インタビュー
» 2016年05月18日 15時07分 UPDATE

ダイソンがこだわる「デジタルモーター」とは何か (1/2)

ヘアドライヤーや新コードレス「V8シリーズ」と相次いで新製品を投入したダイソン。いずれも新世代のモーターを搭載しているのが特徴だが、そもそもダイソンのいう「デジタルモーター」とは何なのか。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 初の美容家電となる「Dyson Supersonicヘアードライヤー」、バッテリー駆動時間を倍に延ばしたコードレス掃除機「V8シリーズ」と相次いで新製品を投入したダイソン。いずれも新しい世代のモーターを搭載しており、これが新しい製品ジャンルへの進出やスペックアップに貢献したことは明らかだ。ダイソンが“コア技術の1つ”と位置付けるデジタルモーターとは何なのか。小さなボディーに詰め込まれた“こだわり”を追う。

「Dyson Supersonicヘアードライヤー」発表の際に来日したジェームズ・ダイソン氏(左)。5月27日発売の新コードレス「V8シリーズ」(右)

 掃除機のフィルターが目詰まりを起こすことにフラストレーションを感じたジェームズ・ダイソン氏が、製材所の屋上にあったサイクロン集塵機(遠心分離によって木くずを集める大きな装置)を見てサイクロン式掃除機の着想を得たというのは有名な話だ。それを実現するには強力なモーターが不可欠だが、パワーを求めるとモーターは大きく、重くなってしまう。とくにコードレスクリーナーに載せることを考えたとき、小型で求めるパワーを出せるほどの高効率モーターは存在しなかった。ダイソン氏は、専任エンジニアのチームを作り、モーターの効率を下げている原因を探し当てる。銅線とブラシだった。

 「DDM」(Dyson Digital Motor)と名付けられたダイソンのモーターは、一般的には“ブラシレスDCモーター”と呼ばれるものだ。模型などに使う一般的なACモーターと比べると、回転子(ローター)が永久磁石、固定子にコイル(電磁石)と逆の配置となっており、ブラシや整流子は不要。その代わり、コイルへの電流を切り替えるタイミングを合わせる制御機構が必須となる。ダイソンのモーターが“デジタル”を標榜しているのは、この部分で独自アルゴリズムによるデジタル制御を行っているためだ。

ダイソンのコードレス掃除機とモーターの歴史

 最初に「DDM」を名乗ったのは、2011年のコードレス掃除機「DC35」に搭載された「V2」モーターだった。掃除機のモデルチェンジを経て、2013年には新モーター「V6」を採用した「DC62」が登場し、サイクロンも2層の「2Tier Radialサイクロン」に進化した。2015年にはモーターの名称をそのまま製品名に採用した「V6シリーズ」にモデルチェンジ。そして2016年5月、新モーターの搭載とともに全面リニューアルを図った「V8シリーズ」が発表された。なお、モーターのバージョンナンバーが飛んでいることからも分かる通り、研究されていても製品にならなかったものもあったという。

制御アルゴリズムが進化した「V8」

 「V8シリーズ」発表時、コードレス製品の開発責任者、ケビン・グラント氏は、「ダイソンは18年もの間、コンパクトでパワフルなモーターを開発してきた。DDM V8の出力は425W、最高回転速度は毎分11万回転。これはDDM V6(350W)から75Wの向上、回転数で1万回転のパワーアップだ」と話していた。

「DDM V8」

 既報の通り、新しいDDM V8のメカニカル部分は、基本的に従来のDDM V6と共通だ。ハードウェアで変わった部分といえば、より大きな電流を供給するためにPCB(回路基板)への配線が変更されたことと、基板上のコンデンサーが4本から3本に減った程度。コンデンサーの総容量(4000μF)は変わらず、むしろ物理的な配置変えによってモーターの放熱効率を向上させることが目的だった。

歴代のコードレスクリーナー用モーター。左から2011年に登場した「DDM V2」、2013年の「DDM V6」、2016年の「DDM V8」

 つまり、電流を増やして制御アルゴリズムを変えただけで1万回転の上乗せが可能になったわけで、同社製モーターのポテンシャルの高さが伺える。同時に、実質的にソフトウェア変更のみでデジタルモーターのバージョンが上がった事実から、制御アルゴリズムの重要性も理解できるはずだ。V8モーターの改良には10〜15人のエンジニアチームが18カ月をかけ、延べ50万時間におよぶ試験を行ったという。結果として新コードレス「V8シリーズ」は「V6シリーズ」に比べて吸引力が15%向上し、新しいリチウムイオンバッテリーと合わせて40分という駆動時間を実現した。

「V8シリーズ」のリチウムイオンバッテリーは、素材を変えてエネルギー密度を向上させた上にセル自体も従来機のものより少し大きくなっている。このため、バッテリーパックもV6シリーズより一回り大きい

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