孫社長の発言が弱気だった理由は?――決算会見から見えたソフトバンクの課題:石野純也のMobile Eye(2月2日〜13日)(2/2 ページ)
ソフトバンクの決算会見では孫正義氏が自らが「今日の僕のキーワードは謙虚」と語るほど、控えめな発言が目立った。業績そのものは好調なのに、なぜか? 今回は決算会見からソフトバンクの現状を読み解いていきたい。
競争力強化の一方で、差別化の難しさも
その競争力を強化するため、先に述べたようにソフトバンクモバイルは、ワイモバイルやソフトバンクテレコム、ソフトバンクBBを合併して4月から新体制に生まれ変わる。合併の効果を、孫氏は次のように語る。
「今まで、ネットワークはあえてバラバラになっていた。早く1社にネットワークは統合していく。会計だとかそういうところも統合して、無駄なコストを削減し、ネットワークの効率をよくする。しかし、営業においては、ワイモバイルというブランドは継続する。ワイモバイルというブランドで料金もサービスも別のものとする」
ネットワークはソフトバンクモバイルに一本化するといい、ワイモバイルはサブブランドとして、MVNOに近い形で運営していくことになる。それによって、従来よりコストを削減するというのが孫氏の目論見だ。とはいえ、それはコストの削減という“防戦”で、積極的に攻めるソフトバンクの姿勢があまり見えてこない。
新サービスとして、ソフトバンクはNTT東西の光コラボレーションモデルを活用し、「SoftBank光」やセット割を開始するが、こちらについても「結果は様子を見てみないと分からない」と冷静だ。孫氏の話からは、KDDIの「auスマートバリュー」にキャッチアップするためのサービスというニュアンスすら伝わってくる。
「今まではKDDIさんが固定の無線のセット割を積極的にやれる立場にあった。それに対して、ドコモさんと我々も固定のセット割が始まる。我々が1社だけiPhoneを持っていたときは、差別化になっていたが、今は3社に(iPhoneが)ある。固定と無線のセット割も、今まではKDDIさんが差別化の要因として持っていたが、今度は3社にセット割があるというのが置かれた状況」
孫氏はやや引いた視点でSoftBank光やセット割の状況を語っており、そこからも差別化の難しさが伝わってくる。2020年に向けての取り組みを問われた際も、「鉄塔を建てるなど大きな設備投資の山は越えたが、新規技術には積極的に取り組んでいく。技術のソフトバンクといわれるように、しっかり頑張っていきたい」と述べるにとどまり、具体像は語られなかった。
決算会見では、インターネット事業の投資成果も強調されていたが、むしろそちらの方が生き生きしていたほどだ。挑戦について問われた孫氏は、次のように熱を込めて語っている。
「今はインドやインドネシア、周辺国が急激に、初めて本格的なインターネットの普及を迎えつつある。PCを買うには高すぎる、固定回線でのBBにはネットワークが弱い。それらの国々はインターネットの進化から少し取り残されていた。しかしモバイルが進化しスマホが安価に、しかも高性能で手に入る時代がきたため、突然インド、インドネシアの国々にインターネット改革が訪れている。挑戦すべきところに挑戦するのがソフトバンクの流儀」
通信事業は手堅く守りを固めつつ、上位レイヤーで新たな市場を取っていくというのが、今のソフトバンクの方針といえるのかもしれない。
関連キーワード
ソフトバンク | インド | Y!mobile | KDDI | SoftBank 光 | iPhone | 合併 | ソフトバンクモバイル | auスマートバリュー | MVNO | NTTドコモ | ソフトバンクBB | ソフトバンクテレコム
関連記事
- 「石野純也のMobile Eye」バックナンバー
- 「光コラボで三つどもえの戦いに」「4社合併でもまだ国内3位のまま」――ソフトバンク孫社長
ソフトバンクの孫社長が、グループの合併や各社の光コラボモデル参入について決算説明会でコメントした。 - ソフトバンクが光コラボに参入 「SoftBank 光」やスマホとのセット割を3月に開始
ソフトバンクが、NTT東西の光回線(FTTH)を利用した固定通信サービス「SoftBank 光」を3月1日に開始する。スマホとのセット割サービスも合わせて提供する。 - ソフトバンクモバイルとワイモバイルが4月に合併、固定事業も統合――ブランドは維持
ソフトバンクモバイル、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ワイモバイルの4社が合併する。 - 「ドコモ光パック」はなぜ複雑に?――各社の“光コラボ+モバイルのセット割”を読み解く
1月下旬は、NTT東西の光回線を卸販売する「光コラボレーション」を活用した通信キャリアやMVNOの発表が相次いだ。特に注目を集めているのがドコモの「ドコモ光」と「ドコモ光パック」。今回は各社の光コラボ関連の発表を振り返りたい。 - 均一化するドコモ、au、ソフトバンクの冬モデル――差別化のポイントは?
この2週間は各社から新製品や新サービスの発表が相次いだ。ドコモが9月30日に冬春モデルを発表し、その翌日にソフトバンクモバイルがXperia Z3を発表。Z3は3社から出そろった。また、Huaweiが発表したSIMロックフリースマホ「Ascend Mate7」にも注目したい。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.