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ルネサス、ICカード機能を内蔵した小型メモリカードを開発 携帯向けに製品化へ

» 2004年04月14日 22時06分 公開
[中嶋嘉祐,ITmedia]

 ルネサステクノロジは4月14日、ICカード機能を内蔵した小型フラッシュメモリカード「X-Mobile Card」を開発したと発表した。同社などが策定するモバイルEC用のセキュリティ機能をICカード部分に組み込むことができ、個人認証に加え、コンテンツの保存と保護が同時に可能。まず同社などが松下電器産業などと取り組むモバイルEC実証実験にカードを提供し、2005年春の製品化を目標にしている。

 X-Mobile Cardは、マルチメディアカード(MMC)と同サイズのカード内に「モバイルコマース拡張規格」(Mc-EX)に準拠したICカード機能を搭載した。同規格は2002年、ルネサス(当時は日立製作所)と松下、東芝など5社が策定したフラッシュメモリカード用のモバイルECセキュリティ規格(関連記事参照)。特定のカード仕様やOSに依存せず、コンテンツ保護や個人認証などに使えるセキュリティ機能を実装できる。

 MMC/SDメモリーカード用スロットを持つ端末で使用可能。AND型フラッシュメモリのほか、ID情報などのセキュリティデータ保存用に64KバイトのICカード用マイコンを組み込んだ。メモリ容量は64Mバイトだが、最大で256Mバイトまで大容量化できるという。

 ルネサスは、Mc-EX準拠のメモリカードを使ったモバイルECの推進団体「MOPASSコンソーシアム」の幹事会社。まずX-Mobile Cardを同コンソーシアムに提供し、同カードを活用したモバイルECの商用サービス化に向け、実証実験に乗り出す。

 MOPASSには松下と東芝、独Infineon Technologies、米SanDiskなど60社以上が加盟する。ルネサスに続きMOPASSカードの製造に着手する企業は、まだ正式には出てきていないという。

「携帯電話ではセキュリティ機能が重要」

 フラッシュメモリ市場は順調に成長中だ。ルネサスの山村雅弘・メモリ統括本部長によると、デジタルカメラと携帯電話、USBメモリが成長の3本柱となり、市場は2007年まで年率72%で拡大する見通し。ルネサスは、多値技術で大容量化・高速化した独自の「AG-AND」型フラッシュで攻勢をかける。

 「ビデオ系アプリケーションは大容量になり、高速な書き込み速度が要求されている。こうした点からAG-AND型メモリは国内外の大手メーカーなどを中心に関心が高い」(山村本部長)。

 さらに「携帯電話ではセキュリティ機能が重要」(山村本部長)としてX-Mobile Cardに期待をかける。X-Mobile Cardは、個人認証が必要なデータへのアクセス時にPIN(Personal Identification Number)の入力を要求、入力に何度か失敗するとアクセスを受け付けない仕組みを採用した。将来はバイオメトリクス認証の組み込みも検討する。

 X-Mobile Cardが特に携帯電話向けフラッシュメモリ市場をねらうのは「エンターテインメント系コンテンツでは著作権保護が重視されている」(山村本部長)ためだ。X-Mobile CardはMMC/SDカードスロットを備えた端末で広く利用できるため、携帯キャリアの方針によらず独立したモバイルECサービスが提供できるメリットもある。「メモリをカメラ画像の保存用途に割り切った端末もあるが、全体の4割ほどの端末を狙えることになるのではないか」(山村本部長)。

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