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» 2007年03月09日 18時35分 UPDATE

「時代の寵児」の行方 3・16堀江被告判決(4)勝者と敗者

「投資家がいまだに損失を抱え、刑事責任を追及された張本人には一生遊んで暮らせる金が残っている。これが日本の現状です」

[産経新聞]

 東京都港区の超高層マンション。その最上階の一室の窓からは、まばゆいばかりの夜景が眼下に広がっている。幻想的な夜景をながめていると、まるで日本中の富を独り占めしているかのような錯覚に捕らわれる。

 「ライブドア(LD)株でいくらもうけたかって。計算できませんね。あまりに短期の売買を繰り返し過ぎて」

 部屋の主は資産160億円を誇る29歳の男性デイトレーダー。新規上場したジェイコム株をめぐる「みずほ証券」の誤発注にからんで約20億円を稼ぎ出し、ネット社会では羨望(せんぼう)とねたみを込めて「ジェイコム男」と呼ばれる。

 「LDは株価を上げる話題作りがうまく、値動きが激しいのでもうけやすかった。僕の目からはそれ以上でも、それ以下でもないです」

 計4回の株式分割、プロ野球球団やニッポン放送の買収劇。LD元社長、堀江貴文(34)は公判で「LD株を購入し、興味を持ってもらうことで会社の業績を上げるため」と“騒動”の理由を語った。

 だが、ジェイコム男の視点に堀江の思惑が入り込む余地はなかった。

 「愛着を持ったら売り時に手放せない。判断材料は『もうけが出るか』。堀江にもLDにもそれ以上の感情はありません」

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 LDを“利用”したのは個人投資家だけではない。ニッポン放送をめぐる買収劇では、LDは村上ファンドに煮え湯を飲まされた。

 平成17年1月17日、フジテレビが同放送株の公開買い付けを発表すると、村上ファンドはそれまでの姿勢を一転。LDへの協力姿勢を反故(ほご)にし、「高く買う方に売る」と言い出した。

 「裏切られたという気持ちがある。(村上は)あまり好きな人ではない」。インサイダー取引罪に問われた村上世彰(47)の公判で、LD元代表取締役の熊谷史人(29)はポツリとつぶやいた。

 同放送株に絡んで米リーマンブラザーズ証券は、約800億円のLDの社債の一種を有利な条件で引き受け、150億円を超える利益を得たとされる。

 LDもその後、フジテレビへの同放送株の売却や増資で約1100億円の資金を得て、その後の企業買収で膨大な利益を獲得した。

 限られた世界の住人で利益をむさぼりあう“食い合いの連鎖”。市場関係者は「典型的なコン・ゲーム(だましあい)。昨日の友が簡単に今日の敵になり、巨額の資金が右から左へと流れていく」と指摘する。

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 「情報を共有する一部の者だけが利益を上げ、一般投資家が搾取される。これは『市場での詐欺』ではないのか」。ネット証券関係者が声を荒らげる。

 「LDショックで新興市場が冷え込み、投資家は含み損の処理さえできない。一方で、堀江や村上は莫大(ばくだい)な資産をいまも抱えている」

 昨年11月17日の堀江の公判で、検察側は堀江の資産をあぶり出した。

 百数十億円分の有価証券と数億円の預金。高級車2台で2000万円。ジェット機が約28億円。堀江の住む六本木ヒルズのマンションは家賃200万円ともいわれる。ネット関係者が言う。

 「虚偽の情報に踊らされた一般投資家がいまだに損失を抱え、刑事責任を追及された張本人には一生遊んで暮らせる金が残っている。これが日本の現状です」

(敬称・呼称略)

「時代の寵児」の行方 3・16堀江被告判決(5)検察の威信

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