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チップベースのセキュリティ機能が新たな隙間市場に(1/2 ページ)

» 2005年08月12日 20時11分 公開
[John G. Spooner,eWEEK]
eWEEK

 かつて純然たるビジネス向けデスクトップ機能だった「Trusted Platform Modules」(TPM)が急速に広まる兆しを見せている――向こう2〜3年の間にコンシューマーPC、サーバ、そしておそらく携帯電話にも普及する見込みだ。

 このチップは、ハードウェア内にパスワードまたは暗号鍵を格納する小さな“金庫”として機能し、PCをハッキングされにくくする。1999年にIBMから初めて提供されて以来、ビジネス指向のデスクトップとノートPC上で利用可能になっている。

 その後幾つかの進展があり、現在TPMは普及に向けた適切な環境を整えつつあるとみられている。

 状況が好転した要素としては、モジュールコストの低下と優れたソフトウェア開発の促進を助けたオープンTPM仕様の策定、MicrosoftがWindows Vistaのセキュリティ機能としてTPMモジュールの採用を決定したこと、企業ユーザーやコンシューマー間のデータセキュリティに対する危機意識の高まりなどがある。

 「企業であれ、eBayで何か購入しようとするエンドユーザーであれ、今日、誰もがセキュリティの問題に直面している」と、Gatewayの製品マーケティング担当副社長、ウィリアム・デイル氏は語る。

 デイル氏によれば、この市場は「TPM 1.2を含む適切な仕様とコストがそろった認知度の変曲点」に達し、「向こう2年間で本格的に普及するだろう」。

 今週初め、TPMをインストールしたビジネス向けデスクトップ/ノートPCの最新の動きとして、Gatewayから新製品が登場した。世界最大規模のPCメーカーDellならびにHewlett-Packard、今年初めIBMのPC部門を買収したLenovo Group、そして富士通シーメンスと東芝の各社もTPM搭載PCを出している。

 PCメーカー各社による幅広い採用も手伝って、TPM出荷量は2005年の約2000万個から2010年には2億5000万個を超えて急増する見込みだと、IDCは最近の調査で予測している。

  Endpoint Technologies Associatesのロジャー・ケイ社長は、「TPMが重要である理由は、これが合意に基づく共通規格であり、この先業界に取り入れられる技術だからだ」と話している。Endpoint創設以前にIDCのアナリストを務めたことのある同氏は、先のIDC調査を手掛けた人物。

 将来的にTPMはPC以外でも採用されることになる。最近ではサーバでも採用され始めており、ログインの保護、データの暗号化、個人取引の保護に役立っている、とTrusted Computing Group(TCG)のマーケティングワーククグループ会長、ブライアン・バーガー氏。

 115人の会員で構成されるTCGは、コンピュータ業界向けにTPM仕様を策定するセキュリティ標準化団体。サーバ向けTPM仕様を約1カ月前にリリースした。

 この仕様は、「サーバ上のデータ保護、あるいはサーバへのアクセス周辺で、かなり興味深い働きをし始める」とバーガー氏。TPMをマシンに追加すると「そのサーバのルート証明となる」という。

 IBMの広報担当によれば、同社では既に、IntelプロセッサとIBMの独自チップセットを搭載した「xSeries 366」および「同460」サーバモデルでTPMを採用、出荷を開始した。

 Gatewayを含むそのほかのメーカーもこの動きに大きく出遅れることはなさそうだ。「当社も今後この方向に進んでいくことに、(顧客は)大いに期待していて欲しい」とGatewayのデイル氏は話している。

 TCGではこのほか携帯電話などのハンドヘルドデバイスやコンピュータ周辺機器に挿入可能なTPMモジュールの仕様にも取り組んでいる。

 これは現行のものとは別の仕様で、企業ネットワークへのアクセスを保護したり、電子商取引を行う際にも有用となる。さらに別個の周辺機器向け仕様は、キーボードなどのデバイスによる入力を保護するものになるとバーガー氏は説明している。

 ソフトウェアベースの仕様もTCGからリリースされており、その1つが「Trusted Network Connect」と呼ばれるTPMサポート型ネットワークセキュリティ仕様だ。

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