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Linuxの商標登録が必要になった理由

» 2005年09月06日 20時57分 公開
[IDG Japan]
IDG

 GNU GPL(General Public License)では、Linuxカーネルのソースコードを自由にダウンロードし、修正、リコンパイル、リパッケージすることができる。また、望めばそれを、自分が開発した製品に取り込むこともできる。ただし、1つだけ注意点がある。組み込んだ製品を「Linux」と呼んでいいと勝手に解釈しないことだ――名称使用の対価を支払わない限りは。

 Linuxという言葉から、多くの人は何らかの意味を読み取る。Linuxはフリーソフトであり、OSであり、Windowsの競合だ。しかしよく見ると、本当のところLinuxとは何か、その実際の定義は、少しばかりあいまいなことが分かってくる。

 例えば、Free Software Foundation(FSF)はよく、多くの人がLinuxと呼ぶものは、実際にはLinuxカーネルにGNUプロジェクトのツールとライブラリ多数を組み合わせものだと指摘する。だから「GNU/Linux」と呼ぶのが好ましいというのがFSFの主張だ。

 またRed Hat Enterprise Linuxは、Red Hatからライセンスを取得しないと入手できない商用製品だ。さらにSUSE LINUXがあり、Slackware Linuxがあり、Gentoo Linuxがある――皆、少しずつ違う。それでも、すべてLinuxなのか? 組み込みLinuxカーネルを採用するLinksysのケーブル/DSLルータはどうだろう。Linksysはこのルータを「Linuxルータ」と呼べるのか?

 そもそも製品やサービスに「Linux」という名称を付けることを許されているのは誰なのか?

 答えはリーナス・トーバルズ氏が知っている。「誰もいない」が正解だ。同氏の許しがない限りは、そういうことになる。

 「Linux」という言葉は登録商標であり、トーバルズ氏がその保有者だ。同氏の代理を務めるLinux Mark Institute(LMI)という組織が、商業目的でこの言葉の使用を希望する企業や個人からライセンス料を徴収する権限を託されている。一見、驚きかもしれないが、トーバルズ氏によるLinux商標取得のいきさつを知れば、商標権の帰属がいかに重要かが分かる。

 Linuxの開発を始めたとき、トーバルズ氏には「Linux」という言葉について商標権による保護を受けようという計画はなかった。だが1996年には、同氏はそうしたいと考え始めた。ボストン在住のウィリアム・R・デラ・クローチェ・ジュニアなる人物が、1994年に申請した商標権を盾に、売り上げの10%をライセンス料として支払うようLinuxベンダーに要求し始めたからだ。Linuxカーネルがフリーソフトであることに変わりはなかったのだが、デラ・クローチェ氏は、Linuxの名称自体は自分の資産だと主張した。

 Linuxコミュニティーはすぐさま結集して訴訟を起こした。この訴訟が解決したとき、デラ・クローチェ氏の主張は無効とされ、Linuxの商標を保護する役目はトーバルズ氏のものとなった。

 だが、話はここで終わらなかった。いや、終わりようがない。商標を維持するためにはそれを守らなければならない。つまり、商標の使用を許された人を明確に定義し、不正使用者には法的措置を起こさなければならないのだ。そのどちらにも金が掛かる。このためLMIは、かなりリベラルな商標使用方針を維持しながら、最近、200〜5000ドルのスライド制で、控えめなライセンス料の徴収を始めた。徴収した金はすべて商標の管理に充てられる。

 非常に企業寄りで非オープンソース的な話のように聞こえる。だが実際は違う。Linuxという「ブランド」の商標登録は、実のところ不可欠だったといえるかもしれない。オープンソースコミュニティーが、Linuxから収益を得ようとする商業組織と同じ土俵に立つためには、商業組織と同じルールで立ち振る舞う必要がある。つまり、ソフトライセンス、商標など、相手と同じ道具を使う必要がある。OSDLの計画が実現したなら、特許もそうした道具の1つとなる。Linux開発者コミュニティーが大人の仲間入りをする手助けだと思えば、200ドルの出費など安いものだ。

(By Neil McAllister, InfoWorld US)

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