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Googleのダークファイバー購入をめぐる「謎」

» 2006年06月26日 12時22分 公開
[David Morgenstern,eWEEK]
eWEEK

 Googleによる相次ぐ「ダークファイバー」(1990年代後半に構築された未使用の光ファイバー通信インフラ)の購入と、それがインターネットに与える意味について、市場では依然としてさまざまな憶測が飛び交っている。しかし最近開かれたITカンファレンスでは、また新たな説が浮上した――次世代インターネットプロトコル「Internet Protocol Version 6(IPv6)」だ。

 米カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたBurton Group主催の年次カンファレンスCatalystで行われたIPv6導入をめぐる討論で、テレフォニーベンダーInnofone.comのアレックス・ライトマンCEO(最高経営責任者)は、Googleがダークファイバーに資金を投じる新たな理由を述べた。

 この見解は、インターネットアドレッシングとサービスプロバイダーによるIPv6サポートの欠如に関する話し合いの最中に提示されたもの。ライトマン氏は、米国が現状ばかり重視していて将来のアドレッシングのニーズに目を向けていないことに懸念を示した。

 ライトマン氏は、一部のサービスプロバイダーはIPv6への準備を整えつつあるとし、「スラッシュ20(/20)」規模のアドレスを保有する企業名を披露した。

 「スラッシュ20規模のアドレスを確保しているこのほかの企業を皆さんはご存知だろうか? Googleだ」とライトマン氏。「Yahoo!もだ。サービスプロバイダーが準備をしていないというわけではないが、高度な集合体と明確な展望を掲げる経営体制を持ち、技術に精通した企業が、(IPv6)導入への準備にかかっている」

 「これがGoogleがモバイルダークファイバーを買収した理由だ。明確な意図がある。『ほかの米企業がのんきにIPv6を導入しないのなら、自分たちが導入してしまおう』という意気込みなのだ」(同氏)

 ライトマン氏によれば、Googleが2005年9月にビント・サーフ氏を副社長兼チーフインターネットエバンジェリストに迎え入れたのは、同社におけるIPv6戦略を先導してもらうためだという。

 サーフ氏をはじめとするIPv6支持者は、携帯電話やハンドヘルドなどのモバイルデバイスだけでなく、自動車向けIPアドレスの需要増を指摘している。Burtonのカンファレンスではアナリストらが、増え続ける世界中のIPv4とNATルータベースの固定およびモバイルデバイスのサポートは向こう5〜10年間で非常に難しくなるだろうと予測し、アドレスの需要がこれより早い時期に深刻化するかとの疑問には否定的な見解を示した。

 IPv6を導入すれば、インターネット上で数十兆単位の個人アドレスを割り当てることが可能になる。

 通信業界の報告によれば、Googleは同社の2005年の資本支出が8億ドルを超えると語ったという。実際の数字は12億5000万ドル台になるだろうとアナリストらは予想している。この投資の一部はダークファイバー購入に充てられると見る向きもある。

 Googleは手に入れたグローバルインフラで何をやろうとしているのか――より具体的には将来何をする計画なのか、これについて、情報通信業界とコンピュータ業界の中では多くの憶測が流れている。ライトマン氏によるIPv6アプリケーションおよびサービス理論のほか、GoogleのIPv6計画について以下の予測がなされている。

  • Google Video:Googleは1月に、ビデオダウンロードストアを鳴り物入りで立ち上げた。まだ結論は出ていないものの、インターネットビデオは成長市場であり、Googleはこの流れに大きく関与したい考えだ。
  • Google Wi-Fi:Googleは本拠地があるカリフォルニア州マウンテンビューならびにサンフランシスコ、そしておそらくはニューオーリンズで、インターネットプロバイダーEarthlinkが構築しているネットワークを市政レベルで敷設する計画に取り組んでいる。ダークファイバーバックボーンはGoogleがほかの都市や州に拡張することを可能にし、また同社をプロバイダーとして機能させることさえ可能にするかもしれない。
  • グリッドコンピューティング:Googleはアクセスポイント近くに分散データセンターを構築して検索結果と広告サービス事業の性能向上を目指すとともに、グリッドコンピューティングサービス運営の構築を図る。
  • SaaS(サービスとしてのソフトウェア):Googleは自社サービスをコンシューマーと企業に向けて拡張していくため、ネットワーク帯域の拡張が必要になる。ダークファイバー購入はWeb2.0コンテンツおよびアプリケーションサービス向け活動の1つとなる。

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