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料理アシスタントロボットからディスプレイ付き冷蔵庫まで――欧州スマート家電の最新事情山本敦の「体当たりッ!スマート家電事始め」(2/6 ページ)

» 2016年09月13日 00時05分 公開
[山本敦ITmedia]

シーメンスが展示したキッチンのアシスタントロボット「マイキー」

 一方でHome Connectの相方であるシーメンスは、IFA2016のブースにスマート家電を展示していないわけではないが、特にそれぞれがつながる魅力を前に押し出す感じの展示ではなかった。アイテムの種類や幅、それぞれの完成度についてはボッシュに追いつき、凌ぐものも多々ある。例えばインターネットにつながるフルオートのコーヒーメーカー「EQ.9 Connect」。スマホやタブレットにアプリを入れて、楽しみたいコーヒーの濃さ、ミルクの割合、アロマの強さなどを設定してカップを置けば、手軽においしいコーヒーがつくれる。カスタマイズした設定も10件まで保存できる。価格が2200ユーロ(約25万円)とかなり高価なのがちょっとアレではあるのだが。

ヨーロッパなどの地域ではフルオートのコーヒーメーカーも展開するシーメンス。フラグシップモデルのインターネットにつながる「EQ.9 Connect」は2200ユーロという大変高価な製品だ

 シーメンスのブースを歩いてみると、スマート家電は同社のプレミアムモデルとして、ネットにつながることだけを殊更にアピールするのではなく、まずはそれぞれにスタンドアローンでできることをしっかり伝えていこうとする姿勢がうかがえる。例えば食材を新鮮なまま保存できる冷蔵庫、手間なしで衣類をきれいにできる洗濯機など、アイテムごとの価値をしっかりと訴求しながら、その中で差別化する1つの機能として、インターネットにもつながってますます便利になる付加価値を提案するという考え方だ。

 でも実はシーメンスのブースには、突出してスマートでギークな家電製品のプロトタイプが展示されていた。キッチンの相棒ロボット“Mykieくん”だ。一見すると大阪万博のあの方のようなルックスだが、この子はいま、シーメンスとボッシュが一緒になって推進するHome Connectプラットフォームのコントロールセンターを担う予定の“パーソナル・キッチン・アシスタント”だ。

シーメンスとボッシュが開発するキッチン用のアシスタントロボット「Mykie」(マイキー)。背中に壁投写用のプロジェクターが乗る予定

 例えばキッチンに立つ家族のため、“鍋に水をはって”、“ほら、お湯が沸いてきたらまずにんじんを入れて”といった具合に、おせっかいを焼きながらレシピに沿った調理をサポート。美味しい料理をつくるところまで導いてくれる。背面にはプロジェクターユニットを搭載して、キッチンの白い壁にレシピや、包丁の使い方の動画などを投写。料理がうまくできるまでとことん応援する。顔の所にカメラを搭載して、家族の顔を認識して、コーヒーを飲みたい時にその人の好みに合った設定でコーヒーメーカーを起動してベストな一杯を淹れてくれる。「近い将来に実用化をかなえたい」(シーメンスの説明員)と期待されている製品だ。インターネットにつながる冷蔵庫や洗濯機より、もう少し先の家電の未来のために仕込み中の試作機だが、とっても夢があるじゃないか。

 そもそも、スマート家電は人工知能(AI)とは切っても切れない仲にある。いくら外出先からでもスマホを使って、自宅のスマート家電が動かせるようになったところで、それは本当に豊かな暮らしが手に入るまでの1つの通過点に過ぎない。最終的にはユーザーの生活パターンを学習して、あるいはユーザーの意図を自動的に汲んで家電やロボットが“勝手に”ユーザーの生活をヘルプしてくれることがゴールではないだろうか。だとすれば、シーメンスのMykieのような司令塔がわが家には必要だし、あるいは1つずつの製品にインテリジェンスが組み込まれていかなければならない。

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