インタビュー
» 2015年11月10日 13時13分 UPDATE

“重低音の先駆け”がついにハイレゾ対応! オーディオテクニカ「SOLID BASS」開発者に聞いた新技術の数々 (1/4)

ハイレゾ対応による鮮やかな重低音再生という新機軸を打ち出したオーディオテクニカの「SOLID BASS」。その開発意図と技術について、ヘッドフォンの最上位モデル「ATH-WS1100」とイヤフォンの「ATH-CKS1100」を中心に詳しい話を聞いた。

[山本敦,ITmedia]

 オーディオテクニカの重低音再生を特徴とするヘッドフォン/イヤフォン「SOLID BASS」(ソリッドベース)シリーズが、いよいよこの秋に“ハイレゾ対応”になった。これまでハイレゾといえば人間の可聴帯域を超える高域成分の再現力であったり、クリアな中域再生にスポットが当てられてきたが、ハイレゾ対応による鮮やかな重低音再生という新機軸を打ち出した点が新しい。SOLID BASSシリーズの商品企画担当者に開発意図を聞いた。

新SOLID BASSシリーズでは“音の違い”によりフォーカスした

ts_solidbase01.jpg SOLID BASSシリーズ新製品の商品企画を担当した、オーディオテクニカの奈良崇史氏(左)と平山優氏(右)

 今回のインタビューに応えていただいたのは、オーディオテクニカでコンシューマー向けヘッドフォン/イヤフォンの商品企画を担当する、マーケティング本部 企画部 コンシューマー企画課の奈良崇史氏と平山優氏だ。

 奈良氏と平山氏は、今回スマートフォン対応のリモコン付きモデルを含めれば全9モデルにもなるSOLID BASSシリーズの全ラインアップについて、企画の立ち上げから担当してきた。なおシリーズは2009年に初代機が登場してから、今回のラインアップが第4世代目になる。

 はじめに奈良氏が今回のシリーズを展開するうえで「3つのコンセプト」を掲げてきたという。「1つは、いま他社製品も含めて重低音モデルのヘッドフォン/イヤフォンが伸び盛りということです。そのカテゴリーをさらに活性化させて、新しい顧客層を開拓していきたいと考えて、ハイレゾ対応という新機軸を打ち出しました」

 「2つめは、新しい技術要素で重低音再生を実現することを課題にしました。これまでのSOLID BASSシリーズは、より強く深みのある重低音を再現するために、本体に2つの空気室を作る『デュアルチャンバー方式』を武器としてきましたが、今では他の重低音系の製品にも同様の技術展開が見られるようになってきました。そこで今回、オーディオテクニカではさらに新しい技術トピックを用意しました」

 「そして最後のコンセプトとして、今まで2年間にラインアップを少しずつアップデートしていたペースを変えて、今回は全製品同時に入れかえました。その中で、1つずつの製品により強く個性を持たせて、お客様が音のキャラクターで選べるラインアップをそろえています」

 3つめの「音のキャラクターで各モデルに個性を与える」という考え方については、平山氏が説明を補足する。「SOLID BASSシリーズの前機種に『ATH-CKS77』『ATH-CKS55』というモデルがありました。どちらも外観のデザインはほぼ同じで、パーツの素材によって音質や値段が異なっていましたが、お客様にとってはその違いが見分けにくいという声もあります。当時はパッケージも含めてシリーズの統一性を重視していたからという理由もあったのですが、かえって選びづらくしてしまったという反省も生まれました。だから、新しいシリーズはラインアップを一気に並べて、それぞれの“音の違い”によりフォーカスする方向を打ち出したのです」

 実際に筆者も友人や知人に「おすすめのヘッドフォン/イヤフォン」を聞かれた時に、素材の違いなど玄人目線で説明するより、もっと分かりやすく「音の違い」でスパッとアドバイスを贈った方が伝わることが多い。店頭の試聴コーナーで商品を選ぶ時に、音の差がはっきり分かって選べたらユーザーにとっても願い叶ったりだと思う。

従来のSOLID BASSから「変わらないところ」と「変わったところ」

 今回発売された新製品の中に、SOLID BASSシリーズ伝統の重低音再生にハイレゾ対応を特徴としてうたう2つのモデルがある。いずれも最上位機となるヘッドフォンの「ATH-WS1100」とイヤフォンの「ATH-CKS1100」だ。奈良氏によれば、今まで通りの重低音リスニングに止まらない、新しい音楽体験を提案したかったことがハイレゾ対応という方向性につながっていったのだという。

ts_solidbase27.jpgts_solidbase28.jpg 最上位機となるヘッドフォンの「ATH-WS1100」(左)とイヤフォンの「ATH-CKS1100」(右)

 「これまでのSOLID BASSシリーズは、どちらかといえばクラブ/ロック/ヒップ・ホップなど若年層の方々が好まれる音楽をターゲットにしてきました。またその反響も狙い通りのものでした。初代モデルからのユーザーの中には、大人になっても同じジャンルの音楽を聴き続けながら、第2、第3世代のシリーズを使い続けていただいている方もいらっしゃるようです。一方で、ハイレゾ対応のプレーヤーやアンプなどには近年普及価格帯のモデルも充実してきました。配信音源にもこれからさまざまなジャンルのハイレゾ楽曲が増えてくるはずです。今の勢いで成長していけば、これから幅広い音楽ファンの方々の生活にハイレゾが寄り添う時がくると判断しました。その時、『ハイレゾは高解像で透明、かつ滑らかできらびやか』という従来からの価値観に加えて、定位のしっかりとした重低音もいい音で聴けるヘッドフォンがあってもいいのではと考えました。重低音と対極にあるように思えるハイレゾを組み合わせて、面白いヘッドフォン/イヤフォンを作りたいと考えたことが開発の起点です」

 商品企画意図について、平山氏はこのように述べている。「店頭ではヘッドフォン/イヤフォンのハイレゾコーナーが盛り上がっていますが、全てのお客様がそこに足を運ぶわけではありません。重低音コーナーに集まる方も大勢いらっしゃるので、こちらにも“ハイレゾ対応”の製品が並んでいれば差別化につながると考えています。当社に限らず、各メーカーともにいま、色んな音の特徴やリスニングスタイルとハイレゾを融合させた新しい魅力を、あの手この手で訴求されている時期なのだと思います」

ts_solidbase30.jpg 「ATH-CKS1100」の装着イメージ

 新しいSOLID BASSシリーズが、これまでのモデルと「変わらないところ」「変わったところ」について訊ねた。まず「変わらないところは、音づくりのコンセプト」だと2人は口をそろえる。

 「シリーズ名にあるよう“SOLID”な低域再生は特徴として継承しています。ソリッドとは、キレのある、締まりのあるという意味で使っています。一般的に、強い低域は鳴った瞬間に、その響きが他の音域の音をマスクしてかき消してしまいがちですが、そこを犠牲にしたくないという立ち位置からSOLID BASSシリーズが生まれています。中高域への悪影響を回避するという観点から、切れがよく締まりのある低域を出して、全帯域にバランスの良さを追求しています。その考え方は今回、上位から下位まで全てのモデルで一貫していて、低域は“ソリッド”でハイレゾ再生にも最適といえるのではないでしょうか」という奈良氏。

 「変わったところ」については、磁束密度を高めて、よりパワフルな重低音を再生するための新しい技術要素を採用している点であるという。その音の違いについて、奈良氏と平山氏は「迫り来る重低音が表現できている」と表現する。

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