コラム
» 2004年06月10日 17時34分 UPDATE

PCを買い換えるなら、もう少し待って

新しいシステムバス、新しいメモリ、新しいサウンドなど強化機能が盛りだくさんのチップセットが間もなくIntelから発売される。新しいPCを買うのは、それまで待った方がいい。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 近々PCを買い換えたり新たに組み立てようと思っている人は、少し待ったほうがよさそうだ。真面目な話、あと1カ月くらいは待つべきだ。クールな新技術が間もなく登場する予定だからだ。

 私は普段はこうしたアドバイスはしない。結局のところ、いつだって、何かしら素晴らしい新技術は登場間近なものだ。「次なる重要技術」を待ち続けていたら、新しいPCなどいつまでたっても買えないだろう。だが、今回は話が違う。今回、話題になっているのは、近くPCプラットフォーム自体に幾つか根本的な改善が施されるという点だ。

 そう、私をワクワクさせているのは新しいチップセットだ。

 Intelはあと1カ月くらいで、各種の新技術を備えた新チップセットを3種リリースする予定だ(6月3日の記事参照)。この新チップセットは、新しいシステムバス、新しいメモリ、新しいHDD技術、新しいワイヤレスオプション、新しいサウンドなど、誰もが納得するような、実に充実した新機能を搭載する。

 AMD支持者の皆さんもどうぞご心配なく。AMDのパートナー各社も、こうした技術の多く(全部ではないが)を備えた新しいチップセットの投入を計画している。ただし、最初にそうしたメリットを享受できるのはIntelユーザーの方だ。

PCI Expressバスをサポート

 Intelがリリースする新チップセットは、ハイエンドの「925X Express」(コードネームはAlderwood)、ミッドレンジの「915G Express」、そして「915P Express」(コードネームはGrantsdale)の3種。これらの新チップセットは、現行のPCI標準の代わりにPCI Expressシステムバスをサポートする。

 現行のPCI標準では、データは最大133Mバイト/秒bpsで一方向にしか転送されないため、もう一方向のデータは順番を待つ必要がある。標準的なPCI Expressバス(X1と呼ばれる)は双方向に最大250Mバイト/秒の転送が可能なため、合計で500Mバイト/秒の転送速度が実現する。これは、基本的なPCの動作の高速化につながるはずだ。そして現在PCIバスの深刻なボトルネックの問題に悩まされているギガビットネットワーキングの性能を大幅に改善することになるだろう。

 もう1つ、常に帯域幅の増強を必要としているのがグラフィックスの領域だ。PC業界は強力な新しいグラフィックスカードの進化をサポートすべく、何年も前にPCIバスを断念し、Accelerated Graphics Port(AGP)を開発した。PCI Expressは再びグラフィックスをサポートし、PCI Expressベースのグラフィックスカードとの間で4Gバイト/秒の同時転送を提供する。ちなみに、現行の8X AGPバスは2Gバイト/秒の共用帯域幅を提供する。Intelの925X Expressと915P ExpressチップセットはPCI Expressグラフィックスポートを搭載するが、AGPポートはない。915G Expressチップセットには、Intelの新しい統合型の「Graphics Media Accelerator 900」が含まれる。

 PCI Expressベースの第1世代のグラフィックスカードではまだ、こうした追加のスループットが最大限に活用されることはなさそうだが、いずれは、より良い、よりレスポンスの高いPCグラフィックスの実現につながるはずだ。こうしたスループットにより、ソフトやハードは複数のビデオストリームを従来よりも容易に処理できるようになるだろう。それはパーソナルビデオ録画のような技術にとっては重要なポイントだ。

 PCI Expressによる高速化をさらに補足するのは、IntelがこれらのチップセットでDDR2メモリのサポートを計画している点だ。DDR2は現在のDDRメモリの次世代版で、より少ない消費電力でより高い速度を実現することを目指したもの。今日の一般的なマザーボードは400MHzで動作するDDRをサポートしている。さらに高速なものも存在はしているが、メモリ標準化団体からは承認されていない。Intelの最初のチップセットは533MHzで動作するDDR2をサポートする。

高速化のさらなるポイント

 新チップセットのリリースにより、IntelはRAID(Redundant Array of Independent Disks)技術を大衆市場に投入することになる。この技術は基本的には、PCが2つのハードディスクを1つのディスクとして利用できるようにするためのもので、熟練ユーザーの間では昔から好んで使われてきた。

