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» 2006年06月12日 18時28分 UPDATE

伸ばせロングテール Amazon、本やCDの委託販売サービス開始

「今のロングテールが500メートルなら、これを3キロに」。作り手が書籍やCDなどの商品を「Amazon.co.jp」で直接販売できる「Amazon e託販売サービス」がスタート。「品ぞろえの豊富さが顧客価値につながる」というAmazonのビジネスモデルを強化する。

[ITmedia]

 アマゾンジャパンは6月12日、作り手が書籍やCDなどの商品を「Amazon.co.jp」で委託販売できる「Amazon e託販売サービス」を始めた。参加条件を満たせば、法人・個人を問わずに創作物などを卸業者を通さず直接販売できるようになる。

 アマゾンは、「中抜き」による流通の効率化よりは「小規模出版やインディーズ作品などをAmazon.co.jpの品ぞろえに拡充することで、ロングテールの拡大と押し上げが期待できる」という面を強調。豊富な商品ラインアップで顧客満足度を向上させる、というアマゾンのビジネスモデルに沿ったサービスだと説明している。

photo サービス開始記念ページ

 委託販売に参加する条件は(1)日本国内の事業体か20歳以上の個人、(2)登録する商品の販売権を持っている、(3)登録する商品がISBNかJANコードを取得し、印刷・貼り付けされていること──など。

 当初の対象は書籍、CD、DVD、ビデオゲーム、ソフトウェア。委託商品数の制限はないが、委託する個数はAmazonが需要予測に基づいて決め、委託者に「納入依頼」する形となる。委託期間は無期限。納入すると、他の商品と同様に在庫として扱われ、Amazon.co.jp上で検索・購入できるようになる。基本的には24時間以内発送の対象商品となる。

 商品が販売されると、販売価格の60%を委託者の銀行口座に翌々月までに振り込む。つまり1000円の商品なら600円が支払われ、400円をAmazonが徴収する手数料分となる。また年会費として9000円が必要(8月31日まではキャンペーンとして無料)。

photo e託販売サービスの根来香里統括マネージャー

 参加条件としたISBNコードやJANコードの取得は費用がかかるため、少部数の自費出版物や漫画の同人誌などではややハードルが高いが、「将来はコードのない商品の取り扱いも検討したい」(e託販売サービスの根来香里統括マネージャー)という。

 基本的には委託される商品の内容は問わないが、アダルトな内容などが含まれる場合は、Amazonが他の出版物などでも適用している審査プロセスを通る必要がある。

品ぞろえの豊富さが顧客価値につながると見るAmazon

photo

 Amazonの委託販売サービスは、米国では10年前に始め、参加者は数万に上るという。英国で5年前、ドイツで今年3月に始まり、日本は4番目となる。

 委託サービスのねらいは「品ぞろえの拡充」。小規模出版社の書籍やインディーズレーベルのCDなど、一般の小売店では販売されないが、一定のニーズはある商品を積極的に委託してもらうことで、多様な消費者の好み──ロングテールに対応する。

 Amazon.co.jpは昨年11月に5周年を迎え、今年3月末のアクティブカスタマー数は600万人以上。ネットレイティングスの4月度調査によると、自宅ユーザーでAmazon.co.jpを訪問したのは1564万人。2位のセブンアンドワイ(176万人)を段違いに突き放し、書籍販売サイトトップに立っている。

 “欲しい物が何でも売っている”ことがAmazonを強くする。委託サービスは、Amazonが掲げてきた「品ぞろえの拡充による顧客満足度の向上」というビジネスモデルを強化するものだ。同社のローレン川崎・メディアヴァイスプレジデントは「どの小売業者にも勝る品ぞろえでビジネスを成長させ、顧客に価値を提供する」と話す。

 一方で、卸業者との関係も従来通り続けていく。「突然売れ始める商品への対応など、卸業者の役割は必要」(根来統括マネージャー)なためだ。

500メートルの「テール」を3キロに

photo に・よん・なな・みゅーじっく代表取締役の丸山茂雄氏(左)とアマゾンジャパンのローレン川崎・メディアヴァイスプレジデント

 新サービスには、ソニー・ミュージックエンタテインメント社長やソニー・コンピュータエンタテインメント会長を歴任した丸山茂雄氏が旗揚げした「に・よん・なな・みゅーじっく」が参加。同社が扱う小規模レーベルの音楽作品を委託販売する。

 同社代表取締役の丸山茂雄氏は、新サービスの発表会で「数カ月前に聞き、素晴らしいサービスだ、ぜひ応援しようということになった」と参加の経緯を話した。

 丸山氏によると「こうしたサービスは今の時代に合ったもの」。というのも「映画の配給網やレコード会社、テレビ局などは、クリエイターが作るものをユーザーに届ける仕組みを作り、独占してきた。だがブロードバンドの普及でこうした独占が難しくなり、クリエイターが直接届けられるようになってきた」ためだ。

 一般的に、委託販売は「委託する側」が嫌うことが多い。「販売する店舗側は資金負担なく商品を仕入れることになる」ため、店舗の販売努力は自ら代金を支払って仕入れた商品に向きがち。委託販売は二の次となり、なかなか売ってもらえないというケースが多いためだ。

photo 「大手レーベルも利用が望ましいのでは」と話す丸山氏

 しかしWeb販売はこうした委託の常識も覆す。丸山氏は「Web上で販売するということは、売れている商品でも委託商品でも平等。客がクリックしたものは同じ取り扱いになり、委託のマイナス面は消えている」と評価。インディもメジャーもAmazon上では平等。「これが、新サービスがいいなと思う最大の理由だ」(丸山氏)

 音楽配信の普及で、パッケージメディアの将来性に対する危惧も指摘されているが、丸山氏は「新しい時代でも物理的な商品は残っていく」と見る。インディーズ作品は一般の店舗では在庫が少なく、すぐに手に入らないことも多いが、Amazonの委託では基本的には24時間以内に発送する。「インディーズの機会損失を防げる。ロングテールのテールの部分がいま500メートルくらいなら、これを3キロ先、もしかしたら5キロ先まで伸ばせる」(丸山氏)

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