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「過去の事故原因究明が不十分だった」──ソニーが電池問題を説明

» 2006年10月24日 19時50分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ソニーのリチウムイオンバッテリー問題で、同社は10月24日、記者会見を開き、発火事故の原因について詳細に説明した。今後は対策を十分に取った上で信頼回復に努め、バッテリービジネスを発展させていきたいとし、「ソニーのもの作りの力が落ちているのでは」という質問に対しては「そういうことは全くない」と答えた。

 同社が同日発表した自主交換プログラムで対象となったのは、2003年8月から今年2月までに製造したノートPC用バッテリーパックの一部。デル、アップル、レノボの3社で610万個、この3社以外(日立製作所、富士通、ソニーなど)で350万個、計960万個の回収・交換を行う予定で、費用は510億円と見積もっている(関連記事参照)

 3社以外の350万個については「安心して使っていただくための交換」(同社セミコンダクタ&コンポーネントグループ担当中川裕副社長)としており、回収対象のうち、これまで異常が報告されているのは、バッテリーセル周辺で過剰発熱があった1件のみ、という。

 交換用バッテリーは「準備が整うまでメーカーにお待ちいただかなくてはならない状況」(中川副社長)で、他社からも供給してもらう予定。同社製バッテリーを利用するPCの出荷遅れなどといった2次的影響は「あまりないだろう」(中川副社長)とした。

 同社は各PCメーカーに対して、バッテリー問題に関する同社の費用負担について説明する資料を渡しているが、東芝などいくつかのPCメーカーから、費用負担について異なる見解を示す資料を受け取っているといい、今後、協議していく。

 「ソニーのもの作りの力が落ちているのでは」という質問が相次いで出たが、中川副社長は「技術力が落ちたことは全くない。バッテリーの問題は生産工程で起きたこと。それ以外の分野では、業績もかなり回復してきている」などと弁明した。

 同社はノートPC用リチウムイオンバッテリー以外にも、さまざまなバッテリーを開発・生産している。今回の問題が今後のバッテリービジネスに悪影響を与える可能性もあるが、中川副社長は「安全性と性能の向上を図り、バッテリービジネスを発展させていきたい」と語り、事業の縮小や撤退はないとした。経営陣の処分も現段階では検討していない。

不具合の原因は

 回収対象となったバッテリーは、2003年8月に新稼働した、高容量バッテリー向けラインで製造した製品。同製品を搭載したデルのノートPCで、2005年春から秋にかけて事故が発生しており、デルは同12月に対象バッテリー3万5000個を回収した。

 今年春から秋にかけ、2005年のデルの事故と同じ原因で、デル、アップルコンピュータのノートPCで発火事故が発生。中川副社長は「結果から見ると、2005年の事故の原因究明が不十分だった」と認めた。

 事故の原因は、バッテリーの正極と負極の間に微細なニッケル片が混入してショートしたため。円筒型リチウムイオンバッテリーは、バッテリー素子をバームクーヘン状に巻き付けて作られているが、巻き取った終端部に金属微粒子が混入した場合、粒子が溶け出して絶縁層を透過し、負極部に到達してショートが起き、まれに発火する可能性がある、という。

 ニッケル片が混入したのは、バッテリー素子を缶に挿入し、その缶を上から押さえつけてくびれを作る過程。押さえつける際、部品の一部がわずかに削れるなどして、微細な金属片が混入した、という。現在は、バッテリーの構造を金属片が混入しにくい形に変えたり、工具を改善するなどして対策を行ったほか、出荷時検査も厳格化した。

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 また、LenovoのPCがロサンゼルスの空港で発火した事故については、まだに原因は特定できていないという(関連記事参照)

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