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「コトン」が世界最小の“ハンディー洗濯機”である確かな理由滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/3 ページ)

» 2015年01月27日 10時33分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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 ハイアールアジアが発表した「COTON」(コトン)。「世界最小洗濯機」をうたう話題の家電製品だが、外観は整髪料の缶のようで家電らしくない。また染み抜きに主眼を置いていることもあり、「本当に洗濯機って呼んでいいの? 単なる染み抜き剤と変わらないんじゃない?」と懐疑的な見方をする人もいるようだ。そこで今回は、洗濯機の商品開発担当であるハイアールアジアの内藤氏に“コトン=洗濯機”である根拠とそこに導入された技術について、詳細を聞いた。

整髪剤の缶にしか見えない「COTON」(コトン)

 まず、まったく新しい洗濯機誕生の経緯について聞いた。「コトンを作るきっかけは、ハイアールグループが全社で定期的に行っている“技術交流会”でした。中国では毎日洗濯するのではなく、シミだけを落として同じ服を何日か着続ける人が多いというニーズがあります。そこで開発中のさまざまな商品をプレゼンしていたのですが、そのとき“世界一小さな洗濯機”というキャッチコピーと手作りの試作品を見て、伊藤(伊藤嘉明社長)が『これ、日本向けにも出しましょう!』と。さらに間髪入れず『いつ出せますか?』って言われまして」と内藤氏は笑う。

マーケティング本部ランドリービジネスユニットマネージャーの内藤正浩氏

 それが今から約8カ月前、2014年のゴールデンウイーク明けの話だった。技術交流会の時には、まだ“絵”でしかなかった「コトン」だが、社長の決断からものすごいスピードで開発が始まる。

 「私も三洋電機時代から洗濯機にずっと関わり、今年で22年になりますが、これほどのスピードで製品を開発したことはありません」(内藤氏)。三洋電機時代には、電解水で洗剤を使わず汚れを落とす「洗剤ゼロコース」、オゾンの力で水を使わず殺菌・消臭を行う「エアウォッシュ」など、“業界初”や“世界初”の製品を多く手がけたという内藤氏。今回も「これまでになかったことをして業界に風穴を開ける!」というワクワク感を感じたという。しかし一般的に、家電の新製品が登場するまでには平均で1年半程度の時間が必要だ。「果たして2014年中に作れるのか? 最初はまったく分かりませんでした」。

日本国内での企画・開発・製造

 コトンは今までにない洗濯機だ。例えば掃除機にパワフルなキャニスター型と手軽なハンディータイプが存在するように、洗濯機にも本格的な据置型と携帯できるハンディー型が存在してもいい。 

 「とはいえ、本体が小さいと洗濯機としての洗浄力を確かなものにするのが困難です。このため、プロユースの業務用洗濯機を開発しているチームと、日本国内の協力会社に開発を依頼しました」。製造コストだけを考えたら、海外の会社に協力をしてもらうほうが安いが、さまざまなやりとりや意思疎通、決断に時間がかかってしまう。「だからこそ、日本国内での企画・開発・製造にこだわりました」。

 確かに業務用洗濯機の開発チームは、洗浄力を生み出すための高い技術を持っていた。だが、今回は仕様を決めるまでに戸惑いもあったようだ。「彼らは普段、家庭用洗濯機よりも大きい洗濯機を開発していますからね。話し合いの中でハンディーサイズなら200グラム前後が最適となった時、汚れを落とす手法は決まっていませんでした」。

 ハンディータイプでは、一般的な洗濯機のように大量の水は使えない。もちろん洋服が入るような洗濯槽は論外だ。「彼らが洗濯機を作る最高峰のチームであるのは間違いありません。コンパクトな世界でも、いわゆる“シミ落とし”ではない“洗濯機”を作るため、汚れに対して、こするか、たたくか、もむかなど限られた状況で一番汚れが落ちる方法を追求し、最終的に“たたき洗い”で開発を進めることに決まりました」。

コトンの利用イメージ

 洗濯機なのだから洗剤や水は使う。しかし、水はスプーン1杯ぶん(約5cc)で、洗剤もごく少量だ。

 「洗濯の基本は『洗剤』+『機械力』です。どちらが欠けても効果が半減してしまいます。これは大型の洗濯機でも、『コトン』のようなハンディーでも同じ。『コトン』に求められるのはもちろん『機械力』のほうです」

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