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2016年はDACの当たり年! 麻倉怜士の「デジタルトップ10」(前編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2016年12月29日 11時00分 公開
[天野透ITmedia]

8位:ソニー「PVM-X550」 OLEDモニター

麻倉氏:第8位はソニーのOLEDモニター「PVM-X550」です。

――テレビではなくモニター、それも“PVM”型番ということは、これは業務用のモニターディスプレイですね?

ソニーの業務用OLEDモニター「PVM-X550」。業界標準のマスターモニターである「BVM-X300」の正確性を、55インチという大画面で実現した。麻倉氏は「ソニーにはこの技術を生かした大画面OLEDテレビを是非」と期待を寄せている

麻倉氏:小売希望価格は385万円、スタジオ用の大型モニターです(マスターではない)。LGの55型白色OLED+カラーフィルターという、昨今の大型OLEDにおける一般的な構成のパネルを使用しています。

 ところが出てくる画は一般的なOLEDテレビとはまるで違って、ビックリするほど「BVM-X300」そっくり。こちらはRGBで30インチの自製OLEDパネルで、マスターモニターを示す“BVM”のステータスがあり、世界中の4K HDR環境におけるリファレンス(標準機)となっています。X550はワンランク下の“PVM”ですが、コントラストや色の再現がX300にとても似ています。

――BVM-X300というと、業界人の常識で世界中の大小様々な映像現場に必ず置いてある超有名マスターモニターですね。プロの映像制作現場でこれが無いとモグリ扱いになるレベルの機材です。ところでX500はそもそも発色原理が異なるのに、なぜX300と絵が似るんだという疑問、というか不思議を抱くところです

麻倉氏:その秘密は2つ。1つはLGディスプレイのパネルを厳格に選定すること、もう1つは回路を非常に緻密なレベルで徹底的に追い込むことです。

 製品の使い方としては多人数向けのスタジオ用モニターディスプレイです。スポンサーやエグゼクティブといったゲストをスタジオに招いて行う試写会などの際に用いるため、30インチよりもずっと大画面が必要で、なおかつマスモニと色が違ってはいけません。そのため作業環境であるX300に可能な限り近づけたというのが、開発として力を入れたところです。

 このモニターの特長としては、やはりX300が持つ色みの芳醇さの再現でしょう。X300のピークはOLEDとしては驚異的な1000nitsを誇りますが、こちらは400nitsと少々低い値です。それでもOLEDは黒がとんでもなく沈むので、相対的に黒から白までのDレンジは通常のHDR対応液晶モニターよりもずっと広いです。

 昨今話題となっているHDRの再現性も素晴らしく、色再現もX300によく似ていて、そもそもOLEDなので液晶よりもコントラストや視野角は広く、スピードが速い。そういったことが相まって一般の55型OLEDテレビとは一線も二線も画する、高い正確性とHDRの表現力を充分に持ったモニターディスプレイが誕生しました。スタジオの中だけではなく、最終的な映像鑑賞ディスプレイとしてのステータスも充分にあります。

 私はソニーにおける映像部門の開発拠点である厚木でX300と並べて鑑賞しましたが、違いが判別しづらいほどに基本性能が高いです。X300は映像制作の作業用モニターで、小さい割には映し出す情報量があまりに多すぎるため長時間の鑑賞用途には向きません。ですがX550はX300が苦手とする鑑賞用途に使えます。カネはかかるが4K HDR時代における最高のOLEDディスプレイであり、ビジュアルシーンとしてこれは見逃せません。ソニーさんにはX550の技術を使い民生用の優れた大画面OLEDテレビを期待したいですね。

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