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東武百貨店が全店舗にICカード対応POSを導入

» 2004年02月04日 21時30分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 東武百貨店は、2月26日から日本で初めてICカード対応POSシステムを全店舗に導入し、ICカード利用促進と決済時の暗証番号利用の啓蒙キャンペーンを開始する。その導入システムとキャンペーンの概要、さらにビザ・インターナショナルによるICカード普及方針の説明会が2月4日に行われた。

 ビザ・インターナショナルの小林浩樹氏(新技術推進部シニアマネージャー)がICカードを推進する理由として掲げるのは「偽造防止」「オフライン処理が可能になることで実現する通信コスト削減」「新しい機能を付加することで創出される新しいビジネスチャンス」

 これらのメリットは以前から主張されてきたものだが、利用者にはICカードのメリットが十分理解されていないとビザは考えている。その原因の一つとして小林氏は「我々が主張しても利用者には“カード会社のメリットではないか”と受け取られてしまう」と述べる。

 「ICカードを使うことで、安心、簡単、スピーディというシンプルな三つのメリットを享受できる」(小林氏)と利用者に対してもメリットをアピールしているが、最近になって利用者側にもカードの不正利用に対する不安感が高まり、ICカード需要がようやく増えつつある。「カードの不正スキームを心配して、必ず面前での決済を希望する利用者が日本でも増えてきている」(小林氏)

ICカードによってもたらされるメリットは「安心」「簡単」「スピーディ」。いままでは企業側のメリットと受け取られてきたが、これからは利用者側のメリットもアピールしていく。ただし「ビザ自身が主張するのではなく、加盟店と一緒になって訴えていく」(小林氏)
ビザ・インターナショナルのアジア太平洋地域におけるICカード移行ロードマップ。2008年までに発行カードの90%がICカードに移行する予定

 このような利用者の不安感を反映してか、日本におけるICカードの普及率は「ビザのICカードは国内で約1300万枚発行されている。これは日本で発行されるビザカードの20%におよび、先行している欧州に匹敵するレベル」(小林氏)に達している。

 しかし、日本ではICカードに対応する決済端末が十分普及していない。ビザが行った意識調査でICカード利用者が「署名より安全で簡単。決済処理も早い」と感じたメリットを享受する機会が少ないのが現状だ。

 この問題を解決するために、ビザではコスト削減、決済オペレーションの効率向上というメリットを加盟店に訴求するともに、カード利用が集中している大型加盟店でインフラを整備し、利用者に対するICカード利用促進の啓蒙キャンペーンを共同で行うことになった。

 今回、そのパートナーとなったのが東武百貨店。3年前から予定していたPOSシステム全面リプレースにあわせて、ICカード対応POSシステムを導入し、ICカード利用促進と、それに伴なう「暗証番号入力啓蒙キャンペーン」を実施する。

 東武百貨店の佐藤治夫氏(取締役情報システム部長)の説明によると、以前のシステムでは利用者からクレジットカードを預かって売り場から離れたPOSで決済を行っていたが、「遠く離れた場所にカードを持っていくことに不安を感じる利用者が多かった」という。「その解決を図るために、今回のリプレースにあわせてICカードPOSを導入することになった」(佐藤氏)

 今回ICカードに対応するのは携帯型のPOS。親機である据え置き型POSとセットになる子機POS端末で、親機POSとは無線でデータをやり取りできるようになっている。「端末重量は300グラム。主に女性販売員が操作するため軽量化と小型化を重視。開発には東武百貨店の女性販売員も参画している」(佐藤氏)

 この携帯POS端末を使って、カード利用者は直接暗証番号を入力することになる。売り場というオープンな場所で暗証番号を入力する不安感について佐藤氏は「モニター実験を行ったが、利用者が不安を感じることはなかった。大丈夫であると判断している」と説明した。

ICカードに対応した携帯POS端末。バーコード読み取り機能も実装しており現金決済の迅速化も図られている。POS親機と無線で接続するものの「ネットワークの規格についてはセキュリティ上詳しく述べられない」(佐藤氏)

 スペックでは1台の親機に子機が10台まで接続できるようになっているが、当初は1200台を導入。クレジットカードの利用率が高く単価も高い化粧品売り場に集中して配置する。ICカード対応POS端末の導入で「現在平均5分の決済待ち時間を1分以内に短縮する」(佐藤氏)

 なお、大規模加盟店における利用促進と環境整備を進めていくと述べているビザであるが、東武百貨店以外の加盟店と同様のキャンペーンを行う可能性について「加盟店の規模とその市場に対するインパクトなどを考えてキャンペーンの展開を考えていくが、今後の展開については未定」(小林氏)

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