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MS日本法人COOに元HP・ダイエー社長の樋口氏 法人事業を統括

» 2007年03月05日 17時15分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 「愚直に頑張る」と樋口氏

 マイクロソフト(MS)は3月5日、ダイエー前社長の樋口泰行氏が同日付けで代表執行役兼COO(最高執行責任者)に就任し、エンタープライズ向けビジネスを統括すると発表した。一部報道では、ダレン・ヒューストン社長が退任して樋口氏が後任に就くと伝えられたが、ヒューストン社長は「私が退任するという報道は嘘だ」と否定。中長期的には樋口氏の社長就任の可能性もあるとしながらも、直近ではないと語った。

 樋口氏は1957年生まれの49歳。大阪大学工学部を卒業し、松下電器産業、ボストンコンサルティンググループ、アップルコンピュータ、コンパックコンピュータと渡り歩き、日本ヒューレットパッカード(HP)とコンパックの合併に伴って日本HPに移籍。2004年に日本HP社長に就任した。その後ダイエーの代表取締役社長兼COOに就任し、昨年10月に退任。MSでは、外資系企業で経営してきた経験と、ダイエーで学んだITのユーザー企業としての視点を期待されている。

 同社が外部からCOOを招くのは初。今後は、樋口氏が法人・企業・公共機関向けビジネスとマーケティングを担当し、ヒューストン社長は個人向けビジネスに注力。2人の分業体制で経営していく。

コンシューマー向けとは違う文化作る

 樋口氏はヒューストン社長と同じハーバード大学ビジネススクール出身。就職先にMSを選んだ理由として、ヒューストン社長の経営者としてのレベルの高さを真っ先に挙げた。さらに、米本社のスティーブ・バルマーCEOとケビン・ターナーCOOに会って感銘を受けたと語る。

 「成功した企業の経営者は慢心するものだが、MS経営陣にはそれがなく、変化・進化への危機感がある。これからの経営のモデルになると思い、勉強できるかもしれないと思った」(樋口氏)。また、MSはITインフラからモバイル、家電まで広範囲にわたるビジネスを手がけており、「進化を肌で感じられることにも興味を持った」という。ただ「米本社で働くことには興味がない」とした。

 エンタープライズ分野の経営の方向性としては、MSが得意としてきたコンシューマー向けビジネスとは異なる企業文化を醸成したいと語る。「コンシューマー向けは、ロータッチでマスボリュームを動かすが、エンタープライズはハイタッチで顧客に直接関わる。ボリュームビジネスでの過去の成功体験を引っ張らずにビジネス展開する必要があるだろう。ハイタッチセールスで製品の良さを伝え、パートナーとも密な関係を築きたい」(樋口氏)

 具体的にはまず、MSの製品や技術をユーザー企業に伝えるエンジニアや営業マンなどの数を増やしていきたい、という。「MSは顔が見えにくいという声を時々耳にする。オープンな形で顧客やパートナーと対話し、顔が見える会社を目指す。人間力を高め、市場でリスペクトされる会社にしたい」(樋口氏)

 ヒューストン社長は、樋口氏に期待する役割について「当社は単なるデスクトップのソフトプロバイダーというだけでなく、サーバや業務アプリなど、さまざまなソリューションを持ってる。顧客の先入観を取り除き、当社のシステムはミッションクリティカルな分野でも使えると分かっていただけるような仕事をしてもらいたい」と語った。

社長就任の可能性は

 今回の人事は、MSが正式発表する前に一部で報じられた上、ヒューストン社長が米本社に戻り、樋口氏が新社長に就任するとも伝えられた。ヒューストン社長は「日本で秘密を守るのは難しいと学んだ」と苦笑しつつ「今の時点で私の退任や帰国の計画はない」と明言する。

 一方で「樋口さんはCEO(社長)の経験も豊富。CEO就任含みの人事ではある」とも認めた。「私が今後10年間日本にいるかと言われると、それはないと思うが、帰国は半年や1年後ではない。当面は2人で協力してやっていく」(ヒューストン社長)

画像 ヒューストン社長(左)と樋口氏

 会見では、Windows Vistaの売れ行きについての質問が何度か出たが、ヒューストン社長は「今の時点では十分に満足している」と繰り返した。「『Home Premium』が『Home Basic』よりもユーザーの関心を集めているという嬉しい驚きもあった。Vista搭載PCは、東芝やソニーがグローバルでいい結果を出していると聞くし、日本でもローエンドのVistaマシンがあと数週間で出る。互換性も高めてきており、コールセンターに寄せられる問題も少ない。大いに満足している」(ヒューストン社長)

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