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これからのarrowsはどうなる?――富士通コネクテッドテクノロジーズ高田社長 一問一答(2/2 ページ)

富士通の携帯電話端末事業を分離して2年前に発足した「富士通コネクテッドテクノロジーズ」は、2018年3月30日にポラリス・キャピタル・グループ傘下に入った。新たな一歩を踏み出した同社の高田克美社長が、2018年夏商戦向け新製品発表会で囲み取材に応じた。

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企業の経営方針などについて

―― ポラリス傘下の体制に移行して、社内体制に変化はあったのか。

高田社長 簡単にいうと、経営方針や執行役員を中心とする役員体制には変更はない。

 あくまでもポラリスは、我々の事業の将来性に対して新たな資本・株主として(3月まで親会社だった)富士通と並んで経営参画していただいたという位置付けだ。

 我々のビジネスやサービス、ソリューションの展開可能性に対して将来価値を認めていただいた結果だと思っている。ポラリスの厚意(意向)もあり、(従来からある)商品ポートフォリオや社名とブランドを大切にしつつ新たなスタートを切れた。

新体制
4月1日から富士通コネクテッドテクノロジーズはポラリス・キャピタル・グループの傘下に入った。旧親会社の富士通も株式の30%を引き続き保有し経営に関与する

―― ここ最近の電機メーカーを巡っては、シャープは(台湾の)鴻海精密工業の傘下に入り、富士通でも(PC事業を手がけている)富士通クライアントコンピューティングは(中国の)Lenovoグループに入った(参考記事)。いずれも大きな生産能力や調達能力を持つ企業グループの一部に組み込まれたことになる。

 一方、御社は「(投資会社である)ポラリスの経験やノウハウを活用したい」ということだが、具体的にはどのようなことを活用しようと考えているのか。

高田社長 弊社はいままでプロダクト(端末)ビジネスで成長してきた。

 しかし、プロダクト自身が成熟期を迎えて、日本のキャリア(携帯電話事業者)もビジネスの主軸を端末そのものから、そこ(端末)を起点とするネットワークを使ったサービスやソリューションに移しつつある。

 翻って我々に(サービスビジネスやソリューションビジネスに関する)十分なノウハウがあるかというと、今までがキャリアやMVNO中心のビジネス展開だったので足りない部分もある。サービスやソリューションに取り組む上で、さまざまな業種とのつながりを広げる必要があるが、ポラリスは(投資会社として)いろいろな企業に投資をしてきた中で培ってきたものがある。これが少なからず、我々にとっての貴重な視点やノウハウになると考えている。

事業領域
従来のプロダクトビジネスに加え、サービスビジネスやソリューションビジネスにも注力。それに当たってポラリスの知見やノウハウを活用する考え

―― 今後は他社との協業も増えていくということか。

高田社長 そういうことになる。既に進めているNXP Semiconductorsとの協業はもちろん、まだ言えない部分も多いが自動車業界を始めとするいろいろな企業からお声がけをいただいている。ありがたい限りだ。

協業
さまざまな業種の企業との協業を推進する

―― ソリューション事業は(元親会社の)富士通も注力している分野。場合によっては同じ顧客を取り合う「ライバル」になってしまう可能性があるが、その点についてはどう考えているか。

高田社長 富士通グループは課題解決のアルゴリズムそのものからクラウドを含めたバックヤード面(のソリューション)をやっている。一方、エッジ側のデバイスについては、我々でできるものは我々に任せてもらえるだろうし、そうでなければ他社のものも使える。そういうすみ分けができている。生体認証、センシングや画像認識技術といった我々が持っている技術が(富士通グループの)お客さまのニーズに合致するものであれば声がかかるというイメージだ。

 現時点で、弊社はクラウドのバックヤードまで(単体で)面倒を見られるほどの事業規模ではない。

―― そうなると、御社単体でもソリューションを提供できる体制を整えていくのか、

高田社長 お客さまによっては「クラウドはAmazon(Amazon Web Sevices)、ネット(回線)はすでにあります」といった具合に、フロントエンド(端末)だけ用意すれば良いケースもあり、弊社単独でお客さまと対峙(たいじ)してビジネスを進める話も出てきている。

―― 社長のプレゼンで、法人向け事業に力を入れるという話があったが、最終的にコンシューマー(個人)向け事業との比率はどれくらいにしていくつもりか。

高田社長 法人向け端末の話からすると、スマートフォンを内線電話(IP電話)として使うとWi-Fi(無線LAN)環境下でのハンドオーバーのスムーズさにメーカーごとの差が出る。弊社の端末(ARROWS M357)は、そこ(Wi-Fiハンドオーバー)にかなり力を入れて作っているので、評価をしていただいた結果、病院などで採用されるケースが増えている。

 今回のプレゼンテーションで説明したのは、センシングやワイヤレス技術を使った「ソリューション」事業に関すること。最近はIoT(モノのインターネット)関連で単発の実証実験が増えているが、我々はスマホで培ってきた技術がある。それを「選択と集中」の観点から厳選し、お客さまの課題解決に資する特徴のある機能に特化して、お客さまに紹介している段階だ。その中でさまざまなリクエストもいただいているので、1つ1つに対して弊社が応えられるか丁寧に対応している。

 現状では具体的な(目標の)数字は言える状況ではないが、端末事業に次ぐ“第2の柱”にしていきたい。

ソリューション事業
ソリューション事業では「センシング」「AI」「ヘルスケア」「クラウド」「IoT」に焦点を絞って開発支援、技術サポートやコンサルティングを展開する

―― 富士通では(通期決算の際に)携帯電話の出荷目標台数を出していた。FCNT単体として、このような数値は出すのか。以前(富士通傘下の時代)は「出荷台数300万台規模で黒字体質に」という話もあったかと思うが、(資本構成変更の)初年度から黒字ということで行けそうか。

高田社長 お答えしづらい部分ではある。

 断言しても良いかは分からないが、投資フェーズがいくつかの事業領域で入るので、それに(利益が)相殺される面はあるとは思うが、(ポラリスには)企業としての将来価値を評価していただいている点からも、私自身としては「赤字はあり得ない」と思っている。

富士通時代の決算説明資料
富士通では、2016年度通期決算まで次年度の携帯電話(とPC)の出荷見通し台数を示していた(2016年度通期決算資料より)

―― 「投資フェーズ」とはどのような領域での投資か。

高田社長 サービス面において、例えば「らくらくコミュニティ」の会員を増やすとなると、サーバ管理や(コミュニティの)24時間監視の体制強化が必要で、投資が必要となる。

 ワイヤレス技術面では、端末に落ちてくるのは先の話かもしれないが、5G(第5世代移動体通信技術)が待ち構えている。今の4G(LTE)もどんどん高速化している。それ以外の無線規格と(モバイル通信が)同居することも増えてくると思うので、既存インフラの中でもさらに工夫が必要な部分が出てくる。

 コネクテッド・ビークル(通信する乗り物)に弊社の技術を移植する時にも、我々が経験したことのない(想定していない)ような環境下での性能維持を求められるだろう。

 これらのような技術開発にも、いくらかの投資をしていかなくてはならない。

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