ITmedia NEWS >

これぞ究極の炊飯器!? 「バーミキュラ ライスポット」の秘密(1/3 ページ)

» 2016年11月30日 22時15分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

 日本人にとって、ごはんは特別な食べ物だ。もちもち、しゃっきり、固め、柔らかめなど、味や食感の好みは十人十色。そしてごはんの炊き方もかまど炊き、ガス炊き、電気による炊飯と時代により移り変わってきた。だが、目的は一切ブレない。理想的な“美味しいごはん”を追求するという目的だけは。

 今回紹介する「バーミキュラ ライスポット」は、ガス火で上手に炊けた時の“美味しいごはん”を再現するとともにIH炊飯器の利便性を両立させた最先端の炊飯器だ。その製造メーカーである名古屋の愛知ドビーを訪れ、開発の経緯と仕組みについて聞いた。

愛知ドビーの「バーミキュラ ライスポット」。価格は8万6184円(税込)

 バーミキュラ ライスポットは、最適に炊飯できるよう新たに型から起こした専用の鍋と、適切な加熱を行うため生み出されたポットヒーターのセットだ。ごはんは0.5合単位で最大5合まで炊ける。また、おかず調理機能も搭載しており、30〜95°Cでの低温調理が可能だ。

愛知ドビー本社

 そもそも「バーミキュラ」という鍋をご存知だろうか? 名古屋市にある町工場で、日本初の鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」が誕生したのは2010年2月のこと。密閉性と蓄熱性にとにかく優れ、瞬く間に料理愛好家やプロから多くの支持を集めた。注文してから届くまで1年以上待つという希少価値の高い鍋である。

 それから6年――。次に彼らが挑戦したのがごはんを簡単に、美味しく炊ける炊飯器作りだった。鍋から炊飯器へ。その飛躍のきっかけを作った中心人物が、今回話を聞いた副社長の土方智晴さん。バーミキュラの開発も直接担当していた。

愛知ドビーの副社長で「バーミキュラライスポット」の開発責任者、土方智晴氏

 「もともとバーミキュラは、『世界一、素材本来の味を引き出す鍋を作ろう』という思いから生まれました。野菜を美味しくするために、熱の伝わり方を考えて開発したんです。この鋳物ホーロー鍋がオーナー様の手に渡ったとき『ごはんが、どんな炊飯器よりもおいしく炊けるよ』という声をたくさんいただいたのが一番のきっかけです」(土方氏)

鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」。愛知ドビー再生のきっかけにもなったという

 とはいえ、ごはんを常に美味しく炊くのは一筋縄ではいかない。愛知ドビーには鍋の開発経験はあっても、IHなどの熱源を作ったことはない。美味しく炊くためには火加減調整こそが重要だということは分かっていたが、それでは放っておくと吹きこぼれてしまう。

 「炊飯器のように使う以上、鍋であっても吹きこぼれないようにすることが一番の課題でした。最終的にはふたにフローティングリッドという凹みを作ることで、鍋の中に圧がたまったときだけ蒸気が逃がせる仕組みになりました。ほかにも多くのアイデアがあったのですが、ギミックを付けすぎてしまうと、それは“道具”ではなくなると考え、あくまでも“鋳物”の形状で解決する手段を考え続けました」。これはバーミキュラの特長である密閉性を確保しながら、同時に吹きこぼれないという相反する要素を両立させるための挑戦だ。

沸騰時の圧力でふたが浮き、蒸気が出る仕組み。ふたの縁に刻んだわずかな凹みがフローティングリッドだ

 さらに鍋底のリブ形状も同様に改良を試みたが、ごはんを返しやすくするために、リブ自体をなくしてみたところ、肝心の味が落ちてしまった。「ひたすらトライ&エラーを繰り返しました。ゴールが全く見えない中、ごはんが返しやすく、美味しさをキープするためにはどうしたらいいか? 20パターン以上のリブ形状を考え出し、時には試作品まで作り、実際に鍋を作って、ごはんを炊くという日々が続きました」

円形のリブをというアイデアから、色々な形状を試す。混ぜやすさと、美味しさとのバランスがよかったのが現在の形状
鍋の内側に突起とリングを付けることで、水分がごはんの上に直接落ち、フチを伝わって落ちない。これだけでごはんのべたつきが変わるという

 そしてバーミキュラ ライスポットを開発する上でさらに大変だったのが、熱源のポットヒーターだった。繊細な火加減を実現するまさにバーミキュラ ライスポットの心臓部だ。

 「過去の実験から、ガスの直火では22cm径の鍋で5合が美味しく炊けることが分かっていました。ところが、IHはどうしても炊きムラが出てしまう。これは火力の問題ではなかったんです」

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.