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Microsoftの「Web2.0」と「.NET 3.0」

» 2006年06月12日 11時11分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 米Microsoftは、Windows Vistaの全般的なキャンペーンの一環となる新たなブランド戦略を、緩やかに、しかし着実に進めている。6月9日、同社幹部陣は最新の名称変更を発表した。

 Microsoftはコアデベロッパー向け技術の命名体系での混乱を避けたいと考え、全社的に目指す方向をより一層強く反映させる取り組みとして、「WinFX」を「.NET Framework 3.0」と改名する。

 WinFXはVistaのプログラミングモデルで、MicrosoftのWin32技術の後継技術とされる。

 WinFXの構成要素はWCF(Windows Communication Foundation)、WPF(Windows Presentation Foundation)、WF(Windows Workflow)、InfoCard。InfoCardは今回WCS(Windows CardSpace)と改名された。

 Microsoft開発部門副社長、S・“ソーマ”・ソマスガー氏によれば、WinFXの名称変更はあくまでもMicrosoftのコアデベロッパー技術の命名体系に混乱をきたさないことが目的であり、これによって.NET Framework、Visual Studio(コードネーム「Orcas」)、Vista、またはOffice 2007のリリーススケジュールが変更されることはないという。

 これは純粋なブランド変更だ、とMicrosoft幹部陣は強調した。

 そもそもこの問題は、MicrosoftにWinFXと.NETという2つの成功したデベロッパーブランドが存在していることに起因する。同社によれば、WinFXは12月の開発者向けコミュニティー技術プレビュー(CTP)公開以来、ダウンロード数は32万(うち700はGo-Liveライセンスにも加入)となっており、また.NET Frameworkは昨年11月のリリース以来35万回以上ダウンロードされている。

 .NETは成功を収め、かつ軌道に乗っており、WinFXも同じように導入が広がるだろうとMicrosoftは見込んでいる。

 これまでのブランド戦略も早期導入者たちにとっては比較的明確で分かりやすいものだった。しかしMicrosoftは、WinFXがプレリリース版を経てメインストリームになれば、どのフレームワークを使って構築し、どのツールを使うべきか開発者を混乱させるかもしれないとしている。

 このためMicrosoftは2つのブランドのうち、より古くからあり、既に定着している.NET Frameworkに一本化させることを決定し、WinFXを.NET Framework 3.0と改名した。なぜなら同社は、以前からWinFXを.NET Frameworkの次期バージョンと位置づけていたからだ。

 ソマスガー氏は6月9日のブログの中で次のように述べている。「開発者とWinFXについて話しているとき、『WinFXは素晴らしいようだが、.NETはどうなるのか?』との質問を繰り返し受ける。.NET Frameworkは世界で最も成功しているデベロッパープラットフォームとして確立した。開発者は.NETを熟知し、愛着を感じている」

 さらに同氏はこう続けた。「.Net Frameworkは常にWinFXの中核にあるが、WinFXブランドではこれが伝わらない。またこのブランドは、当社フレームワークの旧バージョンと現行バージョン間に不自然な隔たりを生じさせている」

 したがってMicrosoftはこの問題に対処するためにWinFXの改名を決定したと語っている。

 「.NET Framework 3という名称はその技術が正確に何であるかについて、すなわち当社のデベロッパーフレームワークの次期バージョンであることを、適切に明示するものだ」(ソマスガー氏)

 同氏は、「今回の変更は名称のみであり、製品の一部として提供されるテクノロジー自体に影響を及ぼすものではない」と繰り返し強調した。

 「.NET Framework 3.0の構成要素はASP.NET、WinForms、ADO.NET、CLR(Common Language Runtime)を含む現行の.NET Framework 2.0コンポーネントのほか、WPF、WCF、WF、WCSにおける新たな開発者向け革新技術となる」(ソマスガー氏)

 .NET Framework 3.0は予定通りWindows Vistaとともに出荷され、Windows XPならびにWindows Server 2003への下位互換性を備える。

 一方、ソマスガー氏は6月8日のブログで、Microsoftの開発者ドキュメンテーションに顧客の声を反映させる同社初の試みであるMSDN Wiki β版の始動を発表した。

 「MSDN Wiki βでは、各ドキュメンテーション項目に付加したCommunity Contentセクションで、開発者がVisual Studio 2005および.NET Framework 2.0ドキュメンテーションに直接コードサンプルやコンテンツを追加することができる」とソマスガー氏は説明した。

 ソマスガー氏によれば、こうした開発プロセスの透明化は、進化するMicrosoft開発者ドキュメンテーションにおける最初の一歩だという。

 なおIBMは、Open Commercial Development戦略の下、同じような開発プロセスに着手する計画だとしている。

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