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ロケフリ利用の遠隔視聴サービス、中止求めるテレビ局の申し立て却下

» 2006年08月07日 19時17分 公開
[ITmedia]

 国内のテレビ番組をインターネット経由で海外などから視聴できるようにしたサービスが、テレビ局の著作権(送信可能化権)を侵害しているとして、NHKと在京キー局5社が業者にサービス中止を求める仮処分を申し立てていたが、東京地裁(高部眞規子裁判長)はこのほど、申請を却下した。

 サービスは永野商店(東京都)の「まねきTV」。ソニーのロケーションフリー(ロケフリ)用ベースステーションを個人ユーザーから預かり、設定済みエアボードを使って海外出張先から番組を視聴できるようにするもの。

 テレビ局側は今年2月に仮処分を申請。ロケフリを個人が自分の視聴のために使う分には著作権法違反に問われることはないが、テレビ局側は「サービスは誰でも加入でき、業者から見た利用者は『不特定』に当たる。不特定の者に送信行為を行っているから公衆送信に当たり、アンテナやネットと機器を接続しているのは業者だから、送信可能化の主体も業者だ」と主張。

 また「業者の行為は機器の管理運営を越え、実質的には送信可能化」と指摘し、初期料金3万1500円・月額利用料5040円とした料金設定も「機器の保管料にとどまらず、放送の同時再送信サービスの対価なのは明らか」とし、同サービスが業者による公衆送信権の侵害に当たるとしてサービス中止を求めていた。

 高部裁判長は(1)番組送信はユーザー自身が行っているものということができ、業者の行為とすることは難しい、(2)従って番組送信は1主体(ユーザー)が特定の1主体(ユーザー自身)に対して行っているものであり、不特定・特定多数への送信とは言えない──などとして、ベースステーションは自動公衆送信装置には当たらず、同サービスは業者による送信可能化行為には当たらないと判断。テレビ局側の申請を却下した。

 永野商店の永野周平代表は「ほぼ全面的に当サービスの主張が認められた。法律的な問題もまず解決し、より良いサービスを提供することに全力をつくすことができる」とコメント。ただ、「決定は『まねきTV』に対してのみ行われたもので、他の類似したサービスに関しては同様の決定が出るとは限らない」としている。

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