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19人のIT戦士、島おこしに挑む(3/3 ページ)

» 2006年05月18日 08時15分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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決戦

 翌14日、午前9時。ITセンターの講堂に、100人近くの島民と、審査員5人――村長、観光協会長、マイクロソフトのスタッフ3人――が集まった。島民のうち50人は1人1点を持ち、審査員は1人10点。それぞれの発表を採点する。

 徹夜明けの19人の戦士が現れ、緊張した面持ちで席に着き、静かに順番を待つ。トップバッターは電通的楽力倶楽部。舞台への階段を上がり、PCをセットし、15分間のプレゼンに立つ。提案は、島内に無線LANスポットを整備して観光客にPDAを配り、無線LAN経由で島内の情報を配信するシステム。GPSと連動させ、地図情報も活用する。このシステムがあれば観光がいかに便利になるかを寸劇で表現し、会場の笑いを誘う。

画像 電通的楽力倶楽部の寸劇
画像 島民50人が審査員として参加。いいと思った提案には「○」の札を挙げる

 週刊アスキーチームもPDAを使った地図情報配信を提案。PDAを「手のひら地図」と名づけ、ITが苦手な島民にも分かりやすいように配慮する。観光客にも情報を書き込んでもらい、「地図を進化させる」と訴える。

 「式根島まるごと定額」――SFCのアイデアはそんなコンセプトだ。プリペイドカードの役割をするRFIDタグ入りのネックレス「あしたばくん」を定額で販売。キャッシュレスで旅行が楽しめるようにする。

画像

 Momoは、Webサイトを使った情報発信を提案する。一晩で作り上げた簡易サイトを見せながら、情報収集から宿の予約までワンストップでできると語る。また、島内の名所にQRコード入り看板を設置。携帯カメラで読み取ればその場所に関するクイズが出題され、正解したらポイントをプレゼントするなどして、子どもたちに島内を冒険してもらう。

 Yellow Dealの提案は、無料のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)やブログを使った情報発信。フリーのSNSやブログツールをネット地図と連動させ、島の情報をリアルタイムに伝えていく。無料で小さく始めつつ、軌道に乗ったら予算をかけて大きく育てるという現実的なアイデアだ。

 プレゼンは約1時間で終了し、審査員が別室で最終審査する。結果を待つ間、お笑い芸人「キッチン」「クールポコ」が式根ネタを織り交ぜたコントを披露。倉敷天領太鼓と式根島大漁太鼓がそれぞれ見事な演奏を披露し、戦士たちの緊張をほぐす。

 結果発表。19人の戦士たちが、舞台に並び、静かに結果を待つ。「自分のチームこそ1位だ」――そんな自信と一抹の不安が、表情に見え隠れする。

 3位、Yellow Deal。2位、週刊アスキーチーム。1位は――Momo。綿密な取材をもとに島民の意思を反映し、実現可能なアイデアに落とし込んだ点などが評価された。抱き合って喜び、涙を流すMomoメンバーたち。リーダーの櫻井敬子さんは「チームのみんなのおかげです」と何度も繰り返す。

画像 抱き合うMomoのメンバー
画像 戦いを終えた戦士たち

 午前11時40分、島に戻る船を待つ桟橋。雨は上がり、時折太陽がのぞく。「ありがとう」「また絶対来るね」――島民との別れを惜しみながら、戦士たちは船に乗り込む。

 出航。船と陸をつなぐリボンが伸び、風にあおられ、やがて切れて海に消える。「今度は晴れた日に来たい」――戦士たちはそう語り合い、島民の温かさを振り返り、かみしめる。

画像 出航

 船内では、イベントに対する不満も聞こえてきた。「審査基準が不明確」「主催者側がテレビイベントとしての体裁を繕うことに終始した」――

 その夜、戦士たちは都内に帰着して解散したが、一部の有志が「実現可能な島おこしアイデアを改めて考えよう」と、再び立ち上がった。「あのすばらしい島民たちが、自らの手で島おこしできる体制を作りたい」――Yellow Dealの鈴木成将さんはこう語り、「次」の計画を練る。

 本当の戦いは、これから始まる。

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