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審査委員長直伝! 第9回「ブルーレイ大賞」レビュー(前編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(1/4 ページ)

» 2017年03月04日 06時00分 公開
[天野透ITmedia]

 Blu-ray Discの特性を生かしたタイトルを表彰する「DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」が今年も行われ、2016年に発売されたタイトルの中でも特に優れたものが顔を表彰された。DEG会長代行の川合史郎氏が、「年間シェアでついにBDがDVDを抜いた」と力説する記念碑的な年となった2016年は、Ultra HD Blu-rayやDolby Atmos(ドルビーアトモス)といった新規格対応タイトルが台頭した年でもある。ダイナミックに変わるセルソフトの最先端を、審査委員長を務めるAV評論家の麻倉怜士氏による“日本一詳しい”レビューで見ていこう。

2月に行われた表彰式の様子。麻倉怜士氏は第1回から審査委員長を務めている
昨年の前田敦子さんに続くアンバサダーは“超”アニメ好きで有名な栗山千明さん。Blu-ray Discにちなんで青を基調としたシックなデザインのワンピースに、これまた青のイヤリングという青づくしのコーディネートで授賞式に来場した。ちなみに今季のアニメは「亜人(デミ)ちゃんは語りたい」にハマっているのだとか

麻倉氏:2008年から始まって毎回リポートをしている「DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」も今回で9回目となりました。とくに今回の大きな意義は“セルソフトにおける構成比でBDがDVDを超えた”ということです。今頃超えたのかという気がしなくもないですが。

――2006年からBDは始まりました。目まぐるしい勢いで技術革新が進む中で、やっとBDがメディアの中心に出てきたのかという感じがします

麻倉氏:1996年にスタートしたDVDはわずか4年というものすごい勢いでVHSとのシェアを逆転しました。そもそもVHSとDVDは明らかにカタチが違う上に、VHSはリニア再生のみで、DVDは頭出しができるという明らかなメリットがあります。加えて同じSDとはいえ、画質もDVDの方がかなり良い。誰が見てもDVDの利点がハッキリしていました。対してDVDとBDは画質と音質の差だけです。形状的には同じ12cmディスクで、頭出しができることも変わらずと、基本的なメリットは変化なしです。画質もDVDのエンコーダーが発達し、信号処理がハイレベルになってきました。

――BDは、JAVAやネットなどのインタラクティブ面に対して先進性がありますが、残念ながらコンテンツの中心的な機能になっているとはいえないですね

麻倉氏:それはおまけで、BDの本質にはなっていないです。そういう訳でBDのシェアは、アメリカはまだ40%台で過半数に達しておらず、ヨーロッパやその他の地域も過半数はまだという状況です。それを示すように、今のところ自宅でビデオを見る際に「DVDで見る」などと一般にいわれている通り、セルビデオソフトの代名詞はまだDVDです。

――2015年にライブエンターテイメント部門の高画質賞を受賞した“ももいろクローバーZ”が授賞式で用意したビデオメッセージで「DVDを買ってくれてありがとう!」と言っていて、業界関係者が皆ズッコケたりしてましたっけ(笑)

麻倉氏:あの事件は苦い思い出ですが、残念ながらコレが現実なんだなと突きつけられた感がありました。しかしついに、2016年のBDシェアが51%に到達しました。これはすごく大きなことです。CDでもそうですが、日本がディスク大国である理由はレンタル市場が成熟しているという点が大きいでしょう。アメリカではNetflixが宅配DVDをやっていたのですが完全にOTTへ移行し、今では配信最大手の一角を占めています。日本はセルもさることながら、レンタル市場におけるBDが伸びているのです。

 また、昨年は4Kテレビが普及しました。これはDEGの川合会長代行が指摘していた要因で、開会のあいさつの際に「4Kテレビが売れに売れた」「量販店で60インチのこんな大きな4Kテレビが20万、30万円で売っている」「これでBDの映画を見てください、映画が違う!」と熱っぽく語っていました。SDフォーマットのDVDよりもフルHDのBD、さらに画素数4倍のUHD BDがはるかに画質が良いのは明らかで、4Kテレビの出発点としてUHD BDという購買行動があったのは間違いありません。

 その川合さんですが「悲しいことに、サウンド・オブ・ミュージックのDVDは100万人が持っている、対してBDはわずか5万人。95万人はDVDのサウンド・オブ・ミュージックで満足しているかもしれないが、これはもったいない」とも言っていました。この時の言い方ですが「カーテンの柄が違う! 山の草が違う! ドレミの歌が違う! 全く違う映画を楽しむことができる!!」などなど、どこかで聞き覚えのある文言が並んでいて「なんか書いた覚えが……」と内心笑いながら聞いていました。

――それ僕も思いました(笑)。それにしても「是非! 4Kテレビと新しいBDソフトを買っていただいて、新しい映像を体験していただきたい!」と、アツい川合会長代行の挨拶が印象的でしたね。

麻倉氏:とまあ、このようにBDにとって記念すべき年が2016年だったわけですが、1年の間に発表されたタイトルからイチバンを選ぶ、それがブルーレイ大賞です。毎年、12月頃に評論家と専門誌出版社とメーカーの各審査員のもとへ、エントリー作品がドサッと送られてきます。その数およそ100タイトル。お正月を挟んで1月上旬に、それぞれの審査員が各部門のベスト3を提出します。こうして集まったノミネート作品の数々から、各部門のベスト3を入選タイトルとして選出します。さらに全審査員で上映会を開き、それらを審査してアワード(部門賞)を決め、部門賞の中から大賞として“ベスト・オブ・ザ・ベスト”を選びます。年末年始にガッツリとやるため審査は大変ですが、通して見ていると絵作りや作品作りなどのトレンドというものが見えてくる、とても貴重な機会です。

――CES取材の渡米が重なる審査員の方にとっては、とんでもない過密スケジュールですね……

DEGジャパンの会長代行を務める20世紀フォックス・ホームエンターテイメントジャパン社長の川合史郎氏。開会のあいさつで「DVDを抜いて、BDが初めて51%。これやりたかった!」とかなり力を込めて語った。
授賞式には米国DEGからプレジデントのエイミー・ジョー・スミス氏も駆けつけ、受賞者に祝辞を述べた
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