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「ハルヒ」「男前豆腐」に見る、ブログ時代のヒットの条件

» 2006年09月07日 19時59分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)ユーザーが増え続ける中、ネット上の口コミを商品のPRに生かそうという取り組みが広がっている。成功する口コミマーケティングの条件とは何か――9月7日にWeb広告研究会が開いたフォーラムで、ネットマーケティング支援などを展開するカレンの四家正紀さんが、「男前豆腐店」「涼宮ハルヒの憂鬱」という2つの成功例からその条件を分析した。

 男前豆腐店は「男前豆腐」「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」などユニークなネーミングの豆腐を販売する企業。これまで最大で1日7万パック売ったといい、価格競争が激しい業界で、品質とブランド力を高めることで、高価格を保っている点も注目されている。

 同社のWebサイトは、食品メーカーとは思えない作りだ。Flashを駆使したサイトで、オリジナルキャラクターがアニメで動き、ユニークなメッセージや音声を発する。オリジナルの楽曲も再生される。

画像 男前豆腐店のWebサイトの商品紹介

 このサイトがネット上で評判になり、人気が広がった。四家さんによると、ブログ検索「テクノラティ」で昨年8月に「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」を検索した結果は739件。これが、今日(9月7日)現在だと1万8626件にも増えている。

 マスメディアとブログの相乗効果もあった。「男前豆腐はテレビなどマスメディアにも大きく取り上げられた。テレビで紹介されるたびにそれを見た人がブログを書くなどし、マスメディアとブログのピンポンが行われた」

 四家さんによると、男前豆腐店の社長は著書で「ブログ時代になってものの売れ方が劇的に変わった。1人のお客さんが惚れ込んで日記に書いたりすると、そこから一気に広がっていく。浸透時間が圧倒的に短くなってきてる。ブログの登場以前に比べると、口コミが広がる早さが全然違う」と述べているという。

ハルヒの“口コミ力”

 涼宮ハルヒの憂鬱は、独立系UHF放送局で深夜枠に放映されたアニメ。全国ネットでもゴールデンタイムでもなかったが、DVDやCD、書籍などがAmazonの売上げランキングを独占するなど大ヒットしている。四家さんによると、人気の原動力となったのはブログと、ブログ同様にユーザ参加型メディアの「YouTube」だったという。

 ハルヒは「作り込みが精密でクオリティが高かった」ため、ブロガーが好んで話題にした。例えば「バンドの演奏シーンで、ピックで弾いている場合と指で弾いている場合の音が違う」などといった細かい作り込みがなされているという。

 そういった作り込みに気づいたユーザーが「みんなに知らせたい」とブログに書くと、それを見たユーザーが、YouTubeに上がった映像を見て確認し、その感想をブログに書く――そんなサイクルで、ブログ上で議論が盛り上がっていったという。

画像 公式サイトのあらすじの紹介文章で、左の行を縦に読むと別の文章が浮かびあがる、という“仕込み”があり、ブログなどで話題になった

 作品の小さなこだわりは、以前ならそれに気づく少数の人に受けるだけだったが、この少数の人がネットで情報を発信するようになり、多くの人に共有され、ネタとして楽しまれるようになった――四家さんはこう分析する。

 男前豆腐とハルヒの共通点は、(1)商品・作品のクオリティの高さ、(2)「他人に話したい」と思うネタの濃さ――だ。「重要なのは商品そのもの」と四家さんは強調。その上で、ブログの話題としてどうネタを提供するかがポイントになる。

 ブログマーケティングと言うと、ブロガーにお金を払って自社に有利な記事を書いてもらおう、などと考える企業もあるが、それは読者にすぐに気付かれ、かえってマイナスになりかねない。口コミを“操作”しようと考えるより、クオリティの高い商品とネタを用意し、ユーザーとともに楽しむ姿勢が重要になりそうだ。

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