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「空調ベッド」でさらば寝苦しい夜

» 2006年06月19日 10時24分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 梅雨が明ければ暑い毎日が待っている。寝苦しい熱帯夜でもエアコンいらず、ひんやり快適に眠れるベッドシート「空調ベッド 風眠」が登場した。開発したのは、裸より涼しいファン付き服「空調服」でおなじみの株式会社空調服。ベッドも空調服と同様にファンを装備。ファンからシート全体に送風し、体から出る熱と湿気を外に逃がす仕組みだ。

画像画像 送風中の空調ベッド。シーツがふくらんでいる(左)。足下の筒の中にファンを装備した
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 独自開発した中空構造のプラスチック製シート「スーパースペーサー」を風を通さないシーツで包み、足下の筒の中のファンから送風する。枕を置く部分だけメッシュ状構造にして風を逃がしている。


画像 スーパースペーサー

 スーパースペーサーは厚さ約1センチで、PCキーボードのキートップを中空にしたような形。上からの力に強く、丈夫だがフレキシブル。下に敷いた素材の柔らかさをそのまま伝えるため、ゴツゴツした不快感や違和感もほとんどなく、普通のベッドと同じような感覚で眠れる。

 実際に寝てみると、体の下がいつまで経ってもひんやりしていて、暑い夜にありがちな、布団の温まっていない場所を探して何度も寝返りを打つ――ということも必要なくなりそう。ファンの騒音は「扇風機や最新式クーラーと同程度」(同社)といい、それほど気にならない。

 周囲の気温が30度以上の場合なら快適に眠れるが、それ以下になると体が冷えすぎる危険性があるため、ファンは寝入りばなの数時間だけオンにすることを勧めている。ファンを切っても、スーパースペーサーが体と布団の間に隙間を保っているため熱がこもりにくく、一般の布団に寝るよりずっと涼しく眠れる。

画像 空調ベッドのマット部分と、通常のマット部分に5分間手を置いた(中)。空調ベッドのマット部分は手を離すとすぐに温度が下がるが、通常のマット部分は温かさが残っている


画像 くるくる巻いて収納

 消費電力は、1日8時間、強で使用しても月15円以下といい、毎晩エアコンを使うよりずっと省エネだ。電源スイッチにはタイマーと、ファンの回転速度を3段階から選ぶ機能を装備した。収納する際は、ファンの収まっている筒を中心にシートをぐるぐる巻けばOK。場所も取らない。

 今年は「有償試作品」として、限定数を2万9000円で販売。来年は、周囲の温度に合わせてファンをオンオフできる機能などを追加し、本格販売を始める計画だ。試作品第1弾はすぐに売り切れてしまったが、順次作って販売する。

エネルギー危機を救いたい

 同社の市ヶ谷弘司社長が空調ベッドの開発を始めたのは空調服と同時期、約8年前。東南アジアの旅がきっかけだった。

 東南アジアでは、暑い中クーラーなしで暮らす人々がたくさんいた。「彼らがクーラーを使うようになれば、エネルギー危機が起き、環境問題につながる」――こう考えた市ヶ谷社長は、省エネで涼しく過ごせる装置開発に頭を悩ませ、6年がかりで空調服を完成させた。

 ただ空調服は、寝ている間は使えない。1日中涼しく過ごすには、省エネで涼しく眠れるベッドの開発が不可欠。しかしベッドシートの素材、スーパースペーサーの開発が難航した。

画像 スーパースペーサーと市ヶ谷社長

 体の下に風が通るスペースがあればいいはず――当初からこう考え、ゴム板の上にレールとメッシュシートを敷いたものや、プラスチック製のメッシュ板などさまざまなタイプを試作。寝心地を確かめながら改良を続けたが、固くて体が痛くなったり、壊れやすかったり――なかなか理想の寝心地にたどりつけない。苦節8年。今年やっと満足できる品質のスーパースペーサーが完成し、特許も取得した。

 「スーパースペーサーだけでも、暑さの問題はかなり解決する」と市ヶ谷社長は胸を張る。確かに、空調ベッドはファンなしでも熱がこもりにくく快適。お尻の下に敷けば、じっと座っていても熱がこもらない快適な座布団になるし、車の座席の背もたれに設置すれば、寄りかかってもじっとり汗をかかずに済みそうだ。

 スーパースペーサー単体でも引き合いがあり、介護関連グッズのメーカーから、車椅子用の座布団に使いたいという相談も受けているという。

 暑い夏は空調服と空調ベッド。これが常識になれば、地球のエネルギー問題は少し改善するかもしれない。

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