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「ナムコ遺伝子」を継ぐ者が大集結! 30年前の受付ロボ復活劇名作ゲームの原画も公開(3/5 ページ)

» 2016年03月04日 06時00分 公開
[村上万純ITmedia]

「プロジェクションマッピング」実装のきっかけはPepper

 レストアのめどが立つと、技術者たちの関心はすぐさま新機能の実装に向けられた。小町の写真や動画を見た人はお気づきかと思うが、今の受付小町は「プロジェクションマッピング」を実装している。頭、顔、胸のあたりに映し出される花柄模様や豊かに動く口、赤く染まった頬などはゲーム開発で培った技術をふんだんに盛り込んだものだ。

頭 頭に桜の花が咲く
胸 胸元も鮮やかな花模様
デバッグ 両肩にはデバッグ用コードを表示できる

 小町にこの最新技術を取り込むことを提案したのは、動く対象物にリアルタイムでプロジェクションマッピングをする「インタラクティブプロジェクションマッピング」を研究する石井さんだ。

 石井さんは、社内でドームスクリーンの技術を教わった後、「スター・ウォーズ:バトルポッド」など、ドームスクリーン型ゲームで映像のゆがみ補正に関わったことがきっかけで、本格的にインタラクティブプロジェクションマッピングに取り組むようになった。

 そして14年12月、社内イベントで動いている「Pepper」を目にする。表面が白いことから、「Pepperの動きに合わせてプロジェクションマッピングができるのでは」(石井さん)と考えた。豊田さんから「受付小町がバンダイナムコスタジオにやってくる」と聞いたのは、それから間もなくのことだ。

 Pepperでできるなら小町でもできるに違いない――石井さんの提案は無事に採択され、小町はさらなる進化を遂げて生まれ変わることになる。

 小町は首、胴、両腕の4カ所が動き、回旋運動やおじぎなどをするが、歩いて移動することはない。石井さんは「関節の少ないシンプルな動きはプロジェクションマッピングに好都合でした」と話す。

小町のプロジェクション 裏でいくつもの画像処理プログラムが動いている

 リニューアルといっても大して見た目は変わっていないのでは? と思う読者もいるかもしれないが、実は外装もプロジェクションに合わせて表面処理を施し、再塗装している。

リニューアル リニューアル時のデザイン案

 リニューアル・デザイン担当の指田さんは、「オリジナルデザインを尊重しつつ、表面のつや消し加工、胸部のピンク色を白色に塗装するなどしました。小町自体がかなり日焼けしてピンクも黄色っぽくなっていたので、塗り直しもしました」と説明する。昔の小町と大きく変わったのは、胸部の色。胸部がピンク色だと何色を投影しても意図通りの色が出しづらいため、白の面積を増やして映像による演出を生かした。

1985年の小町 1985年の受付小町。胸元にピンク色が残る
現在の小町 2016年現在の小町。胸元はプロジェクションしやすいよう白く塗り直した。表面はつや消し加工を施した

 投影パターンは季節ごとに2種類を用意し、襟元の開き方が違う夏服と冬服をラインアップする。今は頭と胸に鮮やかな桜の花びらを彩る春らしい仕様だ。待機モードでは頭に眠気を表す鼻ちょうちん(?)のような泡が流れるなど、遊び心も満載だ。

 ちなみに音声は合成だが、昔は社内でオーディションした女性の声を収録していた。現在の音声パターンは、大きく分けてあいさつと来客対応の2種。各パターンは測域センサーで違いを検知し、あいさつは時間帯によって自動的に内容が変わる優秀ぶり。受付台の裏側を見ると、小町がPCとつながっていることが分かる。

裏側 受付の裏側。小町はWindows PCと連携して動く

 肝心の映像はどこから投影されているのかというと、実は受付に堂々とたたずむマッピー像の中に小型プロジェクターが隠されている。USBカメラで小町の動きを検出し、マッピーから映像を映すという仕組みだ。

マッピー像 マッピー像の秘密
プロジェクター プロジェクターを内蔵する。「マッピーとマッピングをかけているんですか?」と尋ねると、「いや、関係ないです(苦笑)」との回答
ピアス 耳回りにある円環状の影とスカートに取り付けたマーカーをカメラで認識し、小町の動きを検知。耳の光はピアス風

 マッピーは、ゲームでもおなじみの人気キャラクター。しかし、そんな人気者のマッピーを受付に置いたことで、想定外のアクシデントが起きてしまった。 

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