インタビュー
» 2015年11月11日 21時52分 UPDATE

滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」:大切なのは“イタリアニティ”――デロンギのモノ作り哲学 (1/5)

エレガントな家電製品で知られるデロンギ。今回は、その本社や工場があるイタリアのトレヴィーゾを訪れ、複数のキーパーソンにモノ作りの哲学を聞いた。ファン必見。

[滝田勝紀,ITmedia]

 オイルヒーターやエスプレッソマシン、コンベクションオーブンなどの調理家電……イタリア発のエレガントかつプレミアムな製品を数多く出しているDe'Longhi(デロンギ)。今回は、その本社や工場があるイタリアのトレヴィーゾに潜入取材。モノ作りの哲学を各キーパーソンに聞いた。

ts_delonghi01.jpg デロンギの本社があるトレヴィーゾはベネチアを守る城下町として発達した。現在も城壁跡が街中には存在するほか、複数の水路があり、ベネチアへも続いている

デザインやカラー、素材の緻密な決め方

 デロンギ製品といえば、もっとも目をひくのがそのルックスである。ルックスとは、デザインやカラー、素材により構成されるものであり、それらは感覚的に決められているのではない。非常に緻密(ちみつ)な決定プロセスがあった。同社のシニアデザイナーであるフランチェスカ・チェスター氏に聞いた。

ts_delonghi02.jpg デロンギのシニアデザイナーで、カラーマネージメントフィニッシング&トレンドスペシャリストという肩書きを持つフランチェスカ・チェスター氏

 チェスター氏によると、デロンギのプロダクトデザインには、“イタリアニティ”という哲学が存在するという。これはデロンギのアイデンティティを歴史的、ファッション的に突き詰めたものだ。

 「デロンギでは、イタリアに残されている歴史的な遺産や建造物をはじめ、イタリア人やイタリアに住んだことのある巨匠たち――彼らの残した作品やアートの歴史、デザイン言語などをしっかりと分析しています。その影響を受け継ぎつつ、ファッション的な要素なども加えたものがデロンギのデザイン哲学“イタリアニティ”なのです」(チェスター氏)

ts_delonghi03.jpg イタリア人の歴史的巨匠たちの作品に影響を受けている
ts_delonghi04.jpg イタリアに住んだことのある巨匠たちの作品などを分析

 歴史的遺産、巨匠たちのデザイン言語、ヨーロッパ中の巨匠たちによるイタリアの解釈、その人たちが描いたイタリアにまつわる作品、そんなあらゆる影響をデザインの中に盛り込み、製品という形でアウトプットする。これはデロンギ製品すべてに通じるものであり、グローバルに展開しているものも同じだ。

 そんなデロンギは現在、日本でも数多くの製品を販売している。例えば、7月に日本国内で発表されたばかりのエスプレッソマシン「デロンギ マグニフィカS カプチーノ スマート」(ECAM23260SB)や「MDH」(マルチダイナミックヒーター)、さらに調理家電のデザインコレクション「ディスティンタコレクション」がそれだ。それら日本向け製品のデザインは、どのように決められているのだろうか?

 「あくまでデロンギのデザインは“イタリアニティ”が核であり、そこを譲ることは絶対にありません。デロンギがデロンギである部分はしっかりと守りながら、日本人が好む機能やデザインを取り込むというのが、デロンギのローカライズ方法です」

 もっとも分かりやすい例が、日本市場が要望し、デロンギのデザイン力と技術力を結集して作られたMDH(マルチダイナミックヒーター)だ。

ts_delonghi05.jpg MDH(マルチダイナミックヒーター)。昨年から日本でも販売している

 「技術というのは、デザインにおいて制約になり、ジャンルや製品によってデザインの自由さや求められる精度がまったく違います。ヒーターはある程度技術面が前に出やすい製品で、どちらかというと自由度の低い中でデザインされます。例えば、マルチダイナミックヒーターは日本を意識して作ったため選ぶ素材の強度、特に鉄の感じや雰囲気を前に出すことにしました。上面は機能が強調されるように、内側の仕組みが見えるようにデザインです。日本人が好むテクニカルな製品なので、そのテクニカル感を感じてもらえるように表示部分やUI(ユーザーインタフェース)などは赤や緑でメモリやアイコンを並べ、機能主義の面、つまり技術力の高さを示しながらも、デロンギならではのエレガントさやシンプルさなどを実現するため、本体のボタンは極力減らしています」。

 また製品に使用する素材を選ぶ際も、例えばゴム製タイヤを採用するなど市場に合わせている。これは、欧米より柔らかめの床が多い日本で、床に傷がつかないように配慮したためだ。

 続いて、エスプレッソマシンについても聞いてみよう。10月に日本で発売されたコンパクトな全自動エスプレッソマシン「デロンギ マグニフィカS カプチーノ スマート ECAM23260SB」は日本仕様でありながら、デロンギらしさがしっかりと出ている製品だ。

ts_delonghi06.jpg 「デロンギ マグニフィカS カプチーノ スマートECAM23260SB」。カフェ・ジャポーネ機能とラテクレマシステムの2大人気機能を搭載

 「エスプレッソマシンは、ドリップコーヒーが好きな日本人に合わせて、機能的にはカフェ・ジャポーネ機能とラテクレマシステムという2つの人気機能を搭載してローカライズしました。デザイン的には、イタリアニティをそのまま打ち出しています。エスプレッソマシンはデロンギが世界で最も強い製品で、コンペティター(競合)はいません。しかも一度購入すると、おそらく10年以上は使用されるライフサイクルの長い製品です。このため、毎年変わるスパンの短いトレンドというのは、デザインにほとんど取り入れません。どちらかといえば建造物などをデザインするのと近い考え方で、普遍性を大切にしています。その証拠に、どこの国で販売するエスプレッソマシンも機能面には多少の差異があるものの、ルックスはほとんど変わらないはずです」

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