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» 2005年05月11日 18時11分 UPDATE

「3Dメモリ」のMatrix、世界最小1Gビットチップを開発

任天堂やソニーが出資するMatrix Semiconductorが、世界最小サイズの1Gビットメモリチップを今夏から量産する。小型かつ安価なメモリのカギは3Dメモリ技術。手軽に使える「使い捨てメモリ」市場の開拓を目指す。

[ITmedia]

 任天堂やソニーらが出資する米国のメモリ開発企業・Matrix Semiconductorは5月11日、世界最小の1Gビットメモリを開発し、今年第3四半期から量産出荷すると発表した。書き込みを1度だけ行えるライトワンスメモリで、同容量のNANDフラッシュメモリと比べ2割から5割安価にでき、使い捨てメモリの実現に道を開くとしている。

 小型化・低価格化のカギとなる技術は「3-D Memory」。データを記録するメモリセルを多層化して積み上げることで、チップ面積の低減と高密度化を両立させる独自技術だ。

 現行品は昨年11月から量産を開始し、シャープが電子辞書の追加コンテンツ用ストレージに採用している。このほど半導体商社大手のイノテックと国内販売代理店契約を結び、国内エレクトロニクスメーカー向け販売に本腰を入れる。

sk_matrix_02.jpg チップ断面図。4層のメモリセルアレイが積み重なっている

 新開発の1Gビット品は、「Trinity」と呼ぶ同社第3世代シリーズ。チップ面積は31ミリで、90ナノメートルプロセスの同容量NANDフラッシュと比べ3分の1のサイズで済んでいるという。

 3-D Memoryの名前の通り、3次元的なチップ構造を開発することで小型化した。周辺回路(CMOSロジック)の上に4層のメモリセルアレーを積み重ねた構造になっており、平面上にメモリセルと周辺回路が配置される一般のメモリに比べダイ面積が少なくて済む。同社が「Segmented Wordline」と呼ぶ技術で、ダイ面積を約25%縮小できるという。

 3-D Memoryはウエハー上に1つのチップとして製造されるため、マルチチップパッケージのように複数のチップを積み重ねてフットプリントを減らす積層チップ構造とは異なる。1枚のチップ構造自体を多層化して面積を減らしているため、最新のプロセスルールを必ずしも使う必要がないのもメリットだ。

 実際、新チップは下層のロジック部は150ナノメートル(0.15μメートル)、メモリ層は130ナノメートル(0.13μメートル)と旧世代のプロセスルールを採用している。枯れた技術を使うことで歩留まりを高く維持できる上、設備投資も抑えられる。小型化+高密度化の両立と合わせ、3-D Memoryが安価に製造できるのはこのためだ。

 同社は大口顧客向けチップ単価などを公表していないが、ダン・スティーア営業担当副社長は「同じ容量のNANDフラッシュの20%から50%安く販売できる」としている。独自技術のため、価格が市況に左右されるフラッシュと異なり「安定した価格で提供できる」(スティーア副社長)という。

 昨年11月に量産を始めた第2世代品は、月産100万個規模で生産中。シャープのほか、米玩具大手のMattelが子供向けメディアプレーヤー「Juice Box」用カートリッジに採用している。現在の標準パッケージはMMC(Multi Media Card)だが、他規格にも順次対応する計画だ。

 新チップは1Gビット品のほか、512Mビット、256Mビット、128Mビットの4製品をラインアップする。製造は台湾のファウンドリ大手Taiwan Semiconductor Manufacturing(TSMC)が担当する。既にサンプル出荷は始めた。

手軽なリッチコンテンツ配布メディアに

sk_matrix_01.jpg 都内で会見したシヴァラムCOO(左)とスティーア副社長。「新しいプロセスや材料は使っておらず、実績が実証済みの既存の技術を使って製造できる」(シヴァラムCOO)

 同社が3-D Memoryで目指すのは「使い捨てメモリ」という新しいカテゴリー。フラッシュメモリは低価格化と大容量化が進んでいるが、使い捨てるにはまだ高いのが現状だ。

 3-D Memoryはフラッシュと同様に電源を切ってもデータが消えない不揮発メモリ。ただし書き込みは1回に限られるが、データは「100年以上」保持できるという。

 このため、CD-Rのように手軽に使用できる大容量コンテンツ配布媒体用途を想定している。特にゲーム機や携帯電話といった小型機器が主要ターゲットだ。

 ゲームソフトを記録するカセットやカードにはマスクROMが使われているが、生産には4〜6週間かかるため、急な需要への対応といった生産調整が難しい。これを3-D Memoryに置き換えれば、需要に応じてデータをメモリに複製すれば済み、在庫管理が容易になる。価格もマスクROMより安く、マスクROMではコスト高で難しかった少量多品種生産にも対応可能だ。

 イノテックとの販売代理店契約は、重要市場と位置付ける日本国内での販売網強化がねらいだ。国内半導体市場をよく知るイノテックの営業・技術チームを通じ、3-D Memoryの販売サポートを拡大する。「日本メーカーは品質に厳しいが、サンプルについて品質が高いとの評価は得ている」(シヴァ・シヴァラムCOO)

 Matrixは1998年、MIPSのR2000とR2010、TransmetaのCrusoeの設計にも関わったマーク・ジョンソン氏(現職は回路技術最高責任者)らが設立した。任天堂とソニーのほか、Eastman Kodak、Seagate Technology、Thomson Multimedia、Microsoftらが出資している。

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