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ハイレゾが変わる――英Meridianのボブ・スチュアート氏に聞いた“MQAの最新情報”と「PHA-1」の“隠し機能”(2/4 ページ)

» 2015年07月28日 13時00分 公開
[山本敦ITmedia]

より自然なヘッドフォンリスニングを可能にする「ASP」

 本機のユニークな機能の1つに「ASP」(Analogue Spatial Processing/アナログ音場空間プロセッシング)がある。このASPは、ヘッドフォンリスニングの課題とされている、再生音像が頭の中にこもったようにきこえる頭内定位を回避して、スピーカーで音楽を聴いているような立体的で自然なステレオイメージが得られる技術である。メリディアン・オーディオの製品にASPが搭載されたのは本機が初めてだ。「デジタル処理ではなく、全てピュアなアナログオーディオの技術によってASPは構成されている」とスチュアート氏は説く。ASPのモードは「1」と「2」の2つに分かれていて、フロントパネルのスイッチからOFF/1/2の3ポジションに切り替えられる。

フロントパネルに入力切り替えと「ASP」のモード切り替えのスイッチを設けた

 「ASPをONにすることによって、通常のステレオ録音のソースを聴くと、スピーカーリスニングのように自然な音像定位がヘッドフォンでも実現されます。生演奏を好まれる方には『ASP1』がおすすめです。『ASP2』は、1の設定に対してさらに低域補正を加えています。音源によって、マイクセッティングの違いがより浮き彫りになります」(スチュアート氏)。

 さらにPHA-1には「ヘッドフォンアンプ専用モード」が搭載されている。「これはプリアンプ出力をシャットダウンして、より高品位なヘッドフォンリスニングを可能にするためのモードです。フロントパネルの電源ボタンを長押しして、LEDの色が通常の白から緑に変わればモードがONになります」。なお、対応するヘッドフォンのインピーダンス範囲は16〜1000オームと幅広く、手ごわい高級ヘッドフォンも軽々とドライブできる。

電源ボタンを長押しすると、LEDの点灯が白から緑に変わって「ヘッドフォンアンプ専用モード」に切り替わる。MQAファイルを再生するとインジケーターが緑色に点灯する

 本機の製品紹介などには、本体のフロントパネルに搭載する2基のステレオ標準端子をそれぞれに左右専用として使うことで、左右独立配線されたバランス駆動対応のヘッドフォンをドライブして、より高音質でチャンネルセパレーションの明瞭(めいりょう)なサウンドが味わえるという。これがいわゆるバランス駆動と呼べるものなのか、スチュアート氏に聞いてみた。

底面の4カ所に樹脂製のフットが装着されている

 「ヘッドフォンアンプの一般的なバランス駆動とは仕組みが若干異なっています。私たちはこれを“デュアル・ドライブ”と呼んでいます。使い方としては、それぞれにヘッドフォンを装着してペアリスニングを楽しむか、バランス駆動に対応するヘッドフォンに先端のピンが標準端子仕様のバランスケーブルをつないで高品位なサウンドが楽しめます」とスチュアート氏は答えた。

 さらに説明は続く。「左右の各チャンネルに1台ずつ、合計2台のアンプでヘッドフォンをドライブしていますが、一般的な『3極グラウンド共通出力』と違う点は、グラウンドをプラグの部分、あるいはケーブルで共通化するのではなく、アンプの内部で信号線を結んで共通化することで、さらにチャンネルセパレーションの高いサウンドを実現しています」

 通常のヘッドフォンでのバランス出力は左右のドライバーを駆動するために各2台ずつ、合計4台のアンプで差動出力する仕組みであるため、倍の出力電圧でドライバーが駆動できる。PHA-1ではこのメリットは得られないものの、バランス出力と同じぐらい左右チャンネル間のセパレーション改善が図れるところにスチュアート氏は目を付けたというわけだ。

 「通常のバランス駆動を選ばなかった理由は、PHA-1のサイズメリットを優先させたかったからです。標準端子に3.5ミリ端子、さらにバランス駆動用のXLR端子を搭載するとなれば、そのぶん本体が大きくなってしまいます。また、バランス接続端子の標準規格がどの端子になるかが決まっていないこともありますので、それならば一般的な標準端子によるシングルエンドでのリスニングをベースに、ステップアップが狙える機能を設けたいと考えてデュアル・ドライブを実装しました」(スチュアート氏)。

左がPrimeヘッドフォンアンプに対応する安定化電源ユニット「Prime Power Supply」。日本上陸も期待される

 ちなみにこのデュアル・ドライブの機能はPHA-1のユーザー・マニュアル等に記載されていない、スチュアート氏がおすすめする“隠し機能”である。デュアル・ドライブにモードを切り替える必要はなく、2つの標準端子にバランス駆動のヘッドフォンを用意して、専用ケーブルで接続するだけでよいそうだ。今回は試聴用のセットを用意したので、後ほどリスニングレポートもお届けする。

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