コラム
» 2015年06月03日 11時39分 UPDATE

本田雅一のTV Style::日本の老舗オーディオブランドを傘下に収めたギブソンの思惑――IFA GPCリポート(3) (1/2)

なぜ今、楽器メーカーであるギブソンが日本の老舗オーディオメーカーを傘下に収めているのか。そこには「なるほど」と膝を打つ、彼らなりの戦略があった。

[本田雅一,ITmedia]

 毎年、9月に開催されるグローバルでもっとも大規模な家電展示会「IFA」を主催するベルリンメッセが開催するグローバルプレスカンファレンス(GPC)。これまでの注目は映像機器や大型の白物家電が多かったのだが、今年はオーディオ製品にもスポットが当たった。

 中でもオンキヨー、ティアック、パイオニアという3つの著名な日本ブランドを立て続けに手に入れたGibson(ギブソン)の話は興味深いものだった。なぜ楽器メーカーであるギブソンが今、日本の老舗オーディオメーカーを傘下に収め、何をしようとしているのか。そこには「なるほど」と膝を打つ、彼らなりの戦略があった。

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 まずはオーディオ市場の成長について、Gfkのデータを元に現状を把握した上で話を進めることにしよう。

 具体的な数字は欧州のものになるが、コンシューマー向けのオーディオ市場は昨年、4%も成長した。といっても、伝統的な高品位オーディオ機器や、それらをカジュアルダウンしたミニコンポ的オーディオ機器が成長したわけではない。そうしたトラディショナルなオーディオ機器はマイナス成長で、昨年1年間だけでも21%も減った。

ts_gobson02.jpg トラディショナルなオーディオ機器はマイナス成長(出展はGfk)

 トラディショナルオーディオに代わり、過去数年はiPodに始まり、iPhoneあるいはその他スマートフォンなどの普及に伴い、それらと接続するドッキング型スピーカーやヘッドフォン、イヤフォンの市場が急成長した。とりわけヘッドフォンの成長は著しく、日本でも高級オーディオショウよりもヘッドフォンの新製品を集めたイベントの方が熱気を帯びるようになったはご存知の方も多いだろう。

 ほかにもテレビの下に置くサウンドバーも成長しているが、これはテレビの薄型化の影響で音質が一様に悪くなったのが原因だ。現在も成長はしているが、薄型テレビの音質は徐々に回復傾向にあるため、今後はどこまで伸びるのか見えにくい。テレビの周辺デバイスという位置付けのため、テレビの販売単価が下がるとサウンドバーに対する投資も落ち着くため成長余力には限りがあるからだ。

 その一方で昨年、台頭し始めているのが「Connected Audio」「Network Music System」といったジャンルの製品だ。前者はBluetooth接続を用いたワイヤレスの周辺機器で、後者はDLNA手順などを活用して家庭LANで音楽を共有・再生したり、インターネットラジオを聴く機器のことだ。以前はLINN Productsなどの高級メーカーが先導していたものの、近年はSonosのようなインテリアと一体化する製品、Rokuなどのカジュアルな製品も著しく成長しており、昨年はBOSEも参入した。

ts_gobson03.jpg 「Connected Audio」「Network Music System」といったジャンルのシステムが増加中

 売上げ金額ベースにおいて、”ネットワーク化されたオーディオ”は、”ネットワーク化されていないオーディオ”を超え、2014年は53:47でネットワークオーディオがマジョリティになったというGfkの調査結果もある。Spotifyに代表される加入者型音楽サービスや、ネットラジオサービスの充実といった外的要因も、これらを後押ししているといえよう。

 ベルリンメッセのIFA部門トップを務めるハイテッカー氏も、今年のIFAにおける目玉分野としてネットワーク化されたオーディオ機器の成長を予測している。すでにIFA出展ブースの販売は開始されており、そこでの盛況がハイテッカー氏の強気にも結びついているのだろう。

 さて、そうしたオーディオ市場の活性化とギブソンは、どのような関係があるのだろうか? ギブソンはご存知の通り、米国テネシー州ナッシュビルにある楽器メーカーだ。主にアコースティック、エレクトリック両方のギターを生産・販売している。

 ギブソンブランドではギター専門だが、扱う楽器ブランドは多い。エピフォン、ボールドウィン・ピアノ、ウーリッツァー、ヴァレー・アーツ、スタインバーガー、オーバーハイムなど、楽器ブランドだけで12種類もグループ内に保有し、それぞれのブランドの自主性を守りながらメーカーとして生き残り続けている。

ts_gobson04.jpg ギブソンイノベーションズのCEO、Wiebo Vaartjes氏

 その一方で、ヘッドフォンでギターサウンドを楽しむためのバーチャルギターアンプを作ってみたり、コンピューターを使ってギター演奏の幅を拡げる取り組みをしてみたりと、伝統的なブランドでありながら、一方で時代の最先端を追いかけてきたブランドでもある。

 そのギブソンは今や日本のオンキヨー、ティアックの親会社になっている。先日、オンキヨー主体でパイオニアのホームオーディオ部門が合併したため、その傘下にはパイオニアブランドも加わることになる。それだけではない。オーディオブランド「Fidelio」を展開してきたフィリップスのホームオーディオ部門(欧州では高い存在感を持っている)も、ギブソングループとなった。楽器メーカーであるギブソンは、ホームオーディオ企業を次々に傘下に収めて何をしたいというのだろうか?

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