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Adobe、Creative Suite 2にアクティベーション導入

» 2005年04月05日 10時44分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米Adobe Systemsは4月4日の「Creative Suite 2(CS2)」発表に伴い、CS2製品ライン全体にアクティベーションを導入した。アクティベーションとは、顧客が、手持ちの製品が有効なシリアル番号を利用していることを証明するために、製品の利用開始から30日の間に完了しなくてはならないプロセスのこと。Adobeは、アクティベーションはビジネスのやり方を変えるものではなく、むしろ「製品を2台のマシンにのみインストールできる」とするライセンス条件を施行するものだと説明している。

カジュアルコピー対策

 Adobeは、アクティベーションは不正コピー対策を支援すると考える一方で、このプロセスが海賊問題全体に及ぼす影響を現実的にとらえている。

 「これは不正コピー対策の1つの要素にすぎない」と話すのは、Adobeの国際海賊対策ディレクター、ドリュー・マクマナス氏。「アクティベーションを、当社の不正コピー問題を是正する最重要策とは考えていない。これは、われわれが『カジュアルコピー』と呼んでいる特定のタイプの不正コピーに対抗するための固有のツールだ」

 カジュアルコピーには、ユーザーがソフトを1本購入して、それを友人にあげたり、グラフィックススタジオが1本のソフトをオフィスの全マシンにインストールするようなケースなどがある。「ソフトがインストールされたままの」コンピュータを他人に売却するケースも含まれる。こうしたカジュアルコピーは、不正コピー問題全体を見ると重要ではないように思えるかもしれないが、Adobeは大きな問題だとしている。

 「カジュアルコピーは、当社ソフトの不正コピーにおいて最も多い形態の1つだろう。アクティベーションはユーザーをライセンス条件の枠内にとどめるためのシンプルな障壁だ」(同氏)

盗まれても大丈夫

 ほとんどの人は、自分が海賊行為を行っているとは考えていない。中にはライセンスを読んで、制限事項を理解している人もいるかもしれないが、大多数はライセンスのことは考えず、必要なだけのマシンにソフトをインストールしている。Adobeは、アクティベーションポリシーの策定においては正直な顧客を最優先にしなくてはならないと述べた。

 「『正直な顧客を最優先に』をモットーとした。われわれの不正コピー対策を手助けする負担を正直な顧客にかけたくはなかった。基本的には、アクティベーションはインストールの手順を1つ増やして、顧客が有効なライセンスを持っていることを確認する」(マクマナス氏)

 同氏のチームは、顧客がコンピュータを盗まれた場合など考えられるあらゆる状況を想定した。いかなる状況であろうとも、同氏とそのチームは顧客のほぼあらゆる問い合わせに応えられる十分なサポートシステムを設けた自信があるという。コンピュータを紛失した、あるいは盗まれた場合、CS2には30日の猶予期間が組み込まれているため、ユーザーは別のシステムを使い続けられる。

アクティベーションの手順

 CS2(あるいは同スイートに含まれる個々の製品)のアクティベーションは任意ではない。クリック1回で消せる「今すぐ登録」ダイアログボックスとは違って、30日以内にアクティベーションしなかったら製品を使えなくなる。

 Adobeはこれまで常に、製品のインストールの際にシリアル番号の入力を求めてきた。アクティベーションはそのプロセスに手順を1つ加えたものだ。アクティベーションダイアログボックスはこのプロセスをはっきりと説明し、ライセンス許諾契約書と、アクティベーションポリシーの詳細情報が載っているAdobeのWebサイトへのリンクを載せている。

 2台のコンピュータという制限を守っている場合、「アクティベート」をクリックすると、Adobeのサーバに接続してシリアル番号が確認される。アクティベーションプロセスは10〜15秒程度で完了する。

 もちろん、インターネット経由のアクティベーションが唯一の選択肢というわけではなく、65カ国18言語でアクティベーション受付用の電話番号が設けられている。この番号に電話すると、プッシュホンで情報を入力するか、カスタマーサービス担当者につなぐかを選べる。

 アクティベーションは1回だけで済み、すべての製品が同時に確認される。

 新しいマシンや別のマシンでCS2を使いたい場合、Adobeは今のマシンを無効化する方法を用意している。ヘルプメニューの「Transfer Activation」をクリックして必要な手順を踏めば、そのマシンでCS2は動作しなくなり、別のマシンをアクティベーションできる。

プライバシーは?

 インターネットユーザーはWeb経由で個人情報を送信することに慎重になっているが、Adobeは、アクティベーションプロセスは完全に匿名であり、同社に送られるのは基本的にシリアル番号とランダムに割り当てられる一意のマシンIDなので心配無用だと説明している。

 Adobeが米国でユーザーにCS製品の登録を義務づけるのは今回が初めてだが、これまでに複数の国でアクティベーションのテストは行われていた。2003年3月にはオーストラリアでWindows版Photoshopのアクティベーションが義務づけられ、最近では複数のAdobe製品の中国語版でアクティベーションが導入された。

 Adobeによると、これらのパイロットプログラムは成功した。同社に送られたアクティベーション要求のうちおよそ3分の1が拒否されたが、そのすべてが不正コピーだったわけではないとマクマナス氏。ライセンス条件を教える必要があった顧客もいたという。

 多くのソフトユーザーは、企業の提示価格を払ってソフトを買ったからには、そのソフトは自分のものであり、好きなようにしていいと考えている。「残念ながらそのような仕組みにはなっていない。実際には、ソフトを購入するということは、特定の条件の下でソフトを利用するライセンスを取得することだ」とマクマナス氏。

 アクティベーションはこの数年、Mac開発者の間で人気が高まっており、そのトレンドは拡大し、変化し続けるだろうとAdobeは話している。

 ソフト業界団体Business Software Alliance(BSA)によると、ソフトの不正コピーによる売上逸失は年間およそ290億ドルに上る。アクティベーションは不正コピーの多くの手口に有効だが、高度なユーザーによるクラッキングは阻止できないことをAdobeも認めている。マクマナス氏とそのチームは均衡を見いだすことを目指している。

 「ハッカーによるクラッキングを困難にすれば、正直な顧客にとって作業が面倒になるだろう。われわれにはそうする覚悟はない。われわれが目指すのは、アクティベーションをユーザーが完全に忘れてしまうくらいのプロセスにすることだ」(同氏)

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