ITmedia NEWS >

米当局、中国WLAN標準化団体へのビザ発給を拒否

» 2004年11月30日 16時19分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米当局が今月、中国独自の無線ネットワーク用セキュリティプロトコルであるWAPI(Wireless LAN Authentication and Privacy Infrastructure)を策定している団体の代表者4名に対してビザ発給を拒否した出来事をめぐり、中国では、同国政府が技術標準の策定に関わることに対する米政府の干渉ではとの疑問の声が上がっている。

 China Broadband Wireless IP Standards Group(BWIPS)の広報担当者、リュウ・チヤオヤン氏によれば、この事件は、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)が11月11日にフロリダ州オーランドで開催したWLAN標準の会合に、BWIPSの6名の代表者が出席しようとした際に起きたものという。

 BWIPSは、中国のWLAN標準技術の中核となるWAPIセキュリティプロトコルの開発を進めている団体。この中国のWLAN標準は、今年に入り議論を巻き起こした。WAPIは一般的に世界で広く使用されているWLAN標準のIEEE 802.11(Wi-Fiとも呼ばれる)とは互換性を備えそうにないことから、WAPIベースの標準はWLAN製品市場に分裂を招くとの懸念が沸き上がり、結局、WAPIベースの標準を実装するという計画は4月に一旦、棚上げにされている(4月22日の記事参照)

 今回のビザをめぐる事件は、オーランドでの会合の3日前に起きた。リュウ氏によれば、BWIPSの技術系の代表者4名はこの日北京の米国大使館から、ビザ申請が却下されたことを知らされたという。残り2名の非技術系のメンバーはビザ申請が承認され、オーランドでの会合に出席している。

 「ISOの規則によれば、今回のビザ却下は加盟諸国には受け入れられない行為だ」とリュウ氏は語り、この出来事に関し、中国代表団が会合で正式に不満を表明したと説明している。この不満に対しては、ISOのそのほかの加盟国や一部の米国企業からも支持を得たという。

 リュウ氏は、技術チームの4名のメンバーのビザ申請がなぜ米当局から却下されたかに関する憶測は控えながらも、WLANセキュリティ標準の策定への中国の関与に対する米国の反対の姿勢を反映したものなのかどうか、疑問を投げかけている。

 米国務省領事局の広報担当者ケリー・シャノン氏は、個人のビザ申請は機密扱いだと語っている。同氏によれば、ビザ発給が却下される一般的な理由には、自国へ帰国する意志を申請者が十分に示していない場合や、機密技術が米国外に持ち出されることを米政府が懸念している場合などがあるという。

 米移民国籍法の一節では、海外から米国への訪問者が自国へ帰る意志を明確に証明していない場合、その人物は移住を望んでいるものと想定されるとシャノン氏は説明している。

 「自国との確実な結びつきを証明しなければ、その人物へのビザ発給は却下される場合がある。自分が自国に帰る意志があることを証明するのは申請者側の責任だ」と同氏。

 さらに同氏によれば、技術移転の規定のもとでは、特定技術が他国に渡ることを米当局が懸念している場合にはビザ発給は却下されることになっている。

 いかなる理由であれ、今回のビザ却下は米国の公式な通商政策とは逆行しているようだ。今年3月、コリン・パウエル国務長官やドナルド・エバンズ商務長官など、数名の米政府高官は中国の通商担当副首相、曾培炎氏に書簡を送り、米政府が中国政府に対して技術標準をめぐる国際的な話合いに参加することを望んでいる旨を訴えた。

 リュウ氏は今後について、今回の出来事をきっかけに、中国が国際標準技術の策定プロセスを思いとどまることはないと述べ、「これが趨勢だ」と語っている。

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.