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ネットで街を安全に――住民参加の“IT自治”

» 2005年10月24日 11時48分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ネットを活用し、自分の住む街を安全で住みやすくしよう――そんな取り組みが、各地で始まっている。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)やネット掲示板、地理情報システム(GIS:Geographic Information Systems)などを活用した住民自治の実例がこのほど、ネットを活用した地方自治を考える「地域メディア研究会」で紹介された。

photo 10月21日に神奈川県藤沢市で開かれた研究会には、全国から自治体やNPO関係者など50人以上が集まった

 研究会が行われた神奈川県藤沢市は、GISを活用したWebマップ「ふじさわ電縁マップ」を運営。市役所職員や市民の有志が、市内の飲食店情報や、季節の見どころ、観光情報などを書き入れている。

 マップを作る活動を通じて、街が変わった例もある。障害者を息子に持つ市民が、障害者用トイレマップを作ろうと市内を取材していると、取材で出会った店のスタッフが活動に心を動かされ、障害者用トイレを導入したという。

 ネットや携帯メールで犯罪情報をいち早く周知し、防犯に役立てる取り組みも始まっている。藤沢市は警察と連携し、ひったくりなど犯罪が起きた場所の情報を市内の地図上に掲載する試みも始めた。愛知県東郷町のある小学校では、不審者情報を保護者向けにメール発信するシステムを教頭が作ったという。犯罪情報や不審者情報は従来、小中学校で配るプリントや警察の掲示物などで地域住民に知らせていたが、ネットなら印刷の手間も不要。情報を得た直後に周知できる。

 昨年、大規模な水害や地震に見舞われた新潟県長岡市のNPO・ながおか生活情報交流ねっとは、新潟県中越地震の際、地震関連情報のリンク集や、地震情報を掲載しているブログの更新情報のRSSを集めたサイトを構築した。自治体サイトでは情報に対して100%の信頼性が求められる分、掲載できる情報には限界もある。NPOは機動性の高さをいかし、口コミ情報のハブとしての役割を引き受ける。

photo 自治体初のSNS「ごろっとやっちろ」

 自治体として初めてSNSを導入した熊本県八代市の「ごろっとやっちろ」は、市民の1%、1400人が利用するSNSに育った。花火大会をリアルタイムで動画中継するなど地元情報を発信しながら、消防署と連携し、市内で火災が起きると会員のマイページや携帯電話に通知するシステムも組み入れた。総務省が中心となって開発中の地域SNSは、ごろっとやっちろのシステムをオープンソース化した「open-gorotto」をベースにしている。

 市民からの草の根情報の信頼性や、自治体と住民との役割分担をどうするかなど課題は多いが、ネットは住民自治を促進するツールに育ちつつあるようだ。

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