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「コトン」が世界最小の“ハンディー洗濯機”である確かな理由滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/3 ページ)

» 2015年01月27日 10時33分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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 コトンでは、汚れが付着した生地の上に市販の洗剤を少量塗り、裏側から枚分約700回の振動でたたくことにより、汚れを下に敷いたキッチンペーパーなどに移す仕組みだ。しかし、この形になるまでに多くの試行錯誤があった。

たたき移し方式の手順

 「どう汚れを叩いて、生地から押し出すかが重要でした。たたきの圧力はどうするか? たたく部分の形状は? さらに水はどのように噴出させるか?」。そのためにまず開発に力を入れたのが、本体から取り外せるヘッド部分。水タンクを内蔵した透明なカートリッジだ。

 「ヘッドの表面は生地と接触するところであり、この形状により汚れをいかに効率的に押し出すかが決まります。このため、なるべく本体からの力を効率的かつ集中的に伝えるよう、表面に細かな突起をたくさんつけました。単なる平らなパーツで叩く場合に比べ、生地奥の汚れをより素早く、効率的に汚れを外にたたき、押し出すことができます」。

ヘッドの表面には細かい突起がたくさん

 水の噴出方法についても実は細かい工夫がある。そもそも試作品段階では水タンクはこの透明の取り外し可能なカートリッジではなく、本体に内蔵されていたという。「本体に内蔵している場合、水を入れたり、水タンクを洗う場合に面倒ですし、そもそも洗いにくいでしょう。この先端のカートリッジ部分と合体させましたことで、取り外して洗うことができるようになりました。また水を入れる際、本体内部に直接水が掛かってモーターなどが故障することも防げます」。

先端のカートリッジは取り外し可能。ここに水を入れる

 水タンクには5ミリリットルの水が入り、たたき1回につき、約30マイクロリットル(0.03ミリリットル)の水を噴出する。「先端のカートリッジは、水タンクとフタである先端のたたきパーツとの間に、実はもう1つ空気の層を設けています。実はここが絶妙な水の噴出量を実現したポイント。水タンクから直接先端まで水が通じてしまうと、どうしても水が一気に落ちてきてしまいますが、そこにも家電品とはおよそ関係ない分野から発想し、独自の工夫を加えることで、先端に噴出される水の量を調整することができるのです」。

 カートリッジの奥の本体内部に目を移そう。上部には電源である乾電池とモーターが内蔵されていて、いくつかの歯車型の変速ギアを介して“たたき”の動作が伝わってくる。さらにカートリッジ上部にはたたき時の圧力を調整するバネも備えている。

 「生地をたたくための“圧”に関する数字は非公開なのですが、その理想的な圧――つまり、汚れはしっかりと効率的に浮かび上がらせつつ、デリケートな素材を含めて生地を傷めない――を生み出すため、調整にかなりの時間を費やしました。モーターの回転速度、変速ギアのサイズや組み合わせ、さらには反発力の異なるバネをいろいろ試したり。さらにたたきの動作回数もトライ・アンド・エラーを重ねながら、最終的に毎分約700回で駆動するのがもっとも理想的と分かったのです」。

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