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» 2005年10月21日 11時10分 UPDATE

岩手発:ネット発信する郷土――コスプレも農家もこなす41歳女社長 (1/2)

河童のコスプレをして踊ったかと思えば、Webサイトをデザインし、ネット番組を作り、農業にも精を出す。41歳2児の母は、型にはまらない発想をネットに乗せ、岩手県花巻市から発信する。

[岡田有花,ITmedia]

 岩手県のローカル情報をまったりと紹介するストリーミング番組「ガチャダラポン」。銀髪カツラと派手な衣装で踊るキャスターの「ノンナちゃん」の“中の人”、畠山さゆりさん(41)は、女医やウエイトレスの格好でNHK盛岡の番組に出たこともあり、なんちゃってアイドルとしてDVD出演の経験もある2児の母。しかしただのコスプレイヤーではない。

photo ノンナちゃん

 出演した作品は、すべてセルフプロデュース。地元に密着したデジタルコンテンツ制作を得意とし、岩手の人々にネット活用法を説く教室も開く。ラジオ局のポッドキャスティング番組のDJを務めることもあれば、キャラクターデザインや農業も本業。自ら作ったECサイトで自家製の米を売る。

 「“無駄なもの”を生むうちに、いろんな仕事が来るようになりました」――さゆりさんは、30代で花巻に戻るまでは都内で働く事務職OL。コンテンツ作りともコスプレとも無縁だった彼女は、この10年で花巻いちのIT戦士になった。

photo 「岩手というと、雪に耐えてしのんでいます、というイメージが強いかもしれませんが、『ここから爆発していけるんだ!みんなもやってみてよ』と発信したい」

師匠は「さぁ婆」と「てくのろ爺」

 「“さぁばぁ”と“てくのろじぃ”が、すべてを教えてくれました」――ネットの師匠は、さぁ婆(サーバ)という名のおばあさんと、てくのろ爺(テクノロジー)という名のおじいさんだ。

 都内の外資系企業で働いていたさゆりさんは、1996年、父の死を機に、夫と子どもを連れて花巻の実家に戻り、ネットの可能性に目覚めた。

 外資系企業では、会社の端末を使って電子メールやチャットができ、海外の支社とリアルタイムで通信できた。「インターネットが広まれば、この仕組みを誰もが使えるようになる。きっと楽しくなる」――さゆりさんはそう直感し、実家の農家の一室にネット環境を整え、サイトを作ることにした。

 初めてのサイト作りを助けたのが、花巻の書店で出会った、「さぁ婆」と「てくのろ爺」がHTMLを解説する本。2人に導かれ、都会からの体験農業を受け入れるサイト「Welcome TO そべど」を開設した。農家の友人は「都会から岩手まで、わざわざ農業しに来る人がいるわけがない」と疑ったが、新聞にも取り上げられ、次々に応募が来た。

 「根拠もなく『これが仕事になる』と思ったんです」――マルチな才能が花開き始める。

photo Welcome TO そべど。サイトは今も続いており、今年で8年目。稲刈りなど繁忙期に数人を受け入れ、都会の人に農業を伝える

「無駄なものを生みたい」

 Welcome TO そべどの成功を機に、岩手県のISPに就職。2年間働いた後、2000年に「Bee Creative A,C」(BCAC)を個人事業主として設立。「自分がいいと思ったものを作りたい」と自宅の一室を職場にし、Webサイト構築の仕事などを請け負うことにした。

 「盛岡じゃないと無理」「せめて大通り沿いに会社を作らないと」――花巻の田舎の農家での独立は、誰もが成功を疑った。「でも『作れば来る』と思ったんです。自分が本当に必要とされているなら、ここまで来てくれる人もいるだろうと。“実験クン”でした」

photo BCACのオフィスは、今は花巻駅前のベンチャーインキュベーション施設内にあり、スタッフは3人に増えた

 実験クンは見事に成功。次々に生んだ「お金にならない無駄なもの」が広告代わりになった。

 例えば、方言による無料ストリーミング番組サイト「JENGO-TV」の構築。岩手を中心に、青森、秋田と3県をまたぎ、知り合いに出演してもらってローカルに徹した番組を作った。「キー局のドラマに出てくる東北弁が間違っていることに、子どものころから憤りを感じていたんです。『つがう!』(違う)と。正しい東北弁を広めねばならないと思っていました」

photo JENGO-TV。「じぇんご」は「在郷」がなまった岩手弁で、「田舎」の意味

 コンテンツは、チャーリーズエンジェルの「かまど」(岩手弁で「分家」の意味)として発足したという「じぇんごエンジェル」の活躍を描くムービーや、ほっかむりの似合う人を探すコンテスト、岩手弁と標準語の対訳辞書「岩和辞典」「和岩辞典」など、あくまで地域密着型。東京では作れない、東北人による東北人のためのサイトを目指したが、予想に反して、東北圏外の人や外国人にも受けたという。

 JENGO TVがきっかけで、企業や自治体からコンテンツ制作の仕事の依頼が次々に来た。NHK盛岡ではレギュラー番組「サユリのネット生活改善GROOVE」を持ち、女医やウエイトレスなどのコスプレをしながらネットの活用法を説いた。テレビとネット、携帯電話を連動させた番組「ガチャダラポン」は地元IT企業・ドリームラボと共同で企画・制作。これまで74回放送し、BIGELOBEのストリーミングサイトにも公式コンテンツとして採用された。

 さゆりさんは常に、やりたい気持ちに忠実だ。何か思いつくとすぐに参考書を買い、技術を身につけて実際に作ってしまう。「頼まれたものを作るだけではつまらない。望まれないものを生むのがすごく好き」

 初めてのDVD作品も、そんな風にして生まれた。

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