ITmedia NEWS >

野菜が自らの“素性”を消費者に語る――T-Engineフォーラムが実証実験(2/2 ページ)

» 2004年01月08日 16時34分 公開
[西坂真人,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 生産者は野菜を作る際に農薬を使ったり肥料を土壌の改良をしたりするが、今回のシステムではどの段階でどういった農薬を使ったかといった情報が、ユビキタスコミュニケータを経由してすべてユビキタスIDセンターのサーバに蓄積されている。消費者はその野菜を買う際に、貼り付けられたucodeタグを介して生産履歴などを知ることができるのだ。

mn_te6.jpg TRONベースのユビキタスコミュニケータがucodeタグを読み込み、野菜の“素性”を表示

 「固有のユニークIDを割り振ることができるucodeによって、野菜1品1品に固有の情報を付加できる。これによって、どこの誰が作り、どんな農薬や肥料を使ったかを全部見ることができるのだ。自信を持って生産していないとこういう試みはできない。BSE(牛海綿状脳症/狂牛病)問題などで食品のトレーサビリティが注目されているが、このシステムを構築すれば、すべての生産・流通情報が“ガラス張り”になる」(坂村氏)

 今回の試みに対して、販売店や生産者はどのように考えているのだろうか。

 実証実験の場を提供するけいきゅう能見台店の河野章店長は「昨年末の狂牛病騒動以来、消費者も不安の中で買い物をしている状況。今回のシステムによる情報開示などによって、ユーザーが安心して買い物ができるようになると確信している」と期待を寄せる。

 また昨年9月から実験に協力し、今回のシステムを用いて大根を作った生産者の嘉山敬夫氏は「PCなどは苦手だったが(ユビキタスコミュニケータは)TVのリモコンのように簡単に使えた。なるべく農薬は少なくして有機肥料を使うなどこだわりの野菜を作っているので、そういった情報が消費者に届くことは大歓迎。農薬使用の管理なども自動で行ってくれるため、農作業負担の軽減とともに、誤って農薬をやり過ぎるといったことも解消される」と、今回の食品トレーサビリティシステムを高く評価する。

 「今回の実証実験は、今後のユビキタス社会にとってたいへん重要なものとなる。店舗内すべての商品にICタグを付けた場合にどれだけのコストや手間がかかるや技術面の課題など、実際の現場で発生する問題などを実験を通じて検証していく。また、提供される情報は何月何日にどんな農薬を使ったといった細かなものまで用意されているのだが、消費者がどこまでの情報を知りたがっているかも調べてみたい」(坂村氏)

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.