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野菜が自らの“素性”を消費者に語る――T-Engineフォーラムが実証実験(1/2 ページ)

» 2004年01月08日 16時34分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 RFIDタグを活用したユビキタスID技術の大規模な実証実験がスタートする。

 T-Engineフォーラム(代表:坂村健・東京大学教授)は1月8日、食品のトレーサビリティ(追跡可能性、生産・流通履歴)システムの店舗での実証実験を開始すると発表。本日1月8日から2月6日までの約1カ月間、東京都と神奈川県にある京急ストア計3店舗(けいきゅう能見台店/京急ストア平和島店/同久里浜店)でユビキタスID技術を用いたトレーサビリティシステム構築の実証実験を行う。

 実験では野菜(キャベツと大根)約3万個にRFID(無線ICタグ)「ucodeタグ」を貼り付け、実験店舗内にucode読み取り装置やハンディタイプのucodeリーダー「ユビキタスコミュニケータ」を設置。消費者が読み取り装置に商品を近づけることで、生産履歴や流通情報などを端末の画面で確認できるという流れになっている。ユビキタスコミュニケータは任意に選出した消費者代表にも貸与され、購入した野菜の情報を自宅などで閲覧することができる。

mn_te1.jpg 実験店舗内に設置されたucode読み取り装置(中央)
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 この取り組みは、ユビキタスコンピューティングが「食品の安全」にどれだけ貢献できるかを検証するためにT-Engineフォーラムが昨年から実施している実験の一環で、農林水産省の「平成15年度食品トレーサビリティシステム開発・実証試験」プロジェクトにも選ばれている。ユビキタスID技術を使った生産支援システム上での実証実験は昨年9月から開始されており、そこで生産された大根やキャベツが今回の実験で使われいてる。

 食料品流通分野でのRFID実証実験では、昨年9月にNTTデータ、丸紅、マルエツの3社で行われた例(2003年9月19日の記事を参照)などがあるが、「農作物に対して、生産段階から流通を経て一般小売店まで一貫した情報網を構築し、しかも約3万個の野菜にICタグを貼り付けて一般小売店で販売するという大規模な実証実験は世界でも初めての試み」(坂村氏)という。

mn_te3.jpg 「生産/流通/小売のトータルなシステムによる実証実験は世界初の試み」と語るT-Engineフォーラム代表で東京大学教授の坂村健氏

野菜自身が「生まれ」や「育ち」を消費者に語りかける

 流通段階でのRFIDの活用事例は増えているが、今回の実験のポイントは単に食品にRFIDを貼り付けるだけでなく、生産者が使う農薬や肥料などにもRFIDを貼り付け、生産/流通/小売のトータルな食品環境をユビキタスコンピューティング化しようという点だ。これにより、消費者に提示するトレース(追跡)情報取得の自動化だけでなく、農薬/肥料散布の管理徹底/簡略化など農家の生産活動も支援するといった狙いがある。

クリックすると拡大 食品トレーサビリティシステム実証実験のシステム構成図

 このように、食品のトレーサビリティを生産から小売まで一貫してしかも大規模にシステム構築できた背景には、RFID技術の発達やユビキタス端末の進化が欠かせない。今回使われたucodeタグにはミューチップをはじめとする極小RFIDチップが使われているほか、TRON技術をベースにしたT-Engine応用製品「ユビキタスコミュニケータ」は生産者による情報入力の簡易化に大きく貢献している。

mn_te5.jpg 今回使われたClass1(下位RFIDタグ)のucodeタグ。デモンストレーションではブロッコリーやニンジンなど数種類の野菜が用意されたが、実験で使用されるのは大根とキャベツの2種類だ
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