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部屋掃除から爆弾処理へ――戦場で活躍する軍事ロボット

» 2005年04月05日 12時41分 公開
[IDG Japan]
IDG

 ロボットというと、人間をかたどった親しみやすい形で、家事を手伝ったり未来の宇宙船に乗るものだと思う人がいるかもしれない。

 米iRobotの人気の掃除ロボット「Roomba Intelligent Floorvac」は円盤型で、人間の形はしていない。だが同社の技術者は、もちろん部屋の掃除もロボットの適切な用途だと考えている。同社はさらに、玩具メーカーHasbroとの提携の下、生きているような人形の開発にも手を染めている。しかし、同社が長年主軸としてきたのは軍事ロボットだ。

 iRobotの軍事ロボットには、SF映画に出てくるような歩いたり話したりするロボットとの共通点はあまりない。人間よりは小型戦車かゴルフカートに近く、スクリーンでの見栄えより、機能性を重んじた設計となっている。例えば同社の「PackBot」は、起伏の激しい土地を移動できるようキャタピラ式のタイヤを装備し、重さは約40ポンド(18.1キロ)。

 さまざまな構成のPackBotが、米軍で洞窟や戦場の偵察、監視パトロール、路肩の爆弾処理にまで使われている。iRobotによれば、PackBotは窓から建物への投げ込みが可能で、階段を上らせることができ、20フィート(6.1メートル)の高さからの落下にも耐えられる。同社の官公庁・産業ロボティクス部門セールス/マーケティングディレクターのトム・ライデン氏によると、米軍はこの融通の利くロボットを、100体以上イラクに配備している。

 iRobotは3月、米海軍海洋システム司令部(NAVSEA)と1800万ドルの契約を結んだと発表した。爆発物処理(EOD)機能を備えた複数種のPackBotを海軍に供給する契約だ。この「PackBot EOD」は、戦車のような本体から伸びたロボットアームによって路肩の爆弾を処理する。オペレーターはPackBotのアームと本体を、離れた安全な場所からリモコンで操作する。

 「一部の兵士はPackBotに大変愛着を持つようになった。(PackBotが)身代わりになって危険地帯に行ってくれるので、自ら防弾スーツを着て危険地帯に踏み込まなくて済むのを知っているからだ」(ライデン氏)

 リモコンで動くロボットというのは犬の散歩に便利そうだと思う人もいるかもしれないが、そういう人がPackBotの入手を考えるのはまだ数年早そうだ。PackBotは構成に応じて1体当たり5万〜10万ドルするとライデン氏。

 「これは、平均的な消費者が家庭で使うようなものではない」と同氏は言い添えた。

 しかし、iRobotのRoombaは、多くの消費者に使われている。全モデル300ドルを切る価格設定のRoombaは、人が直接関与しなくても、センサーを使って部屋を掃除してくれる。Roombaは2002年9月に発売され、iRobotは2004年10月、Roombaの累計販売台数100万台突破を発表している。

 iRobotのジョー・ダイアー氏によると、同社はRoombaで培ったコスト削減のノウハウを軍事用ロボットに生かしている。ダイアー氏は退役海軍中将で、現在、iRobotの取締役副社長兼官公庁・産業ロボティクス部門ジェネラルマネジャーを務めている。「民生部門では数百ドルの製品を売るのに5セントでも必死で節約する。民生部門でコスト意識と価格統制の知識を培い、防衛部門に反映させている」と同氏。

 民生部門で培ったコスト削減の知恵と、官公庁部門で培った性能アップの知恵をそれぞれ生かすことで、近く、兵士以外の人々が広く利用できる多目的ロボットを世に送り出すことができるとダイアー氏は確信している。「大金持ちでなくても手に入れられるものになると思う」と同氏は付け加えた。

 iRobotはまた、トラクターメーカーのJohn Deereとともにジープ型無人車両「R-Gator Autonomous Unmanned Ground Vehicle」の開発を進めている。このゴルフカートサイズの車両は、危険地帯で物資を運んだり、防衛境界線をパトロールするようプログラムできる。この車両には進行ルート上の障害物を避けるためのセンサーと監視カメラが搭載されている。最初の8種類のプロトタイプは今年半ばに完成する予定だ。

 iRobotは海軍との契約のほかにも、2004年4月に米陸軍のFuture Combat Systemsプログラム向けに次世代小型無人地上車を開発する3200万ドルの契約を結んでいる。ダイアー氏によれば、この陸軍との契約はその後3730万ドルに拡大、R-Gatorよりさらに機能性の高い無人地上車を開発することになっている。

 「将来振り返ったとき、(R-Gatorは)インテリジェント車両の1号機として思い出されることになるだろう」(ダイアー氏)

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