから80kHzまでの広帯域をカバーする「ハイレゾ対応」をいち早く実現。マニアから一般の音楽ファンまで多くのユーザーを獲得してきたロングセラーモデルだ。その後、2013年には付属ケーブルに変更を加えた「MDR-1RMK2」に変わるものの、基本的には約2年間をかけて新製品の「MDR-1A」に進化を遂げた格好だ。

新開発のアルミコートLCP振動板を搭載。高域は100kHzまで伸びた!

「MDR-1A」

 振動板は「MDR-1R」で試みたハイコンプライアンス化をさらに押し進めて低域の再現性を確保しながら、高域は100kHzまで再生可能帯域を伸ばしている。これに軽量CCAWボイスコイルを組み合わせることでドライバーのレスポンスも高め、iPhoneなどのスマートフォンや、ウォークマンをはじめとしたポータブルオーディオプレイヤーによるリスニングにもクリアでパワフルな音を再現する。

 振動板は「MDR-1R」にも使われた液晶ポリマーフィルム「LCP」をベースに、アルミニウムの薄膜をコーティングした「アルミニウムコートLCP振動板」が技術的な進歩。イヤーカップの内側を覗くとメタリックに光る振動板が見える。高域の内部損失が高まって、ナチュラルな音になる所にアルミコーティングの効果が表れる。前回レポートしたソニーのフラグシップイヤフォン「XBA-Z5」や、ヘッドフォンの最上位機である「MDR-Z7」にも同じ技術が採用されている。

左の「MDR-1A」はアルミニウムの薄膜をコーティングした「アルミニウムコートLCP振動板」を搭載。右がアルミコートなしの「MDR-1R」

 ケーブルは本体着脱式で、左側イヤーカップからの片出しスタイルになっている。付属ケーブルには銀コートOFC線を採用。オーディオ信号のロスを最小限に留めて劣化を抑える効果がある。高域の音色が柔らかくなるところも特徴だ。プラグの形状は3.5ミリのステレオミニという仕様は「MDR-1R」と変わらないが、オプションのバランスケーブルに対応したことに要注目だ。今回のレポートではヘッドフォンアンプの「PHA-3」、別売バランスケーブル「MUC-S20BL1」との組み合わせによるサウンドもチェックしているので、後ほど詳しく紹介しよう。

ケーブルは着脱式。3.5ミリステレオミニ端子が採用されている

 両ハウジングの上側に目をやると、左右ともに1つずつの通気孔が空いている。これは「MDR-1R」の頃から継承する「ビートレスポンスコントロール」のベント。ハウジング内部に生まれる空気の流れをコントロールすることで、振動板の動きを最適化して、正確なリズムとタイトな低域再生を可能にするためのものだ。

左手前が「MDR-1A」。イヤーカップ表面の「プロット印刷」が加わっている

リスニング感を高めるために本体のデザインもアップデート

 筆者が「MDR-1R」を購入した大きな理由の1つは、装着感がとても快適だったことだ。イヤーパッドやヘッドパッドが柔らかく、頭に装着した時にほどよい密着感が得られ、音漏れが少なく安定感がとても高いので、長時間音楽をストレスなく聴いていられる。

クッション性の高いイヤーパッドを新規に開発

 「MDR-1A」ではイヤーパッドの形状が変更され、装着感もさらに改善が図られている。イヤーパッドは内部の低反発ウレタンフォームの形状がひずまないよう、立体縫製で包み込むことにより、さらに柔らかい着け心地を実現した。結果としてイヤーパッドが少し肉厚になっている。耳の裏側の、ちょうど首の付け根あたりが盛り上がった形状になっているため、イヤーパッドが内側に倒れ込んで耳を包みこみ、フィット感がさらに高まって音漏れを低減するとともに、低域のボリュームアップにもつなげている。

左が「MDR-1R」、右が「MDR-1A」のイヤーパッド

 実際に装着してみると、イヤーパッドが肉厚になったぶんだけ、パッドの上側がメガネのツルにあたって両側から押さえつけるかたちになってしまう。したがって歩きながら音楽を聴くとメガネがずれてくることもあったが、メガネを着替えることで問題は軽減できた。

 どんな装いにもフィットする本体のシンプルなデザインは「MDR-1R」から大きく変わっていないが、ブラックのモデルはイヤーカップの表側に一眼レフカメラのボディなどによく使われる、細かな凹凸を付けた「プロット印刷」を施して高級感を持たせている。さらにケーブルの端子部分にはハイレゾオーディオをイメージしたというゴールドのリングパーツをアクセントに加えている。カラバリはシルバーとブラックの2色。シルバーはヘッドバンドやイヤーパッドがブラウンのコンビネーションになる。高級感ではブラックに劣らないが、筆者はイヤーカップに赤をワンポイントとして配置したブラックの方が好みだ。

「MDR-1A」の付属品

 それでは「MDR-1A」の音質を前機種の「MDR-1R」と比べながら聴いていこう。

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