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スパム経済圏で暗躍する株スパマー(1/2 ページ)

» 2007年03月13日 17時12分 公開
[Lisa Vaas,eWEEK]
eWEEK

 米証券取引委員会(SEC)は、ハイテク株価操作と疑わしい行為による利益を凍結する措置を取り、またスパムで宣伝されていた35社の株式の取引を一時停止したが、これら2つの措置は無関係だと説明した。

 ほかの関係者はこの説明に異を唱えている。

 Secure Computingの主席研究者ディミトリ・アペロビッチ氏は、このようなスパムと株価操作は同じ「スパム経済圏」の一部だと指摘している。

 スパム経済圏で得られる利益はまず、スパマーに貸し出されるボットネットやゾンビPCから始まる。ある企業の株式を売り込むスパムが出回り、興奮した被害者はそれにだまされて宣伝されている企業の株を購入する。スパマーは数日のうちにその会社の株を売り抜け、かなりの利益をポケットに収める。被害者の手元にはほとんど価値のない株が残る。

 「こうした連中の多くが、バイアグラの広告などのスパムをばらまいているスパマーからボットネットを借りているとわれわれは確信している」とアペロビッチ氏はeWEEKの取材に応えて語った。「多く(のボットネット操縦者)が、宣伝している会社の株から利益を得ているかもしれない。彼らはつり上げた株価を利用して、売り抜けて利益を得ることができる」

 こうして不正に得た利益で、株スパマーらは次に宣伝する企業の株を買い、また新たなサイクルが始まる。

 SECの北東地域担当副局長ヘレン・T・グロッツァー氏は、同委員会はかねてからスパムへの対処方法を模索してきたとeWEEKに語った。これまでにも対策は取ってきたが、広範な対処を試みたのは今回が初めてだと同氏は言う。

 「スパムに従って投資するべきではないというメッセージを投資家に送るいい方法だと思った」(同氏)

 こうしたスパムはボイラールーム(違法あるいはそれに近い投資勧誘)オペレーターが取り入れつつあるビジネス手法で、彼らが20年前に利用していた電話勧誘の手法に取って代わりつつあると同氏は説明する。スパムが送信されている間に株価は急騰する。2〜3日後には、株価をつり上げた犯人は株を売り抜けて、投資家の手元には「ほとんど価値のない株」が残る。

 SECは「今後もスパムを監視し、不適切と判断すればいつでも取引を一時停止する。また、われわれはこうしたスパムから利益を上げている企業や団体、個人への調査も任されている。(株価つり上げの対象になった)企業は何らかの役割を演じていたのか、あるいは単なるスパムキャンペーンの被害者だったのか」とグロッツァー氏は語る。

 SECは規制機関と協力して、株価急騰を監視しているという。

 同委員会は、先週取引を停止した35社の多くが、過去数年の間に多数のスパムキャンペーンに関与していたことを発見した。共通しているのは、これらの企業の株式がピンクシート(店頭市場)で取引されていたことだとグロッツァー氏は言う。

 「これら企業はSECに財務報告書を提出していない。ブローカーはデューディリジェンス(企業価値査定)をしなくてもこうした企業への投資を勧誘できる」(同氏)

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