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高級炊飯器に“羽釜”が増えた理由――象印、三菱、東芝の3社に聞く理想の炊きあがり滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/3 ページ)

» 2015年08月12日 06時00分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

 一時期の“内釜戦争”が一段落し、徹底的な味の追求よりも炊き分け機能や、少人数世帯向け小釜モデルなどの方向にトレンドがシフトし始めたように見えた炊飯器業界。だが、ここにきて内釜に新たなトレンドが登場した。それは、“かまどごはん”を目標に採用された「羽釜」だ。2010年から「極め羽釜シリーズ」を展開している象印マホービンに対し、今年は東芝と三菱電機も相次いで採用。一気に注目トレンドとなった理由とは? それぞれのメーカー担当者に「なぜ羽釜なのか?」を聞いてみた。

 まず、今回取り上げる羽釜採用の炊飯器はこちらの3機種だ。

象印マホービン「南部鉄器 極め羽釜」(NP-WU10)

 象印マホービンの「南部鉄器 極め羽釜」(型番はNP-WU10)は、沸騰時の吹きこぼれを防ぐ「新うるおい二重内ぶた」を採用し、昨年モデル比で約1.3倍の火力を実現した最上位機種。1気圧から1.3気圧までの圧力を調整し、7通りの好みの食感が楽しめる「炊き分け圧力」機能を搭載。炊き上がりの感想を答えると、121通りの炊き方の中から自分の好みの味に近づいていく「わが家炊き」機能も搭載している。

三菱電機「本炭釜 KAMADO」(NJ-AW106)

 三菱電機の「本炭釜 KAMADO」(型番はNJ-AW106)は、純度約99.9%の炭素材料を内釜に用い、「かまどごはん」を科学的に分析して再現したプレミアムモデル。高級炊飯器 メーカーでは唯一圧力IH炊飯機能を採用していないのが大きな特徴。固さ5種類と食感3種類の合計15種類の炊き分け が可能な「炊分け名人」機能などを備えている。

東芝「備長炭かまど 本羽釜」(RC-10ZWH)

 東芝の「備長炭かまど 本羽釜」(型番はRC-10ZWH)は、羽釜形状や上部空間の拡大などにより、沸騰初期の加熱量を従来比約28%向上した。4通りの炊き分けが可能な「かまど名人」コースを搭載する。約0.6気圧まで減圧して芯まで 短時間で吸水する「真空ひたし」や、ご飯の酸化を防ぐ「真空美白保温」も東芝ならではの特徴だ。

羽釜を採用した理由を聞く

 まず、各社の担当者に「どうして炊飯器の内釜に羽釜を採用する必要があったのか?」を聞いた。それぞれの羽釜について教えてくれたのはこちら。

象印マホービン、第一事業部マネージャーの後藤譲氏(左)、三菱電機ホーム機器、家電製品技術部調理機器技術課長の金井孝博氏(中)、東芝ホームテクノ、家電事業統括部 家電商品企画部調理機器グループの守道信昭氏(右)

象印

象印「NP-WU10」の羽釜

 「理想の炊飯を行うには、“適度な圧力”、“強火”、“均一加熱”の3つの要素が重要だと考えています。昔ながらのかまどの羽釜というのは、重い木ぶたが適度な圧力をかけ、かまどの強火を羽がしっかり受け止めて、強火と均一加熱を実現しているため、美味しいごはんを炊くことができます。この炊き方を現代の炊飯ジャーで実現するためには、カタチと素材を極めたこの羽釜が必要でした」(後藤氏)。

三菱電機

三菱電機「NJ-AW106」の羽釜

 「弊社はただ昔ながらの羽釜の形をなぞるのではなく、その炊き方や構造をきちんと理解、分析した上で、“現代版のかまど”を作りました。それは粒感が高く、なおかつ含水率が高い、われわれが理想とする美味しいごはんを炊き上げる必要があったからであり、それを実現するには、我々の羽釜がないと不可能だったからです。そのため、各地のかまどの産地に出向いて、その炊き方を徹底的に研究しました。一口に釜といっても、マキで炊くか、藁(わら)で炊くか、また金属釜か土釜か、さまざまな炊き方、種類があります。その1つ1つの炊き方や温度履歴を研究、分析した結果、われわれが本当に美味しいと思うかまどごはんは、どのように炊いているのかを見極めました」(金井氏)。

東芝

東芝「RC-10ZWH」の羽釜

 「伝統的な羽釜の形状を忠実に再現したからこそできる本物のかまど炊きを追求しました。羽釜の特長である羽根と羽根から上の背の高い、沸騰うまみ空間を設け、その製法とかまどのような強火で内釜全体を包み込むように加熱する為の、IHコイル、本体の断熱、ヒーター、蓋の構造などの設計を見直しました。また内釜の厚さにもこだわり、釜底の厚さを7ミリにすることによって高い蓄熱効果を確保しています。製造面では、20年目を迎えた東芝独自の溶湯鍛造製法で羽と背の高い部分を一体成形するのに500トンもの高圧成型をするため、上下の金型が開いてしまわないように、新たにカムロック方式を生み出すなど、品質向上と生産性を上げるのに苦労しました」(守道氏)。

 続いて、それぞれ同じ羽釜といっても、実は形状も違えば、素材もまったく異なる。それぞれ自社ならではの羽釜の特長を聞いた。

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