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» 2005年06月20日 06時15分 UPDATE

AppleとIntel、30年にわたる数奇な関係(前編) (1/3)

MacがIntel insideに――この衝撃的な発表に至るまでには、Apple設立以来およそ30年に及ぶIntelとの因縁めいた物語があった。

[林信行,ITmedia]

 2005年6月6日、Apple ComputerはIntelとの衝撃的な提携を発表した。これから2年間をかけて、MacのCPUがIntel製のものに変わっていくという内容だ。

 Appleがなぜこの選択をしたのか、そして、この大きな賭けに勝算があるのかどうかについては、他の記事に任せるとして、ここでは、これまでの29年間、何度も接近と離反を繰り返してきたAppleとIntelが、30年目にしてようやく手を組むまでの歴史を簡単に振り返ってみたい。

AppleとIntel――馴れ初め

 両社の関係については、Intelのポール・オッテリーニ社長兼CEOが、提携の発表があった“Worldwide Developers Conference 2005”のジョブズの基調講演に招かれ、壇上で興奮気味に語っているが、あれはシリコンバレーを舞台にした大河ドラマの中の、予告編に過ぎない。

Intelは1968年設立 Intelは1968年設立(WWDC 2005のジョブズ基調講演中、壇上に招かれ両社の関係を振り返るオッテリーニ)

 オッテリーニは、「Appleは、Intelの創業から8年後の1976年、Intel本社からわずか5マイル(8キロ)のところで誕生した」と紹介し、その当時、からスティーブ・ジョブズがボブ・ノイスとも面識があったと、2人の写真を紹介した(ノイスは、ICの発明者で、Intel創業者の1人)。

Apple Computerは1976年設立 Intelに遅れること8年、Apple Computerは1976年の設立

 オッテリーニは、さらにノイスと(Intel前会長の)アンディ・グローブは、Apple創業当初から同社に投資をしており、ノイスの妻、アン・バウアーはAppleの最初の人事担当副社長だったという。

 だが、オッテリーニは大事な人物を1人忘れている。Appleが創業するのに必要な投資を銀行から引き出した、Appleもう1人の共同設立者、マイク・マークラだ。マークラは初期のAppleの経営を行なった後、1996年まで同社取締役会長も務めていた。

 マークラは、ゴードン・ムーア博士とボブ・ノイスがFairchild Semiconductorを辞め、Intelを創業したすぐ後に、同じ道をたどりIntelのマーケティング戦略を担当した。その後、Intelが株式公開するとマークラは莫大な資産を手に入れ、30代前半ながら隠居を決意していた。

 しかし、まさに創業しようとしていたAppleと出会い、その経営を助けることになる。

Apple対Intel、その抗争の火種

 だが、Appleの共同設立者で技術者のスティーブ・ウォズニアックは、Appleが1976年に作った最初のコンピュータ、「Apple I」と、その後、Appleを大企業に押し上げたヒット作、「Apple II」のCPUに安価なMOS Technologyの「MCS6502」を選んだ。

 当時、Intelの「8080」は179ドルし、Motorolaの「MC6800」は175ドルもしたが、MOS Technologyの6502は、わずか25ドルだった。

MOS Technology「MCS6502」 MOS Technology「MCS6502」(画像はApple IIeのもの)

 Intelはこれに先だつ1974年、一般に世界初のパソコンと言われるMicro Instrumentation and Telemetry Systemsの「Altair 8800」(8080搭載)で採用されるが、その後、本格的なデビューを果たすのは1981年のことだった。

 問題になるのは、そのデビューの仕方だ。

 他の会社のパソコンならまだしも、Intel製16ビットCPU「8088」が搭載されたのは、巨大企業IBM初のパソコン、「IBM PC」だった。

 当時、Appleはパソコンメーカーとして、ナンバ−1の地位を保っていたが、IBMはそれをはるかに上回る資産と社員を抱える大企業であり、その同社がパソコン市場に参入してくることはAppleにとっても大きな脅威だった(実際、IBMというブランド名の効果もあって、ビジネス市場はあっというまにIBM PCに奪われてしまった)。

 「IntelはAppleの宿敵」という図式は、この発表が出発点になっている。

 当時のパソコンは、プログラムをするためのものというホビー的側面が強く、ほとんどのユーザーがある程度のプログラミングはできていた。このようなユーザーが、Apple IIやIBM PCの優劣を論じる中で、CPUの話題も必ず出てきた。こうした議論は1984年、Macintoshが出てきてから、さらに加熱する。

 MotorolaのMC68000系プロセッサーは先進的で、16ビットCPUとは言いながらも、実は32ビットに近い仕様を採用している。これに対して、Intelの8088は16ビットCPUをうたいながらも、実はデータバスが8ビットしかなく、16ビットCPUとは言いがたい仕様だ――当時の技術系Macユーザー達の言だった。

Motorola「MC68000」 Motorola「MC68000」(画像はMacintosh SEのもの)

 しかし、この当時、既にIBM PCは、ビジネス市場で圧倒的なシェアを築いており、IBM PCユーザー(というよりはMS-DOSユーザー)は、Motorola系CPU好きユーザーのこうした発言を負け犬の遠吠え的にしか聞いていない。

 なんだか、これまでのPowerPC対Pentiumと似た論争は、実に20年以上にわたって繰り返されてきたものなのだ。

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