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「携帯端末事業の回復は必ずやり遂げる」──NECの矢野次期社長

» 2006年03月15日 21時08分 公開
[ITmedia]

 NECの次期社長に昇格する矢野薫副社長が3月15日会見した。「NECのDNAはイノベーション。攻めの経営のカギはテクノロジーだ」と技術者ならではの経営方針を掲げる一方、金杉明信社長が公約していた携帯端末事業と半導体事業の復活は「必ずやり遂げる」と宣言した。

photo 次期社長に内定した矢野副社長(左)と佐々木会長

 矢野副社長とともに会見に臨んだ佐々木元会長は冒頭、「今月初め、金杉社長から『体調の不調で社長業務の執行が困難になった』と申し入れがあった」と明かした。金杉社長が3年前に引き継いだ西垣浩司元社長と同様、2代続けて健康問題が社長交代の理由になった。

 矢野副社長は「今月初めに金杉社長に呼ばれ、入院せざるを得ないと聞かされた。非常に驚いたが、話している間にこれは夢ではなく、本当のことなのだと理解した。筆頭副社長として、後任を打診されれば引き受けざるをえない。その場で『機関決定されれば受ける』と答えた」と語った。

 「キーワードは研究開発、ネットワーク、海外経験」──と矢野副社長は自己紹介した。矢野副社長はネットワーク機器開発などの技術畑を歩み、スタンフォード大学留学時や米法人社長など3度にわたって米国に滞在した。NECネットワークスのカンパニー社長なども歴任し、現在はNEC中央研究所などを擁する研究開発部門のトップだ。

 技術者としてイノベーションの重要性を掲げつつ、「イノベーションを事業につなげているとは言えず、この2年は研究者を叱咤激励し、『ウソでもいいから1000億円事業を作れ』と言ってきた」。金杉社長が進めてきた構造改革は「ほぼ片が付いた」来期以降、攻めの経営のカギは「全社のドライビングフォースとなるテクノロジーとイノベーション」だと言い切る。

 特に今は「安全・安心な『次世代ネットワーク』が旬の言葉になってきている。次世代ネットワークは個人や企業の活動に大きな変化をもたらし、NECにも大きなチャンスになるだろう」と見る。NTTドコモに納入したiモードゲートウェイなど、大規模基幹システム構築の実績などを強みに、海外事業も再び拡大に転じたい考えだ。

携帯端末事業の再構築は「半年以内」

photo 「PCはITネットワーク総合ソリューションのキーコンポーネントの1つ。顧客がヒューマンインタフェースとして接するのはPCであり、ブランド浸透などになくてならないコンポーネントとして事業は続ける」

 社長として最初に取り組む喫緊の課題は、金杉社長が残した携帯電話端末事業と半導体事業の再建だ。前期に営業赤字化した携帯端末事業は販売低迷が長引く。IDC Japanの調査では2005年、長年君臨してきた国内シェアトップの座をパナソニックモバイルに明け渡し、背後にはシャープが迫っている。半導体子会社のNECエレクトロニクスは今期、200億円の連結最終赤字に転落する見通しだ。

 矢野副社長は「金杉社長がコミットした携帯端末事業と半導体のターンラウンドはスピード感をもって引き続きコミットする」と宣言した。金杉社長は昨年末、機関投資家向け説明会で、携帯端末事業は他社とのアライアンスを含め、半年以内に再構築すると公約しており、矢野副社長はこれを引き継ぐ。

 再編については「日本で10数社も端末メーカーがあるのはおかしいという認識は共通しているが、ユーザーとの接点となる端末事業を手放したくないという認識も共通しており、事業が厳しいから売却するというシンプルなことは誰もやりたくない。相当知恵を絞ったアライアンスが必要だ」と話す。「必ずやるが、NEC主導でやるとも金杉社長は言った。相手があることだが、Win-Winの関係を作るのが課題だ」と話す。「NECネットワークスの社長でもあった私の責任としてやる」

 半導体事業は「NECがNECエレクトロニクスの製品を使っていないということがあり、内製率を上げようという活動をしてきた。その過程でNECエレクトロニクスの現状などを具体的に把握している」とし、金杉社長の公約通り1年半かけて回復させるとした。

 NECの同日の株価は717円。今期予想株価収益率は約23.6倍で、富士通(36.8倍)など大手電機各社に比べると出遅れ感がある。矢野副社長は、マーケットの懸念が携帯端末と半導体の両事業にあることは認識しているとし、両事業の早期回復に加え、コンサルティング事業の強化などで高水準にあるITソリューション事業の利益率引き上げにも取り組んでいく。

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