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「MSのFATシステムの特許は無効」と取り消し要求

» 2004年04月19日 10時00分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米ニューヨークにある小さな非営利の特許監視団体が、Microsoftが7年前から保有しているFATファイルシステムの特許は無効であると主張、取り消しを求めている。

 この団体Public Patent Foundation(PPF)のエグゼクティブディレクター、ダニエル・ラビチャー氏は4月15日に米特許庁に公式要請書を送り、この技術に先行する特許が既に認可されているとして本件の再審査を要請した。

 特許・商標専門の弁護士でオープンソース関連の法的問題にも詳しいラビチャー氏は、今回要請書を提出した理由として、Microsoftが昨年末にFile Allocation Table(FAT)ファイルシステムを含む保有特許の一部をライセンス供与するキャンペーンを開始したからだとしている。MicrosoftがFATシステムのライセンスを掌握したがっているのは、同社のソフトをほかに置き換えられないようにして、オープンソースソフト・フリーソフトの普及に歯止めをかけるためだとラビチャー氏は主張している。

 ただし特許庁に提出された書類の中では、「先行技術」(誰かが同じ案を既に申請し、特許として認められたという証拠)が存在するため、米特許5,579,517号を1996年11月にMicrosoftに対して認可するべきではなかったとしか述べられていない。ラビチャー氏はこの書簡において、見落とされた先行技術の存在を指摘し、再審査を要求している。

 「もともと認められるべきでない特許が発行された場合、あらゆる人々に害をもたらす可能性がある」とラビチャー氏は語った。「この特許517は、Microsoftの独占を拡大しつつ、競争を抑止する手段として使われており、公共に計り知れない損害を及ぼしている」。

 特許記録によれば、Microsoftがこの特許の申請を行ったのは1993年4月。しかしこのFATシステムはもともと1970年代半ばに開発されたものだと、ラビチャー氏の要請書には記されている。

 Microsoftの広報担当マーク・マーティン氏は、PPFが特許庁に送付した要請書の複写をまだ受け取っていないとし、「当社はこの団体をよく知らず、彼らがなぜこの特定の特許に関心を示しているのか分からない」との談話を発表した。「当社は、相互運用性の向上に向けてFAT仕様とその特許ライセンスを受けたいとする各社の要望を受け、いくつかのラインセンス契約を交わしている」

 FATは、コンピュータがデータを検知・利用できるように、データがストレージディスクのどこにあるかを追跡する組織的なシステム。コンピュータのほか、デジタルカメラや取り外し可能なストレージメディアなどのデジタルデバイスで採用されている。

 問題のFAT特許は米特許法の下、有効期限が切れる2013年までMicrosoftが保有することになる。

 PPFは特許庁への要請書の中で、「Microsoftは、以前から進めている競争抑止の取り組みを推進するため、デジタルメディアの相互運用性をコントロールする権利を利用している」と述べている。

 「われわれとしては、Microsoftに対して疑わしくは罰せずとし、同社が疑惑のある特許によって競争を阻害する戦略を講じていないと信じたいところだ。だが残念なことに、同社の過去の反競争的な振る舞い、そして最近立ち上げた包括的な特許権をアピールするキャンペーンを併せて鑑みると、同社の意図について深刻な懸念を抱かざるを得ない」(ラビチャー氏)

 「われわれの不満の最終的な矛先は、Microsoft自身に向けられているのではない。認可に値する特許のみを確実に認可することがまったく実践できていない、米国の不完全な特許システムに対して向けられている」とラビチャー氏は語っている。

 なお本稿掲載時までに特許庁の広報担当からコメントを得られなかった。

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