 一般ユーザーがこの名称から家庭用殺虫剤のRaidを連想することを懸念して、Intel幹部は自社バージョンのRAID技術の名称を「Matrix Storage Technology」に変更している(マトリックス三部作の1作目しか見ていない人であれば、それほどネガティブなイメージは抱かないだろう)。この技術自体はその名称よりも優秀で、親しみやすいインタフェースを介して、RAIDへの簡単なアクセスを提供する。この技術がサポートするのは、RAID 0とRAID 1だ。RAID 0は2つのドライブ間でデータをインターリーブして、事実上約2倍のスループットを備えるドライブを実現する。RAID 1はすべてのデータを2つのドライブに同時に書き込むことで、どちらか一方にトラブルが生じた場合にもデータを確実に残せるようにする。

 Matrix技術がさらに優れているのは、Serial ATAの新機能Native Command Queuing(NCQ)のサポートが組み込まれる点だ。この技術は事実上、命令をその場でより効率的な順番に再配列することで、NCQ対応ドライブがより効率的に動作できるようにする。ドライブは少ない回転数で同じ量の情報にアクセスできるため、性能の強化につながる。NCQに関する詳細は、私の前回のコラムを参照いただきたい。

 また新チップセットでは、Intelの「High Definition Audio」技術(コードネームはAzalea)により、統合オーディオにも待望の強化が施される。192KHz、24ビット、8チャンネルの統合オーディオのほか、Dolby DigitalやDTSといった主要なオーディオフォーマットをすべてサポートすることで、IntelがCreativeなどのオーディオカードメーカーに狙いを定めているのは明らかだ。また新しいサウンド技術では同時に複数のデバイスに複数のオーディオストリームを送信できるほか、つなげるデバイスに合わせてシステムがジャックを変更するジャックリタスキング機能が提供される。これにより、例えば、ヘッドフォン用に使っていたジャックにマイクをつなげる場合、システムがその変更を把握して、マイクが機能するようジャックを自動的に変更できるようになる。

 最後になるが、Intelは新チップセットに同社が「Wireless Connect」と呼んでいる新技術を追加する。これは、デスクトップをワイヤレスアクセスポイントとして機能させるために必要なハードを追加するものだ(11月21日の記事参照)。Intelによれば、同社はセキュアな802.11b/gネットワークをわずか数分で簡単にセットアップできるよう、4ステップの設定手順を用意したという。これで、ワイヤレスアクセスポイントを購入する必要はなくなる。ただし、ネットワークを稼動させ続けるためにはPCを常に動作させておかなければならないことになる。

マイナスポイント

 確かにクールだと思っていただけただろうか? だが、私がIntelのマーケティングの回し者ではないことを証明するためにも、こうした技術はどれも紙上では素晴らしいもののように聞こえるが、現実の世界で性能に与える影響についてはまだこれからテストする段階であることを付け加えておこう(PC World Test Centerは目下、このテストに取り組んでいる)。

 性能強化の見通しのほかにも、これらの新チップセットをベースとするPCやマザーボードを初めて購入する際には、あらかじめ考慮しておくべきポイントが幾つかある。具体的に言えば、現行のシステムの多くは利用できなくなるという点などだ。

 おそらく、今回特筆すべきはグラフィックスカードについてだ。ATIやNVIDIAの最新かつ最高のグラフィックスチップを搭載するAGPカードに500ドルを支払ったばかりの人であれば、新たにPCI Expressベースのユニットを急いで作る必要はないと私は思う。その新しいスマートなカードは、新しいプラットフォームには対応しないからだ。Intelの新チップセットがサポートするのはPCI Expressグラフィックスだけ。AGPはサポートされない。以上。

 同じことがDDRメモリにも言える。DDRメモリは新しいDDR2スロットには対応しない。そのうえ、DDR2メモリはDDRメモリよりも価格が高くなりそうだ。Intelですら、少なくともしばらくの間はDDR2の価格は割高になるであろうことを認めている。

 そして、馴染みのSerial ATAドライブについてはどうなるのだろう? Serial ATAドライブは新しいMatrixの設定でも機能はするが、NCQを活用することはできない。NCQを活用するためには、同技術を内蔵したドライブが必要だ。ファームウェアによるアップグレードでは対応できない。

 つまり、新システムでは現行の優れた技術をかなり利用できなくなるということだ。私ならば、優れたHDDを無駄にはしたくない。だが、現行のPCをストリーミングメディアサーバに変えたいといった目的――あるいは、それと同じくらいクールな用途――があるのならば、アップグレードの格好の口実になるだろう。

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