インタビュー
» 2016年10月30日 06時00分 UPDATE

フィリップスが仕掛けたビッグデータ戦争――真のIoT活用には医療システム改革も必要 (1/3)

フィリップスは現在、世界で3本の指に数えられるヘルスケアメーカーだ。同社の拠点があるオランダとIFAが開催されたドイツを巡り、そのヘルスケア戦略を探ってきた。

[滝田勝紀,ITmedia]

 フィリップスは現在、世界で3本の指に数えられるヘルスケアメーカーだ。“Innovation+you”(イノベーション アンド ユー)というコーポレートスローガンをかかげ、時代に合わせて人々が有する不満や課題をテクノロジーの力で解決してきた。今回は同社の拠点があるオランダとIFAが開催されたドイツを巡り、そのヘルスケア戦略を探ってきた。

アイントホーフェン市街地にあるフィリップスのミュージアム

 そのルーツは1891年に遡る。オランダはアイントホーフェンで、白熱電球の量産などからスタートし、その後さまざまな分野へと業態を広げ、現在は特にヘルスケア市場に傾注している。しかし創業のルーツを引き継ぎ、世界ナンバー1シェアまで押し上げたライティング事業を、この5月になんと新規株式公開した。今後もより大きなイノベーションが重要であり、より大きな収益が見込めるヘルスケア事業に資本を集中的に投下し、次世代へとビジネスを橋渡しするための決断であったという。

 この8月にアイントホーフェン市街地にある同社のミュージアムを訪れた際、1891年からの120年以上の軌跡がすべて収められ、時代に応じてイノベーションを巻き起こしたさまざまなプロダクトが所狭しと並んでいた。当然、ルーツである照明や電球も数多く並んでいたことはいうまでもない。

 だが、今年の5月にオープンしたばかりの創立125年を記念したスペースを見て驚いた。メーカーのミュージアムにも関わらず、いわゆるプロダクトであるハードウェアが1つも並んでいなかったからである。

メーカーのミュージアムなのにハードウェアが1つもない

 グローバルビジネスでトップを目指す企業は軒並み、消費者ニーズからダイレクトに集金するプラットフォーム作りに躍起になっている。AppleはスマートフォンやiTunes、iCloudなどを軸に、googleはインターネット検索という情報取得を軸に、Amazonはインターネット上での小売りを軸に、それぞれエコシステムを形成。各分野のビッグデータを集約するプラットフォームを構築し、各界のナンバー1の座を確立しているからだ。

 こういった米国系の企業と肩を並べるように、既にフィリップスもヘルスケアを媒介にIoT製品を使ってプラットフォームを構築しようとしている。どのような方法で実現しようとしているのか? アイントホーフェン郊外にあるフィリップスのイノベーションラボに訪れ、フィリップスリサ―チ アカウントマネージャーのジョス・ブルナー氏に話を聞いた。

アイントホーフェン郊外にあるフィリップスのイノベーションラボ

 まず、フィリップスを理解するうえで念頭に置かなければいけない考え方が、フィリップスは“トータルヘルスケア企業”であり、2025年までに、イノベーションを通じて年間30億人もの人々の生活を向上させることを目標にしているということ。その実現に向けて、以下のような一連のヘルスケアプロセスを掲げている。

フィリップスの考える一連のヘルスケアプロセス

1)健康な生活 人々が健康な住居環境で健康な生活を送れるようにサポートする

2)予防 人々が自らの健康を管理する

3)診断 診断が個人に合わせた予防的ケアを介して、最初から適切な方法で進める

4)治療 有効な治療、早い回復、良好な転帰を可能にする

5)ホームケア 回復と家庭での長期ケアをサポートする


 ジョス・ブルナー氏は、この一連のヘルスケアプロセスを念頭に、フィリップス独自の新ビジネスのキーワードとして“Co-Creation”という言葉を掲げる。これは患者を中心に据えた、病院や政府と一緒に現在ある医療システムを新しいものに創造しようする動きや考え方だ。

ジョス・ブルナー氏

 「将来に対するフィリップスのビジョンは、この5つに分かれた一連のヘルスケアプロセスの項目をすべてリンクさせることが重要だと認識しています。具体的には、すべてをIoT製品などで有機的につなぐことで、それぞれのデータを活用できるようにすることが実現への第一歩だと考えます」。ここでいう有機的に繋ぐとは、主に一般の患者と医療機関の医師をデータ上、“Face to Face”にすることを意味しているという。

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